
入金管理で負担のあるパターンとして、売上の計上金額と異なる金額の入金がされるパターンもその一つです。
売上金額と異なる金額が入金される取引で、恒常的に発生するパターンとして前受入金のある取引があげられます。
キャッシュフローとしては望ましいけど管理は大変
会計上前受金として処理するということは、サービス提供前にお金が入ってきます。なので、資金繰り上はプラスの貢献となり、ビジネスとしてはありがたい話です。
サブスクリプション契約での年間利用料を1年分まとめて入金してもらうことは一般的ですが、翌月に役務提供をする場合に、前月までに事前に代金を受け取っておくというケースもあります。
経理上の仕訳で示すと、次のようになります。
【入金時】
預金 | 120,000円 | 前受金 | 120,000円 |
1年分をまとめて入金された時に、前受金として処理します。
【売上計上時】サービス提供1ヶ月目
前受金 | 10,000円 | 売上高 | 10,000円 |
毎月売上を計上しますが、その際に、既に計上されている前受金を取り崩して計上します。
上記の仕訳処理を毎月計上して、1年(12ヶ月)経過時に前受金の残高がゼロになります。
前受金の処理を表管理ソフトで実施しているケースも多い
キャッシュフローとしてはありがたい前受入金のある取引ですが、入金管理では売上の計上時に債権が計上されて、その後の入金時に債権を消込みする処理とは異なります。
先に入金があり、その後売上計上をする前受処理をどのようにしていくのか、その管理方法をきちんと確立しておく必要があります。
この点、エクセルなどの表計算ソフトで前受金の管理をしている会社もあります。その場合は、前受金として受領したタイミングで合計金額を入力して、売上振替のタイミングごとに、前受金の振替金額と振替後の前受金の残高がわかるように作成している会社が多いように思います。
そのうえで、会計上の前受金残高と表計算ソフト上の前受金残高とが一致していることを確認します。
現場でたまに遭遇するのが、表計算ソフトの前受金残高と会計上の前受金残高とが一致していない、あるいは、そもそも前受金残高が理論値と一致してこないという事象です。
このような事象が起きている原因としては、
- ・表計算ソフトでの作成が間違っている
・表計算ソフトと会計残高との照合を行っていない
といったことが多いです。
表計算ソフトでの作成が間違っていれば、仮に会計残高と照合して一致を確認してもあるべき理論値にならないでしょうし、表計算ソフトで正しく作成しても、表計算ソフトと会計残高との照合をしなければ会計上の振替処理を漏らしてしまい、結果として会計上の前受金残高が正しくならないといった具合です。
システム上で残高管理ができれば照合作業も減ります。
このような煩わしさやミスを減らすために、前受金管理ができる債権管理システムを導入して、作業の効率化や残高管理の適正化を図っている会社もあります。
債権管理システムで、前受金残高管理ができる場合は、表計算ソフトで作業しているときと同様に、売上に振替された後の前受金残高が表示される仕様のものが多く、振替後の前受金の推移を一覧形式で確認することもできます。
また、システムによっては売上計上日を登録しておくことで、自動的に前受金の振替をしてくれる機能を実装しているものもあります。
前受金の自動振替機能が実装されている場合には、売上計上のタイミングで仕訳自体も自動生成されます。
自動生成された仕訳を会計システムに取り込むことによって、債権管理システム上の前受金の残高は、会計システム上の前受金勘定の残高と一致してきます。
表計算ソフトを使って管理している場合は、表計算ソフトの残高と会計システムの残高を照合しておく必要があり、それなりの工数が必要となりますが、前受金管理ができるシステムを利用する場合は、システム間照合にかける時間は圧倒的に減ります。
属人化からも脱却できる
表計算ソフトを使う場合は、利用する人によって使い方や表や算式の形式が異なってくることも多く、業務の標準化から遠ざかる傾向にあります。
そのため、担当者の引き継ぎが大変だったり、複数人で同時に作業してもうまくいかないケースもあります。
それに対して、標準化されたシステムを使う場合はテンプレートが統一化されているので属人的になるリスクが低いのと、専門的な知識があまりなくても業務レベルが一定程度以上になる可能性があります。
前受金の管理件数が多く、残高の確認等に時間がかかっている場合は、前受金管理が実装されたシステムを導入することを検討してみてはいかがでしょうか。
ただ、システムといっても全てのレアケースに対応しているとは言えないことも多いです。
前受管理に関して複数の入金データをもとに振替が必要になったり、そもそもの入金額が不一致の場合が多いというような例外対応が頻発する会社の場合は、システムをどのように活用できるかといった視点ももって検討いただくことも必要です。
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