• 作成日 : 2025年10月9日

不動産仲介とは?種類や仕事内容、手数料の計算方法から信頼できる会社の選び方まで徹底解説

不動産仲介とは、不動産の売買や賃貸において、売主(貸主)と買主(借主)の間に入り、円滑な取引をサポートするサービスです。専門知識が必要な不動産取引において、個人の売主・買主を支える重要な役割を担っています。

この記事では、不動産売買の仲介の基本的な仕組みから、仕事内容、手数料の計算方法、そして満足のいく取引を実現するための信頼できる不動産会社の選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。不動産売買の仲介を検討している方も、ぜひご一読ください。

目次

不動産仲介とは?

不動産売買における不動産仲介とは、不動産を売りたい人(売主)と買いたい人(買主)の間に立ち、専門家として取引の成立を支援するサービスのことです。

不動産取引は価格査定や契約手続きなど専門知識が不可欠で、個人間ではトラブルも少なくありません。そこで不動産会社は、物件情報の提供から価格交渉、契約、引渡しまで、取引全体が安全に進むようトータルでサポートします。

こうした一連の業務は宅地建物取引業法で規律されており、仲介会社は依頼者の利益を守り、公正かつ誠実に業務を行う義務を負っています。この専門的なサービスへの対価が、成功報酬である「仲介手数料」です。

仲介(媒介)と代理、買取の違い

不動産取引における関与の仕方には、「仲介(媒介)」「代理」「買取」の3種類があります。一般的に「不動産仲介」という場合は、「仲介(媒介)」を指すことがほとんどです。

種類概要特徴
仲介(媒介)不動産会社が売主と買主の間に入り、契約成立をサポートする。依頼者の利益を守る義務を負いつつ、法律に基づき公正かつ誠実に取引をサポートする。契約の当事者は売主と買主となる。
代理不動産会社が売主または買主の代理人として契約行為を行う。代理権を持つため、本人の代わりに契約を締結できる。
買取不動産会社が自ら買主となって物件を直接買い取る。買主を探す必要がなく、スピーディーに現金化できるが、市場価格より安くなる傾向がある。

不動産仲介にはどのような種類がある?

不動産仲介には、主に「両手仲介」「片手仲介」の2種類があります。

これらは、売主と不動産会社との間で結ぶ媒介契約の種類(専属専任媒介・専任媒介・一般媒介)とは直接的には異なる概念です。媒介契約はあくまで売主側との契約形態を示すものであり、最終的に取引の結果として「売主・買主双方を不動産会社1社で担当する=両手仲介」か、「売主・買主それぞれを別の不動産会社が担当する=片手仲介」となります。

どちらの形態になるかによって、情報の流通範囲や取引の進め方に違いが生じることがあります。

売主と買主の双方を担当する「両手仲介」

両手仲介とは、1つの不動産会社が、売主と買主の両方から依頼を受け、双方の仲立ちをすることです。この場合、不動産会社は売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ることができます。不動産会社にとっては収益性が高い形態です。

売主か買主の片方のみを担当する「片手仲介」

片手仲介とは、売主側の不動産会社と、買主側の不動産会社がそれぞれ存在し、2社が協力して取引を成立させる形態です。 売主は依頼した不動産会社に、買主は自身が依頼した不動産会社に、それぞれ仲介手数料を支払います。

両手仲介と片手仲介のメリット・デメリット

種類メリットデメリット
両手仲介
  • 売主と買主の意思疎通がスムーズに進みやすい。
  • 交渉や手続きがスピーディーに進む可能性がある。
  • 情報が1社に集中し、透明性が低くなるリスクがある。
  • 不動産会社が自社の利益を優先し、売主・買主のどちらかに不利益な条件になる可能性(囲い込み問題)がある。
片手仲介
  • それぞれの不動産会社が依頼者の利益を最大化するために活動する。
  • 情報の透明性が高く、公正な取引が期待できる。
  • 会社間の連携がうまくいかない場合、交渉や手続きに時間がかかることがある。

両手仲介は1取引あたりの手数料収入が最大化されるため、事業者にとって大きなインセンティブがあるのは事実です。しかし、そのインセンティブを追求するあまり、安易な「囲い込み」(物件情報の意図的な非公開)に繋がれば、顧客の利益を損ない、企業の信頼を失う大きなリスクを伴います。

企業の持続的な成長のためには、目先の利益だけでなく、片手仲介であっても他社との協力関係(共同仲介)を円滑に進め、多くの顧客から信頼を得て成約件数を重ねていく姿勢が不可欠です。

不動産仲介会社の主な仕事内容は?

不動産仲介会社の仕事は、物件の査定から広告活動、契約、引き渡しまで、不動産取引の全プロセスにわたります。

不動産仲介会社の業務は多岐にわたりますが、その目的は一貫して「売主と買主のマッチングを成功させ、安全な取引を完了させること」にあります。宅地建物取引業法で定められた義務を遵守しながら、専門的なサービスを提供します。

ステップ1. 物件の価格査定と売却活動の提案

売主から依頼を受けると、まず物件の現地調査や周辺の取引事例、市場動向を分析し、適正な売却価格(査定価格)を算出します。 単に価格を提示するだけでなく、なぜその価格になるのかという根拠を明確に説明します。同時に、売却スケジュールや販売戦略についても提案を行います。

ステップ2. 広告活動・販売活動

売主と媒介契約を結んだ後、物件の魅力を最大限に引き出す広告活動を開始します。具体的には、以下のような多角的なアプローチで買主を探します。

  • 不動産流通機構(レインズ)への登録:会員の不動産会社だけがアクセスできる専門情報システム「レインズ」に物件を登録します。これは、全国の不動産会社に物件情報を共有し、広く買主を探すための重要な活動です。
  • 自社ウェブサイトや不動産ポータルサイトへの掲載:大手ポータルサイトに物件情報を掲載し、広く一般の購入希望者にアピールします。
  • チラシやDMの配布:物件周辺の地域にポスティングを行い、潜在的な購入希望者に情報を届けます。

ステップ3. 内覧(物件案内)の対応

購入希望者から問い合わせがあれば、実際に物件を見てもらう「内覧」の日程を調整し、当日の案内を行います。内覧では、物件の設備や状態を説明するだけでなく、周辺環境や住み心地といった魅力も伝えます。売主に代わって、購入希望者の質問に答え、購入意欲を高める重要な業務です。

ステップ4. 条件交渉と契約手続きのサポート

購入希望者が見つかると、価格や引き渡し時期などの条件交渉が始まります。不動産仲介会社は、売主と買主双方の希望を聞きながら、双方が納得できる着地点を探るための調整役を担います。条件がまとまったら、国家資格者である「宅地建物取引士」が、記名した書面(重要事項説明書)を交付した上でその内容を説明し、売買契約の締結をサポートします。

ステップ5. 引き渡しまでの事務手続き

契約後も、住宅ローンの手続きのサポートや、登記手続きに必要な司法書士の手配など、物件の引き渡しまで続く様々な事務手続きをサポートします。残代金の決済と物件の鍵の受け渡しが完了するまで、取引がスムーズに進むように最後まで責任を持って対応します。

この一連の業務フローは、そのまま事業の生産性に直結します。特に、MAツール、CRM、物件管理システムなどを適切に連携・運用することで、業務の効率化が期待できます。ただし、その効果は導入状況や社内の活用体制によって変動するため、ITへの投資と合わせて業務プロセスの設計も重要です。

不動産仲介を利用するメリットは?

不動産仲介を利用する最大のメリットは、専門家のサポートにより、複雑な不動産取引を「安全」かつ「適正な価格」で「スムーズ」に進められることです。

個人間での取引も不可能ではありませんが、大きな金額が動く不動産取引には専門的な知識が不可欠であり、不動産会社を介することで多くのリスクを回避できます。

専門的な知識で適正価格での取引を実現できる

不動産会社は、最新の市場動向や豊富な取引事例に基づき、客観的な根拠のある価格を提示します。これにより、「安く売りすぎる」「高く買いすぎる」といった失敗を防ぎ、納得感のある取引が可能になります。

複雑な手続きや交渉を任せられる

売買契約書の作成や重要事項説明、登記手続きなど、不動産取引には専門用語が飛び交う複雑な書類作成や手続きが多数存在します。これらを専門家に一任できるため、時間的・精神的な負担が大幅に軽減されます。

幅広いネットワークで買い手・売り手を見つけやすい

不動産会社は、レインズや自社の顧客リスト、ポータルサイトなど、独自の幅広い情報網を持っています。自力で探すよりもはるかに効率的に、条件に合った売買の相手を見つけることができます。

トラブルを未然に防ぎ、安全な取引ができる

物件の欠陥(瑕疵)や権利関係の問題など、後々トラブルになりかねない点をプロの目で事前にチェックしてくれます。万が一トラブルが発生した場合でも、契約内容に基づいて適切に対応してくれるため、安心して取引に臨めます。

不動産仲介を利用する際の注意点は?

不動産仲介を利用する際は、「仲介手数料」がかかること、担当者の能力に取引が左右されること、そして悪質な「囲い込み」のリスクがあることを理解しておく必要があります。

メリットの多い不動産仲介ですが、いくつかの注意点を事前に把握しておくことで、より良い不動産会社や担当者を選び、トラブルを避けることができます。

仲介手数料が発生する

不動産仲介は原則として成功報酬であり、契約が成立した際に仲介手数料の支払い義務が生じます。ただし、依頼者の特別な依頼に基づき発生した広告費用や遠隔地への調査費用などは、実費として別途請求が認められるケースもあります。

この手数料は法律で上限が定められていますが、決して安い金額ではないため、事前に計算方法を理解し、資金計画に含めておくことが重要です。

なお、報酬を受け取れるタイミングは契約書(37条書面)の交付後と定められています。実務では、売買契約締結時に50%、引渡時に50%といった形で分割して支払うケースが多く見られますが、これはあくまで慣行であり、必ずしも全ての取引で同じではありません。

担当者のスキルや相性によって結果が左右される

不動産取引の成功は、担当者の知識、経験、交渉力、そして熱意に大きく依存します。また、報告・連絡・相談がスムーズにできるかといった、担当者との相性も非常に重要です。信頼できない担当者に当たってしまうと、売却が長期化したり、希望の条件での取引ができなかったりする可能性があります。

悪質な「囲い込み」に注意が必要

「囲い込み」とは、両手仲介を狙う不動産会社が、他社からの買主の紹介を意図的に断り、自社で買主を見つけようとする行為です。囲い込みをされると、物件が広く市場に公開されず、売主はより良い条件で売却できる機会を失ってしまいます。媒介契約を結ぶ際には、販売活動の状況を定期的に報告してもらうなど、透明性を確保することが大切です。

信頼できる不動産仲介会社はどのように選べば良い?

信頼できる不動産仲介会社を選ぶには、複数の会社に査定を依頼し、査定価格の根拠や販売戦略を比較検討した上で、担当者との相性を見極めることが重要です。

不動産仲介会社によって、得意なエリアや物件種別、販売戦略は異なります。一つの会社の話だけを鵜呑みにせず、複数の視点から比較することで、自分に最も合ったパートナーを見つけることができます。

複数の会社に査定を依頼する

不動産一括査定サイトなどを利用して、3〜4社に物件の査定を依頼しましょう。複数の不動産仲介会社の査定価格を比較することで、おおよその相場観を掴むことができます。また、各社の対応の速さや丁寧さも比較する良い機会になります。

査定価格の根拠を確認する

提示された査定価格の高さだけで不動産仲介会社を決めないようにしましょう。重要なのは、「なぜその価格なのか」という明確な根拠です。周辺の類似物件の成約事例や、物件の長所・短所を具体的に示し、納得のいく説明をしてくれる不動産仲介会社を選びましょう。契約を取りたいがために、意図的に高い査定額を提示する不動産仲介会社もいるため注意が必要です。

販売戦略や実績を確認する

「どのようにして買主を見つけるのか」という具体的な販売戦略を確認しましょう。ポータルサイトへの掲載方法、写真のクオリティ、広告展開の計画など、積極的かつ効果的な販売活動を期待できるかを見極めます。また、過去の取引実績や、特に自分が売却したい物件と同じようなエリア・種別の物件の取扱実績が豊富かどうかも重要な判断材料です。

担当者との相性を見極める

最終的には、「この人になら任せられる」と思える担当者かどうかが鍵となります。質問に対して的確に答え、メリットだけでなくデメリットも正直に伝えてくれるか、こちらの話を親身に聞いてくれるか、定期的な報告を約束してくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさや誠実さを見極めましょう。

免許番号や行政処分歴も確認する

会社の信頼性を客観的に確認するために、国土交通省の「ネガティブ情報等検索システム」で過去に行政処分を受けていないかを確認したり、宅地建物取引業の免許番号を確認したりするのも有効です。

免許番号の()内の数字は免許の更新回数を示します。更新は通常5年ごとに行われるため、営業年数の目安となります。ただし、事務所移転などで知事免許から大臣免許へ切り替えた場合は数字が(1)に戻るため、あくまで参考値と考えてください。

これらの「顧客から選ばれる不動産仲介会社」のポイントは、そのまま不動産仲介業で成功するための指針となります。つまり、事業者側は常に「明確な査定根拠」「効果的な販売戦略」「誠実なコミュニケーション」を提供することが、顧客からの信頼を獲得し、事業を成長させるための基盤になるのです。

不動産仲介手数料はどのように計算する?

不動産仲介手数料には、宅地建物取引業法第46条に基づき国土交通大臣が定める告示で、依頼者を保護するための上限額が定められています。この上限額を超えて仲介手数料を請求することはできません。多くの不動産会社は、この上限額をそのまま手数料として設定しています。

仲介手数料の上限は法律で決まっている

宅地建物取引業法で定められている仲介手数料の上限は、取引額に応じて以下の3段階に分かれています。

取引額仲介手数料の上限
200万円以下の部分取引額の5% + 消費税
200万円超400万円以下の部分取引額の4% + 消費税
400万円超の部分取引額の3% + 消費税

【早見表】取引額別の仲介手数料上限額

上記の計算を簡単にするために、以下の速算式がよく用いられます。

取引額(税抜)計算式
200万円以下売買価格 × 5% + 消費税
200万円超400万円以下(売買価格 × 4% + 2万円) + 消費税
400万円超(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税

現在の日本の住宅取引価格は、各種統計を見てもその多くが400万円を大幅に上回るため、一般的には「(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税」という速算式で計算できます。

なお、売買価格が800万円以下の空き家などについては、通常の計算では仲介会社の手間に対して報酬が著しく低くなる場合があるため、最大で33万円(税込)を上限とする報酬を受け取れる特例が定められています。

具体的な計算例(売買価格が3,000万円の場合)

例えば、3,000万円の物件を売買した場合の仲介手数料の上限額は以下のようになります。

  1. 速算式を適用する:(3,000万円 × 3% + 6万円) + 消費税 = (90万円 + 6万円) + 消費税 = 96万円 + 消費税
  2. 消費税(10%)を加える:96万円 × 1.1 = 105万6,000円

この105万6,000円 が、不動産会社に支払う仲介手数料の上限額となります。

この仲介手数料が仲介事業の重要な収益源であり、経営計画の基礎となります。多くの不動産会社は、これに加えて賃貸仲介や物件管理、買取再販など、複数の事業を組み合わせることで収益の安定化を図っています。

例えば、月間の目標売上を達成するためには、平均的な物件価格から逆算して「何件の媒介契約を獲得し、何件の成約が必要か」といったKPI(重要業績評価指標)を設定することが可能です。手数料という成功報酬の仕組みを理解することは、事業戦略を立てる上での第一歩です。

不動産仲介の価値を理解し、最良の選択をするために

不動産仲介は、高額な資産である不動産の取引を安全かつ円滑に進めるために不可欠なサービスです。良い不動産仲介会社、そして信頼できる担当者というパートナーを見つけることが、不動産売買の成功を大きく左右します。

これから不動産を売買される方は、信頼できるパートナーを見つけるために、この記事で解説した不動産仲介会社の選び方をぜひ参考にしてください。そして、不動産業界で活躍を目指す方にとっては、本記事の中に顧客から選ばれ、信頼されるためのヒントが詰まっています。この記事が、不動産仲介に関わるすべての方の成功の一助となれば幸いです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事