グループ経営におけるインボイス制度の検討の進め方と留意点①

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今回と次回に分けて、グループ経営におけるインボイス制度対応を行う場合の検討の進め方と、検討をするなかで留意しなければならない事項を紹介させていただきます。

まず今回は検討の進め方について紹介します。

企業グループにおけるインボイス対応

2023年10月から施行されたインボイス制度対応において、企業グループに関する具体的な規制はありません。

そのため、連結子会社が複数あるようなグループにおいても、企業グループ内の会社間でインボイス対応方針が違っていても問題はなく、基本的には各社で適切にインボイス制度対応を行えば良い、ということになります。

一方で、インボイス制度は専門的な知識を必要とする内容も多く、どの会社でも専門知識を適切に理解し、適切に制度対応できるという保証はありません。

また、対応しなければならない制度は一つであるにもかかわらず、グループ各社でインボイス制度対応と検討を行っては、グループ経営全体でみると非常に不効率とも思えます。

そのため、インボイス制度対応はグループで対応することを求めてはいないものの、グループ経営を行っているのであれば、ある程度グループ統一のインボイス制度検討と対応を行った方がよいのは明らかです。

グループ経営におけるインボイス検討の進め方

グループ経営においてインボイス制度対応を検討していくにあたり、まずは、なんと言ってもインボイス制度の適切な理解が必要になります。

こちらについては、本サイトやいろいろな文献などで紹介されているほか、国税もインボイス制度に関するQ&Aなどを出していますので参照いただければよいと思います。

また、上記にも記載したとおり、専門的な知識を有する法制度であるため税理士や会計士といった専門家に頼るのもよいと思います。

次に、これも基本的な事項でグループ経営をしている場合には言わずもがなですが、企業グループ各社の事業の内容を整理しましょう。

そして、事業内容の整理の際に合わせて整理していただきたいのが、システム利用の状況です。

インボイス制度対応においては、システム対応は切っても切れない関係です。会計システムは何を使っているのか、会計システムと連携している請求書発行および受領のシステムは何なのか、などを整理することが重要です。

特に請求書発行方法については、インボイス制度対応において最も影響が大きいところですので、イレギュラーな発行方法を含め慎重な確認が必要です。

会計システムは、企業グループによっては連結財務諸表を作成する必要性から、同一の会計システムを利用している場合も多いです。しかし、請求書発行・受領システムについては、異なっている場合も多いです。

最近ではインボイス制度と同様、施行が近づいている電子帳簿保存法(以下、電帳法とします)もあり、電帳法に対応した異なったシステムを子会社別に導入している状況もあるかもしれません。

また、インボイス対応において新規システム導入を検討する場合、既存システムとの連携の可能性や親和性なども大きな影響を与えるため、現システムの状況を適切に把握しておくと後々効率的となることも多いです。

事業内容とシステムを理解・整理する際に合わせて把握しておくとよいものとして、企業グループ特有の論点として請求書などを特段発行せずに処理している取引の有無があります。

通常、会社と会社の取引では何かしらの契約に基づく請求などがあることが普通です。

しかし、グループ経営においては経理業務を集約し、処理する担当者や担当部署も一緒にしているグループもあり、その際にグループ間取引などを通常発行するはずの請求書を発行せずに処理している場合も見受けられます。

そのような取引があるかどうか、ある場合にはどのような取引が対象となっているか、を把握しておくことをお勧めします。

インボイス制度は、グループ経営であっても法人単位で要件を満たさなければいけません。何もないということは制度としてはNGになってしまうためで、インボイス対応として間違いなく検討しなければならない課題の一つになるためです。

実際のインボイス制度対応時の留意事項

前段で企業グループであれば、グループ統一のインボイス制度対応を行ったほうがよい、と記載しましたが、実際はそう簡単ではありません。

企業グループで経営を行っているのであれば、グループ内でそれぞれの会社が行う事業の内容が異なっていることも少なくありません。その場合、事業内容が異なるのであれば、インボイス制度対応において検討しなければならない項目も異なってくることが想定されます。

その場合においても、無理に統一した対応を行うことを推奨するものではありません。企業グループの状況に応じて、各社で対応しなければならないものはあり、企業グループの状況を適切に把握したうえで、効果的な対応をしていただくことが期待されます。

そのためにもまず、上記でご紹介した企業グループの状況の把握をしていただきたいと思います。

留意事項として、単純に業務手順が異なる、システムが異なる、といったことのためにインボイス制度対応も変える、という判断ではなく、そもそも業務手順が異なる、システムが異なる、ということがグループ経営において効果的・効率的ではないこともあるかもしれず、何があるべきかという視点を忘れないことです。

インボイス制度施行というタイミングで、企業グループ内の各会社のシステム統一を計ることは制度対応の効果的な手段の一つであるとともに、その後のグループ全体の業務効率化までも目指せる有効な計画の一つであることは間違いありません。

単純にインボイス制度対応のためだけと捉えずに、グループ経営全体の効率化などの目線をもった検討をすると効果的な対応結果になると思います。

次回、企業グループでインボイス制度対応をしていく際に留意しなければならない個別の論点を紹介させていただきます。

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