今回から数回にわたって、債権管理にまつわる経理の部門の大変さとその解決策についてお話ししたいと思います。入金消込を含めた、債権管理にまつわるお悩みが少しでも解消されれば何よりです。
目次
債権管理システムと会計の帳簿残高が不一致で放置
債権管理の効率化を志向している会社の多くは、債権管理システムを導入したり、導入の検討をしているというのが実感です。
ただ、システムを導入したとしても課題が残っているケースもありますので、これからお話しするケースを参考に、後で困らないようにしていきましょう。
実際の現場で結構ありがちなのは、売掛金の管理に関して、会計システム上の売掛金の残高と会社が別途管理している債権管理の台帳残高とが一致していないケースです。
当然に合っているべき数値が合わないままで放置されていることもありますが、何故このようなことが起こるのでしょう。
両者が一致していない会社は、次のように業務が行われているケースが多いです。
ケース1 債権管理システムを導入していないで、Excelで管理を行っていることで不一致となっている
まずは、債権管理システムが未導入のケースです。Excelで販売関連の管理を行っている場合は、請求書もExcel等で発行していることが多いです。
請求書データとExcelで行っている請求管理台帳との連携がとられておらず、請求管理台帳に転記する際にミスが生じたり、入金があったときに、請求管理台帳に入金額を入力して得意先ごとの残高を管理すべきところ、入金額を誤って請求管理台帳に登録しているケースなどが見受けられます。
また入金額を入力する際に、振込手数料を考慮すべきところを考慮しないで入力しているので、残高が一致してこなくなるというのもよくある間違いのパターンです。
費用対効果にもよりますが、Excelで管理を続ける場合、数値の関連づけを誤ったり、転記ミスをしたりする結果、不整合が生じることが多いので、次にお話しするような債権管理システムの導入を検討しましょう。
ケース2 債権管理のシステムを導入しているが、請求書の発行マシーンとしてしか使っておらず、そもそも残高という概念を持ち合わせていない
このパターンも結構あります。導入した債権管理システムの機能のうち入金消込を利用せず、単純に請求書を発行するためだけに利用しているパターンです。
こうなると、債権システム上であるべき売掛残高を持ち合わせていないということになりますので、当然会計システムと残高が一致することはありません。
このケースは、せっかく導入した債権管理システムをフル稼働させていない中途半端な状態といえるでしょう。
ケース3 債権管理システムと会計システムのデータの連携をさせていない
請求管理は営業事務等の社員が行って、会計帳簿の作成は経理部門の社員が行っているケースなどで見られます。両者がそれぞれ別々のシステムにデータを入れていることが原因となっているパターンです。
営業事務を行っている社員が販売管理システムに入力した請求データと、経理部門が利用している会計システムの連携を図っていれば発生データは基本的には一致してきます。
しかしデータ連携を図っておらず、経理側では改めて売上計上伝票を入力したり、別の集計データを使って売上計上をしていることで債権管理システムと会計システムが一致してこないのです。
この場合は、作業時間も余計にかかるので業務効率も悪いといえます。
また、入金消込はケース2と違って債権管理システムで実施することが多いです。
この場合も債権管理システムでの入金消込データと、会計システムの連携を図っておかないとシステム間の残高が一致しないことになりかねませんので、その点も注意が必要です。
ケース4 債権管理システム外で発行する請求書がある
仮に債権管理システムと会計システムとの連携を図っている場合でも、両者間の残高が一致してこないことがあります。債権管理システムを通さない、Excelでの請求などが一部残っているケースです。
どうしても債権管理システム外から請求書を発行しなければならないとしても、債権管理システムに請求データを入力しておいたうえで、会計システムとデータ連携を図ることが重要です。
債権管理システムのデータをそのまま会計システムのデータとして流し込む

上記のようなケースに陥らないために最も効率的な業務の流れは、債権管理システムで残高管理を行って、会計システムには債権管理システムで入力したデータをそのまま連携させるという流れです。
会計システムの中でどのように数字が計上されているのかを考えてみましょう。売掛金の残高は借方に計上される請求データである売上計上と、貸方に計上される入金データである回収計上の差額で算出されます。
債権管理システムには、その請求データと入金データがすべて入力されていますので、その情報をそのまま会計システムに取り込めばいいのです。
両方のシステムのメーカーが同じであれば、容易にシステム連携を図れるでしょうし、異なったメーカーのものであったとしても、データを取り出して取り込むことは可能です。
まずは、債権管理システムのデータをそのまま会計システムに取り込んで、会計システム側では手動で入力をしない流れを作りましょう。
一致していないと税務調査で困ることになってしまうかも・・・
両システム間の残高が不一致の場合、税務調査や会計監査など外部の調査が行われたときに困ることになります。
税務調査において帳簿内容に疑念を抱かれた場合に、何が正しいのかを会社として主張することが難しかったり、原因を調べるために膨大な時間を要することになってしまうことも少なくありません。
そうならないためにも、売掛金の管理は毎月ルーティーンとして行う業務ですので、まずは業務効率が正しくなっているのかを確認し、システム間の残高が一致していることを毎月確認しましょう。
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