北海道ガス株式会社

非効率な経費精算から脱却。BPO×クラウドで高付加価値業務に時間を創出

北海道ガス株式会社 経理部経理財務グループ/副課長・統括リーダー 竹田 匡志様
経理部経理財務グループ/主任 森田 亜由美様
経理部経理財務グループ 大原 しおり様
  • 課題

    ・1,000名規模の経費精算を限られた人数で対応しているなか、インボイスや電子帳簿保存法対応及び経理DX・ペーパーレス化といった課題対応を行う必要があった。
    ・社内PCでしか利用できない独自システムと紙の証憑に依存しており、非効率な業務フローとなっていた。
    ・定常業務に追われ、財務分析などの高付加価値業務に時間を割けない状態が続いていた。

  • 結果

    ・BPOを活用することで、1,000名規模の経費精算を約4名で対応しながら、さらなる効率化と制度対応を実現した。
    ・経費精算の処理時間は1件あたり従来の3分の1に短縮され、大幅な工数削減につながった。
    ・ペーパーレス化と業務効率化により、財務分析など高付加価値業務に取り組む土台が整った。

1,000名規模の経費精算を少人数体制で担う財務チームの挑戦
北海道ガス株式会社様の経理財務グループ・財務チームは1,000名規模の経費精算を担っています。限られた人員で膨大な処理に対応するなか、紙と独自システムに依存したフローは大きな負担となっていました。
効率化を実現するために導入したのが、マネーフォワードクラウド経費と承認代行BPOです。ペーパーレス化による業務削減とルール整備を両立し、高付加価値業務へ時間を割ける体制づくりが進みました。
今回は、同社で財務チームの統括を務める竹田様をはじめ、森田様・大原様に、導入の背景や選定基準、導入後の効果と今後の展望について伺いました。

少数精鋭で資金管理から経費精算まで担う財務チーム

ーー会社の概要と事業内容について教えてください。

竹田さん:北海道ガス株式会社は1911年創業、北海道を主要拠点とするインフラ企業です。電力自由化をきっかけに電力事業へ参入し、現在は熱事業も展開しています。社名に“ガス”とありますが、実際には「総合エネルギーサービス企業」として、北海道の持続可能な社会づくりと地域への貢献を目指しています。

ーーご担当者様の担当業務と、所属部署の人数構成について教えてください。

竹田さん:経理部の経理財務グループで、財務チームの統括リーダーを務めています資金繰り管理をはじめとする財務業務全般や、マネーフォワードクラウドを活用した経費精算を担当しています。

経費申請は営業部門だけでなく、製造などの現場部門からも日常的に寄せられます。そのため、各部署からの問い合わせ対応も財務チームの重要な役割の一つです。

森田さん:経理部の経理財務グループ・財務チームで、資金計画を担当しています。年間のキャッシュフローを見通して予測するほか、LNG(液化天然ガス)の海外調達に伴う為替予約(ドル買い)の実務も担っています。あわせて、マネーフォワードクラウド経費の運用・改善にも取り組んでいます。

大原さん:財務チームの一員として、主に経費精算業務を担当しています。そのほか、財務諸表の作成や、請求入金管理システムを使った外部からの入金確認といった業務にも携わっています。

紙と独自システムに依存した旧来の経費精算フロー

ーーマネーフォワードクラウドの導入前は、どのような流れで経費申請を行っていましたか?

竹田さん:当時は社内の領収書精算システムを使って、現場の社員がPCで専用システムを立ち上げ、必要事項を入力していました。申請時には専用用紙が印刷される仕組みで、その用紙に領収書を貼り付け、紙で提出する流れです。

経理側では、申請内容と領収書を突き合わせて目視で確認していたので、1件あたりクラウド経費導入前と比較すると、3倍程度かかっていました。しかもそのシステムは社内ネットワーク環境でしか使えず、出張や外出先からは申請ができません。そのため、領収書が手元に溜まってしまうこともよくありました。営業部門は道内外への出張が多く、移動費や交通費、飲食代などの経費件数がとにかく多かったことも課題でした。

ーー以前の経費申請に関する業務体制では、何が課題でしたか?

竹田さん:経費精算の対象者は1,000名近くいましたが、対応するのは数名体制のチームでした。そのため業務負担は非常に大きかったです。入力項目やメモ欄が多く、1件ずつ確認しなければならず、時間がかかるうえにヒューマンエラーのリスクも高かったですね。

さらにペーパーレス化が進んでおらず、毎月数百件以上、つまり数百を超える紙の処理が発生していました。加えて、インボイス制度など法改正によって今後さらに業務が増える懸念もあり、改善は急務だと感じていました。

ペーパーレス化とBPOによる効率化、将来性を見据えた総合評価でシステムを選定

ーーどのような流れでシステムを探しましたか?比較検討のプロセスや選定基準について教えていただけますか?

竹田さん:電子帳簿保存法やインボイス制度の開始がシステムリプレイスのきっかけの一つでした。ただ、それ以前から中期経営計画で「2023年12月末までに全業務をペーパーレス化する」という方針があり、経理部門も早い段階から情報収集を始めていました。

背景には、経理部門が日常業務に追われてしまい、高付加価値業務に十分な時間を割けない課題がありました。ですから、システム選定にあたっては「ペーパーレス化と業務効率化を両立できること」を最も重視していました。具体的には、①ペーパーレスの実現とそれに伴う効率化、②将来的な機能拡張、③サポート体制の3点を軸に検討を進めました。

その後、コロナ禍で領収書精算が物理的にできない状況が起き、システムのリプレイスは急務となりました。

ーーマネーフォワードクラウド、承認代行BPOを導入した決め手について教えてください。

竹田さん:導入の決め手は、マネーフォワードが提供する承認代行BPOによって、システムで自動的に補えない領収証チェック作業を専門体制で対応することにより、安定的かつ持続的な運営を実現できることでした。導入時のサポート体制が充実していた点も大きかったです。

最終選定の段階では、先ほどお話した①ペーパーレスと効率化、②機能展開の柔軟性、③サポート体制の3点に加えて、価格やアフターサービス、ベンダーとしての将来性も含めて総合的に評価しました。

将来への期待という意味では、経理DXをどう進めていくかというベンダーのスタンスも重視しました。生成AIの活用を積極的に打ち出す会社もあれば、人の力を踏まえて段階的にAIを導入する会社もあります。その中で、自社に合う方向性を見極めました。

当時は今ほどAI活用への注目度や精度は高くなかったため、まずはペーパーレス化と効率化を実現し、高付加価値業務に注力できる環境を整えることを重要視しました。その結果、一定の品質を維持しながら安定的かつ持続的な運営を実現すべく、業務改善に即効性のあるマネーフォワードの承認代行BPO導入を決めました。

自社開発から「システムに業務を合わせる」考え方へ

ーー他社比較や社内稟議を行う際に大変だったことや、工夫した点はございますか?

竹田さん:経費精算システムに求める基本機能については、社内でも比較的説明しやすかったと思います。特にBPOについては「運用すればすぐに効果が出やすい」という点を強調して説明できました。

一方で、各ベンダーの独自の強みや将来の取り組みといった総合評価は、どうしても担当者の主観やバイアスが入りやすく、社内で説明するときに工夫が必要でした。

従来は自社開発システムを使って「業務にシステムを合わせる」形で運用していたため、改修負担が大きく、業務改善が難しい課題もありました。そこで、マネーフォワードクラウドを導入して「システムに業務を合わせる」方向へ転換することを提案したのですが、既存システムの改修を好む人も多く、導入に向けた社内調整に相当の時間を要しました。

ーー既存システムと既存の業務フローを好む社員に対して、どのように説得を行いましたか?

竹田さん:以前は、承認フローに必要以上の担当者が入っていて、職責権限よりも広い設定になっていました。例えば、「この人にも連絡しておきたい」と部門内で任意に追加されてしまうことが原因で、決裁者に回す前に担当者が何人も入るケースが多々ありました。そのため、承認工程がどんどん膨らんでいたのです。

さらに、承認者が出張や外出で事務所に戻らないと、次の決裁に進めない状況も発生していて、業務停滞の要因になっていました。こうした課題を解消するためには、職責権限に沿ったスリムな承認フローに見直す必要があると説明しました。

また、自社開発システムは改修コストや保守費用がかかり、業務改善のハードルが高いことも課題でした。その点、マネーフォワードクラウドのように多業種に提供され、多くの利用企業の声で磨き上げられてきたシステムを活用すれば、時代や制度変更にも柔軟に対応できます。いわば「餅は餅屋」の発想で、汎用性と将来性の高さを強調しながら説得しました。

申請スピードと業務品質が大幅向上

ーーマネーフォワードクラウドを利用した感想を、管理者目線、現場の社員目線のそれぞれお聞かせください。

竹田さん:管理者、つまり承認者の立場から言うと、わざわざPCを立ち上げなくてもスマホからタイムリーに承認できるようになったのが大きいですね。

現場の社員にとっても、領収書を紙に貼って郵送する手間がなくなり、スマホで撮影すればすぐに申請できる点が好評です。社内便を使う必要もなくなり、タイムラグが解消されたことで精算承認作業もタイムリーに行うことができるようになりました。

導入から数か月後に実施した社員の座談会でも「ペーパーレス化の効果は大きい」という声が多く上がりました。

1件あたりの処理が従来の3分の1程度へと効率化されています。さらに、領収書をため込んでからまとめて精算するのではなく、その場で申請する運用に変わったことも大きな変化です。

ーーBPOの感想をいただけますか?

竹田さん:BPOを導入したことで、まずルールをきちんと整理し、明確にすることができました。これまで曖昧になりがちだった部分も、BPOに依頼するためには定義が必要だったので、自然とルール化が進んだのは大きな成果です。

そのうえで、「決めたルールに沿って必ずチェックしてもらえる」という品質担保が得られている点も安心感につながっています。

また、担当者とのやり取りも、とても丁寧に対応してもらっています。社員からも「BPOに案内してもらえたことでスムーズに対応できた」といった前向きな声が聞かれています。

今後はBPOの対応範囲がさらに広がることを期待しています。総じて、期限内に承認作業を進め、細かい部分まで確認してもらえる点は非常に評価が高いですね。

森田さん:経理DXが社会全体で進むなかで、OCR入力の精度向上やAI活用には大きな期待をしています。特に、領収書の画像取り込みの精度改善や、手書き領収書への対応がより進めば嬉しいです。

竹田さん:ペーパーレス化とデータ化が進んだことで、「経費がどのように使われているのか」という管理会計の視点を持てるようになりました。今後はその分析方法についてマネーフォワード社からアドバイスを受けながら、さらに活用していきたいと考えています。

まだまだ当チームは、業務効率化の余地があると感じています。具体的には、ビジネスカードの会計システム連携や、BPOルール外の問い合わせ対応が目下の課題です。BPOに頼りながらも、引き続き少人数で効率的に運営できる体制を強化していきたいです。

内部統制をさらに強化し、経理DXを加速させる次のステップへ

ーー今後のチーム体制や業務についてお考えになっていることがあれば教えてください。

竹田さん:グループ全体でマネーフォワードクラウド経費の導入を完了できたので、さらなる業務効率化や現金不正防止の観点から、経費業務をもう一段引き上げたいと考えています。

マネーフォワードクラウドは業界のトップランナーだと捉えており、今後もノウハウの提供や迅速なサービス展開に期待しています。

現在はビジネスカードをより活用することで、社員口座を経由することなく速やかに経費精算できるよう取り組みを進めております。このためにはビジネスカードによる効率化やサービス向上は必須と考えており、今後も意見交換させていただきたいと思っています。

ーーご導入を検討している企業様に、導入におけるメリットやお勧めしたい機能・使い方等コメントがあれば教えてください。

竹田さん:マネーフォワードクラウドはシステムとしての完成度だけでなく、BPOをはじめとした周辺サービスの総合力が非常に高いと感じています。

導入支援の際も「かゆい所に手が届く」フォローがあり、安心して任せることができました。経費精算全体の総合力を高めることができたのは大きなメリットですし、今後も業界のトップランナーとして、サービスをさらに磨き上げていただけることを期待しています。

公開日:2025年9月11日 公開当時の情報となります

北海道ガス株式会社
1911年設立の北海道を主要営業エリアとする総合エネルギーサービス企業。ガス事業を核に、電気供給事業、熱供給事業、ガス機器の製作・販売などを展開。札幌、小樽、函館、千歳、北見などで都市ガスを供給し、道内全域(離島除く)で電力供給も行っている。「北のくらし、もっとできること」をスローガンに掲げ、天然ガスや再生可能エネルギーを活用し、地域の省エネ・低炭素化に貢献。