
経費精算のコツは、いかに営業社員の心を掴むか
業種の違いもあるので一概には言えませんが、一般的には現場の部門で一番経費精算が多いのは、やはり営業部門だと思います。
営業活動のための電車代やガソリン代、出張のためのホテル代や飛行機代、新幹線代、取引先との会議費や接待交際費、そして出張日当の申請など。
さらにそれが海外出張であれば、レートやチップの計算など、営業活動も毎日あるその合間に、経費精算の作業をしていただかなければいけません。
そのため、営業社員に、いかに早く正確に、経費精算を月次決算のタイミングで提出してもらえるかということが経理担当者にとって大切になります。
そのためには、営業部門の中でも、営業部長や営業成績トップの社員に、経理部門や経理担当の自分自身に対して一目置いてもらうことが一番の近道になります。
なぜなら、彼らがそれ以外の営業社員を管理しているので、彼らから信頼を得られれば、自分の代わりに「経費精算を出してから営業に行くように」「自分の経費も管理できない営業は駄目」と指示していただけるからです。
では、彼らが「一目置くこと」とは何でしょうか。
それは「(物事の)本質を理解できているかどうか」ということだと思います。営業のできる人は、売上や利益についても理解できているので計数感覚が優れています。
そして、数多くの人間を仕事上で見てきているので、人を見る目が肥えています。だから、表面上の知識やお世辞などのコミュニケーションでは簡単に信用、信頼してくれません。
ただ、私の場合はありがたいことに、営業部長や営業トップの人達とのほうが、他の営業社員よりもいつも仲良くさせていただいていました。そのため、経理からのお願いも彼らから伝えてくれるので、スムーズに経理処理にとりかかれました。
私自身、社交的な性格でもありませんし、コミュニケーション能力が高いとも思えません。でも、なぜ仲良くさせてもらえたのかなと考えると、私が時折ぼそっとつぶやくことに「そうなんだよ」「さすが本質がわかってるね」と言ってもらったことが思い返すといくつかありました。
そこで共感いただいたというか、一目置いてもらったのかなと思います。
営業における経費精算の本質①
そのいくつかのつぶやきのうち、今日は二つをご紹介します。
一つは、「営業は、成績がいい人、忙しい人ほど、経費精算の量や負担が増えてしまうので、経費精算をせかすのが申し訳なく思ってしまうんですよね」というつぶやきです。
現場のことを何も想像せずに、ただ経費精算の処理をこなしている経理社員の場合、「〇〇さんは毎月たくさん領収書があるのに、どうしていつも期限ぎりぎりまで提出してくれないんだろう。もう少し他の人達みたいに翌月の1日か2日に出してくれればこっちも助かるのに…」と思ってしまうかもしれません。
でもよく考えてみてください。忙しくない人は、営業活動も少ないので経費精算をするような交通費も少ないですし、営業のアポイントがとれない人は、会議費や接待交際費なども発生しません。社内にいる時間も長いので、経費精算をする時間も比較的とりやすいという見方もできます。
その反対に、常に営業に出ている人やアポイントも取れる人は、社内にいる時間が短いので経費精算をする時間もとりにくいでしょう。
一方で、申請しなければいけない領収書は膨大にあるので、おのずと経理への申請も期限ぎりぎりになってしまうことが多いのです。
これが「営業の本質」ということです。
本質を理解できていない経理社員が、トップセールスの営業社員に「経費精算出ていないのはあと〇〇さんだけなので早くお願いします」と冷たく言い放ってしまうと、「全然、わかってないな」と思われ、「これだから経理は営業の本質を理解できてない…」となり、余計に協力してもらえない関係性になってしまいます。
そうではなくて、「経費精算、あと〇〇さんだけなんですけど間に合いそうですか?忙しい人ほど営業は領収書が多くなってしまうので催促して恐縮なんですが」と言えば「部下でもそのこと(自分の大変さ)がわからない人間が多いのに、経理なのに営業の本質がわかってるじゃん」と、パッと顔を合わせてくれて、一目置いてくれるようになります。
そして「いやいや、仕事だからすぐやるね」とすぐやってくれるはずです。実際に、私が会社員時代に経理の部下が経費精算の回収業務がうまくいかずに悩んでいたので、このことを伝えたらうまく回収できるようになりました。
営業における経費精算の本質②
もう一つは、「忙しい営業ほど、経費がどうしてもかかりますよね」という点です。
経費というのは2種類あり、削減しても売上に影響しない経費と、削減することで売上に影響する経費があります。営業の経費は、基本的に売上を作るために発生している経費です。
そのため、無駄遣いはもちろんいけませんが、営業の経費を過度に削減するとおのずと売上も下がってしまう恐れがあります。
それなのに、経営者が「営業も一律全員10%経費を削減しなさい。でも売上は前年比でプラスにするように」と指示してしまうと「社長は全然営業の本質を理解できていない」となってしまいます。
そのような中で、「経費精算、あと〇〇さんだけなんですけど間に合いそうですか?忙しい人ほど経費がかかってしまうので、経費の処理量も多くて恐縮なんですが」と言えば、「そうなんだよ。さすが経理だから本質がわかってるね。経費を使っている人ほど売上を稼いでいるのがわからない人がいるからさ。今日中にやるね」と、すぐやってくれるはずです。
ただし、営業社員の中には、とんでもない金額の接待費を使っていたり、その接待が全く売上に結びついていなかったりする営業社員もいます。前述の経営者はそのようなことを注意したくて発言している可能性もあります。
それを経理が「きっと社長はそのような社員のことを想定して、営業の皆さんに伝えたのだと思います」とアシストすれば、トップセールスの社員も「確かにそれはそうだ」と思ったはずです。
しかし「一律」と発言してしまうと、「誰もが10%」「どんな費用でも10%」と受け手に伝わってしまうので、トップセールスの人は、「自分はどの営業先に、どのような形でいくら使うかを一つひとつ全部考えて経費を使っているのだから、一律なんて言わないで欲しいし、営業というものを理解してくれていない」と思ってしまいます。
そういった「営業の本質」と「経理の本質」を結びつけながらコミュニケーションをとることで、控えめな経理社員であっても、仕事上のやりとりだけで円滑な関係を十分築くことはできます。
自分の仕事の枠を越境して、トップセールスの社員に「なぜ〇〇さんはトップセールスで居続けられるのですか」と率直に質問してみるなど、営業の本質について考えたり質問してみたりするのもいいと思います。
それが結果的に自分の勉強にもなり、経理の仕事にも良い影響を及ぼすことでしょう。
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