電子帳簿保存法の電子取引の義務化が、2024年1月から本格的にスタートしました。
対応状況はいかがでしょうか。
準備万端でスムーズという会社もあるかもしれませんが、まだまだ理想とは遠いという会社があるのも実情かと思います。
実際に、
- ■まだ準備が間に合っていなくて、わかる範囲で実施している
- ■始めてみたら想定していない電子取引データがあることがわかって、改めて保存方法を考える必要が出てきた
- ■いざシステムを稼働させたら、あまりにも使い勝手が悪くていったん再検討をすることになった
といった話を耳にすることもあります。
目次
原則的なルールでの保存にはシステムを活用
電子取引データを原則的なルールに従って保存するには、システムの導入が効率的ですし、実際にシステムを導入して2024年1月を迎えた会社は多いです。
原則的なルールでの保存には次のようなことが必要となります。
- ■改ざん防止のための措置をとる
- ■ディスプレイやプリンタ等を備え付ける必要
- ■「日付・金額・取引先」で検索できる必要
1番目の改ざん防止の措置に関しては、タイムスタンプを付与する機能があるシステムを利用する場合はクリアすることになります。
もちろん、システムを使わずに改ざん防止のための事務処理規定に従って運用する方法もありますが、電子取引データが多い場合は、システム上で改ざん防止措置がされている方が効率的です。
2番目のディスプレイやプリンタ等の備え付けに関しては、それほど難易度が高くなく、多くの会社で既存のものを利用することで追加投資をしなくとも準備ができている印象があります。
検索機能の実装状況によっては猶予措置の適用という選択肢も
3番目の「日付・金額・取引先」の検索要件は、ハードルが高い項目です。
原則的なルールでは、次の要件をいずれも満たしていることが求められます。
- ■日付または金額について、範囲を指定した検索ができる
- ■「日付・金額・取引先」 のうち2つ以上の任意項目を組み合わせて検索できる
表計算ソフトでこの検索要件を満たすようにするとなるとかなり大変です。
電子取引データは経理部門の社員だけではなく、ほぼすべての社員が関与することになります。そのため、ファイル名のルール等を決めとしてもなかなか徹底できず、表計算システムで原則的なルールが求める検索要件を充足するのは難しいというのが現場での印象です。
そこで、原則的なルールで保存を進める会社は、ワークフローシステム、経費精算システムや会計システムに電子取引データの添付機能が実装されているシステムを導入して、そのシステムを利用することで検索要件を満たすようにしています。
システム導入することで電子取引データのカバー率は向上する
ワークフローシステム、経費精算システム、会計システムといったそれぞれのシステムを、どう組み合わせて電子取引データを保存するのかは重要なテーマです。
システムをうまく組み合わせることで得られる効果は、多くの電子取引データをそれらのシステムに載せることができることです。
つまり、会社で入手する電子取引データの多くをそれらのシステムで保存することができれば、今回の電子取引データ義務化に関して、概ね課題が解決となります。
領収書、請求書、見積書といったもののうち、電子取引データで受領するものの多くはワークフローシステム、経費精算システム、会計システムといったシステムで保存するのに適しているといえます。
契約書に関しては、クラウド型の契約管理システムを導入している会社であれば、そちらで保存をしています。
それでも残ったデータは何とかしなければならない
すべての電子取引データをクラウド上の会計システム等に、改ざん防止措置があり、検索要件を満たした状態で保存できていれば、話はそれで終わりです。
しかし実務上は、それらに保存するのが適当でないケースや、会計システム等で保存することの方が手間というケース、そもそもシステムを導入しきれないケースというのもあります。
そのようなことも想定して、2024年1月以降は税務職員からのデータの提示・提出の要求があった場合に、求めに応じることで許容される猶予措置が適用されます。
ただし、そのような場合も電子取引データ保存の義務化がスタートしている以上、何らかの手段をとる必要があります。
猶予措置を採用しているケースでとられている方法の一つとしては、社内サーバや外部のクラウドストレージ上のフォルダに年月別等に電子取引データを保存して、猶予措置で対応をするという方法があります。
いったんはそのような対応で、義務化自体の対応は済みますが、継続的にその方法で行い続けた場合、いざダウンロードの求めに応じてファイルを提出しようとしたら見つからないとったこともあり得ます。
ですから、いったんは猶予措置を適用しているケースでも、原則的なルールでの保存を目指していくのが時代に即しているかもしれません。
まだスタートして間もない電子取引データ保存の義務化ですが、継続実施が求められる業務ですので効率的な方法を模索して、本業に集中できる体制を構築していきましょう。
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