
高度な原価配賦ロジックもクラウドで自動化。少数精鋭の経理チームが実現した3社の分の経理業務効率化
経営管理本部経理部 部付部長 橋本 和明様
- 課題 - ・原価計算が属人化・非効率:一部子会社で表計算ソフトのマクロに頼って個別原価計算をおこなっており、マクロの不具合が発生した場合に対応できないリスクがあった。 
 ・既存システムの使い勝手がよくなかった:プロジェクトコード等の設定変更に工数がかかったり、データの取り込みに時間がかかったりするなど、業務が停滞する要因となっていた。
- 結果 - ・属人化の解消と運用リスクの低減:表計算ソフトに依存していた原価計算のロジックをシステム上で再現できるようになり、属人化を解消。 
 ・手作業の削減と生産性および使い勝手の向上:AI-OCRやCSV取り込み機能、銀行明細の外部データ連携により、手入力作業などの手作業が大幅に削減され、業務の生産性が向上。課題だった使い勝手が悪かった部分も解消。
同社では、グループ 会社2社(株式会社シーポック、プラネットファーマソリューションズ株式会社)を含む3社分の経理業務を、少数精鋭のチームで担っています。
従来はオンプレミス型システムと表計算ソフトを併用しながら業務をおこなっていましたが、システムの使いづらさや属人化といった課題を抱えていました。そうした中、業務の効率化と標準化を目指して「マネーフォワード クラウド会計Plus」「マネーフォワード クラウド個別原価」「マネーフォワード クラウド債務支払」を導入。業務プロセスの電子化や原価管理の精度向上など、多くの効果を実感されています。今回は導入前から選定のポイント、導入支援や導入後効果についてお伺いしました。
グループ会社含む3社の経理を支える、少数精鋭のバックオフィス体制

――まず、貴社の経理組織体制についてお伺いできますか?どのような人数と役割で業務をおこなっているのでしょうか。
橋本様:私たち経理部は主に5名で、メディサイエンスプラニング本体に加えて、グループ会社であるシーポックとプラネットファーマソリューションズの3社分の経理・予算・主計業務をまとめて担当しています。
――5名の方はそれぞれどのような役割分担をされているのでしょうか。
橋本様:私は経理部の部付部長として、予算作成、ベンダー契約管理、そして経理実務全体の取りまとめを主に担っています。他の3名は、原価計算と子会社の取りまとめの担当、銀行対応・支払業務の担当、連結決算業務・予算サポート、振替伝票の起票などを担当しているものがいます。
宇田川様:私は経理部の部長として主に最終承認と成果物の確認を中心に見ています。
橋本様:経費精算や旅費・出張費などの支払関連業務は、別の部署で対応しています。グループ全体で1,300名を超える規模であり、毎月膨大な件数になるため、経理部では“会計・原価・債務支払・予算・決算対応”など、経理の主計業務の部分にリソースを集中させる体制にしています。
オンプレミス型の旧システムからの移行で目指した「コスト削減と実務のリアルなニーズへの対応」
――なぜオンプレミス型のERPからクラウドシステムへの移行を検討されたのでしょうか。
橋本様:もともとはオンプレミス型の統合ERPのシステムを使っていて、請求や支払のワークフロー、原価計算まで幅広く対応していました。ただ、正直なところオーバースペックな状態になっている部分がありました。高機能な分、運用も複雑で、すべての機能を使いこなせているというわけではありませんでした。
たとえば、部門がまたがるプロジェクトが多いのですが、以前のシステムでは細かい登録の設定の柔軟性が低く、後から個別に部門情報を追加する必要がありました。担当部署では、その作業だけで繁忙期に1人分のリソースが割かれてしまうようなことも発生していました。また、月ごとにプロジェクトコードの設定を変える必要があったのですが、それも毎回手作業でおこなっており、本当に大変でした。
――業務そのものが生むリアルで具体的なニーズですね。
橋本様:はい、そうですね。加えて、特にアクセスが集中するタイミングではとにかく動作が重かったです。CSVの取り込みにも30分〜1時間ほどかかることがあり、作業が滞ることもしばしば発生していました。また、システムのライセンスや保守費用も比較的高額で、運用にかかる人件費も含めると、トータルコストが相当かかっているという実感がありました。
――原価管理まわりでの課題も大きかったと伺いました。
橋本様:原価計算については、属人化の問題がありました。特にグループ会社側では、表計算ソフトのマクロを使って対応していたのですが、そのマクロが動かなくなると誰も対応ができなくなっていました。マクロの確認や対応に外部の顧問の方にお願いすることもあり、継続的に業務を回すにはリスクが高いと感じていました。
――システム刷新の背景には、“コスト削減”だけでなく、“業務継続性の確保”や“属人化の解消”といった観点もあったのですね。
橋本様:おっしゃる通りです。システムの入れ替えは、単なるコストダウンではなく、業務の見直しや標準化を進めるチャンスでもあると捉えていました。柔軟性があって、業務に合わせて使えるシステムに変えることで、より強い組織体制が作れるんじゃないかと考えたんです。
原価計算ロジックの再現が鍵に。製品選定と決め手とは?
――マネーフォワード クラウドを選定いただいたプロセス、また製品選定時のポイントを教えてください。
橋本様:選定の際にはいくつかのシステムを比較検討しました。検討プロセスとしては、以下5つを基準に考えました。
既存の原価計算ロジックを変えない、必要な機能を選択できて業務効率化を図れる、属人化を防止する(表計算ソフトのマクロに頼らない)、利用中の他社システムとの連携が可能なシステムであることでした。
そして、なかでももっとも重視していたのは、“既存の原価計算ロジックを変えずに移行できるか”という点です。高度な配賦を用いて原価計算を組んでいるため、その仕組みが再現できないと、システムとして成り立たないという前提がありました。
――その点でマネーフォワード クラウド個別原価は要件にマッチしていたのでしょうか。
橋本様:他社のクラウド製品も見てはいたのですが、我々の要件を満たす製品はなかなかありませんでした。特に原価計算の部分はどの製品でも“標準的なプロジェクト管理”に留まっていて、弊社で採用しているような配賦の細かい調整には対応しきれない印象でした。
その点、マネーフォワード クラウド個別原価は、必要な機能がそろっていて、かつ“やりたいことができるかどうか”を事前に確認できたのが大きかったですね。『これはできないかもしれません』という点も最初から正直に提示いただいて、そのうえで運用でどうカバーできるかを一緒に考えていけたので、信頼感がありました。
――原価計算の検証などもおこなわれてたのでしょうか。
橋本様:導入前に、マネーフォワードの営業の方と一緒に、デモ環境を使って実際に個別原価計算をおこなって細かい設定を確認しました。実際のデータを使って運用イメージをつかめたことが、導入判断の後押しになりましたね。
――それ以外にも重視されたポイントはありましたか。
橋本様:はい 、“選択できる構成の柔軟性”も重要でした。マネーフォワード クラウドの製品は、必要な機能を組み合わせて導入できる仕組みになっているので、会計・原価・債務支払といった各システムを無駄なく取り入れることができました。
また、既存の業務システムとの連携も考慮していて、工数管理や給与計算は他社システムを併用しています。これらと共存できる点も評価ポイントのひとつでした。
―― “自社の業務にフィットするかどうか”を軸に、非常に丁寧に選定された印象を受けます。
橋本様:そうですね。単に“移行できるか”ではなく、“本当に使いこなせるか”“コストは適正か”という視点で見ていました。クラウド製品のなかで、ここまで柔軟に対応できたのはマネーフォワードだけだったと思います。
会計・債務支払・原価管理の3つのシステムを同時導入。コンサルティングサービスがなかったら導入はできなかった
―― 実際の導入の流れについても教えてください。3製品の同時導入は大変ではありませんでしたか。
橋本様:クラウド会計Plus、クラウド債務支払、クラウド個別原価の3製品を一気に導入しました。もともとグループ2社の会計を1つのシステムで見ていたので、新しい環境も一括で切り替える必要がありました。
提案時に、営業担当の方から弊社の高度な配賦ロジックや少数精鋭での業務体制などから、マネーフォワードのグループ会社で導入支援をおこなっている株式会社ナレッジラボを入れた方がよいとおすすめいただきました。
―― 実際の導入プロジェクトはどのように進行されたのでしょうか。
橋本様:会計士の資格を持っている導入支援担当の方がついて、かなりしっかりと伴走してくれました。グループ会社ごとに会計処理が少しずつ異なるので、細かい仕様のすり合わせが必要だったのですが、定例会議で丁寧に吸い上げてもらいながら進めることができました。
特に、ジョブごとの原価計算ロジックや、債務支払の承認フローの設計などは、都度課題を共有しながら調整しました。“やりたいこと”と“システムでできること”のすり合わせを根気強く進められたのが良かったです。
宇田川様:経理は私を含めて5人と言いましたが、実務面で私を人員にカウントするほど動けません。その中で3社分の通常業務を4名で対応しながら、新しいものに切り替えることは非常に大変だったはずです。
ナレッジラボの導入支援担当の方にも苦労をかけたと思いますが、コンサルティングサービスがないとできなかったと思います。
―― さきほど、「システムの入れ替えは単なるコストダウンではなく、業務の見直しや標準化を進めるチャンスでもある」とおっしゃっていました。
橋本様:はい、それも大きなテーマでした。特に子会社の業務フローは見直しが必要だったので、導入と並行して“業務整理”をおこないました。これまで表計算ソフトやマクロで属人的にやっていた作業も、できるだけクラウド上に移行するようにしました。
―― 導入までに苦労された点はありましたか。
橋本様:正直、楽ではなかったです。宇田川も言っていたように通常業務と並行して導入したことも大変でした。また、導入当初は細かいトラブルも多くて、都度、仕様を確認して微調整する必要がありました。ただ、それも事前に“テスト環境での検証”をやっていたからこそ、大きな混乱にはつながらなかったと思っています。
現場が混乱しないように、従来の業務との比較表を作ったり、社内向けの操作マニュアルを用意したりと、地道な準備はかなりおこないました。
証憑管理・仕訳・支払いをまとめて効率化
―― 実際にマネーフォワード クラウドを活用して、どのような効果がありましたか。
橋本様:一番大きいのは、導入により書類の電子化を進めたことで“証憑管理から仕訳、支払までが一気通貫になった”ことですね。これまでは、紙での証憑保管があり、情報の転記や確認作業に時間がかかっていました。電子化により、結果的に業務の見える化や標準化を進めたことで、エクセル等も活用した業務効率化が推進しやすい環境になったと思います。
また、特にAI-OCRやCSVの取り込み機能は使い勝手がいいなと感じています。以前のシステムでは機能がなかったため、夜間まで手入力をしていたりして残業も発生していました。
承認作業が増えている点についてはやや負荷がかかっていますが、今後AIの機能で業務負荷が減ることを期待しています。
―― 一気通貫、という意味では、マネーフォワード クラウドには「自動仕訳」の機能があります。この使い勝手はいかがでしょうか。
橋本様:以前のシステムと比較した際に、銀行の入出金明細の外部データ連携を利用することで、伝票入力が簡素化されてよくなりました。また、入金がわかった上で処理ができるため、後で残高照合をする際にも対応がしやすくなりました。
―― 業務全体としては、どのような変化を感じていらっしゃいますか。
橋本様:やはり、全体的に“ひとつながりで処理できる感覚”が出てきたのが大きいです。以前は、複数のファイルや担当者にまたがって情報をやり取りしていたので、どうしても時間と手間がかかっていました。
今は、証憑から支払、会計連携まで一気に流せるので、チェックポイントも明確ですし、何より作業の属人化が減ったのではと感じています。
クラウド個別原価では導入支援担当と相談の上配賦ルールを設計
―― 配賦ルールの設計はスムーズにできましたか。
橋本様:最初は正直、試行錯誤でした。高度な配賦のルールをどうシステムに落とし込むかが難しかったんです。でも、導入支援担当の方が丁寧にヒアリングしてくれて、どの機能を使えば表現できるかを一緒に検討してくれました。
最終的には、“このロジックなら年次決算も乗り越えられそうだ”というところまで仕上げられました。
―― 導入後の業務インパクトはいかがですか。
橋本様:今までは“誰がやるか”に依存していた作業が、“仕組みで回る”ようになりました。配賦結果も自動で帳票として出せるので、上長確認や説明資料作成もスムーズです。
属人化のリスクが下がったことで、チーム全体の安心感も高まりました。今後はさらに予実管理や分析にも活用していきたいですね。
経理業務で質を維持しつつ、生産性を上げていきたい
―― 今後のチーム体制や業務についてお考えになっていることがあれば教えてください。
橋本様:経理部門の目標としても、業務の質を維持し生産性を上げることを掲げています。その中で、マネーフォワードのAIに関する機能追加に期待しています。
承認作業に関する対応については、まだまだ時間がかかっておりこの点が効率化していけたらと考えています。
―― 導入を検討している企業へのおすすめな点があればお願いします。
橋本様:マネーフォワード クラウド製品は、ユーザビリティが考えられたシステムだなと感じました。使用方法が画面に関するサービスのホームページやサポートページへ飛べる点やユーザー側から意見を聞いて、機能リニューアルや開発が進められている姿勢が使いやすさを向上させているのかなと思いました。
宇田川様:マネーフォワード クラウド製品はシステムがたくさんあり繋げて使えるというのもよく、予算に合わせて必要なものから導入できる点がいいですね。
また、必要最低限なシステムの導入で業務をできるようになったことはナレッジラボ社が調整して、導入支援に入ってくれる点もあると思っています。
今後よりAI等の活用によって楽になるシステムとなることを期待しています。
公開日:2025年10月31日 公開当時の情報となります

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