インボイス制度開始後の課題と解決②

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前回、インボイス制度開始後の課題と解決①として、制度開始後における課題と対応のうち、特に受け取った請求書を中心とした内容を紹介いたしました。

今回は、制度開始後の課題と対応のなかでも、発行側と書類の保管という観点での紹介をさせていただきます。

発行請求書の作成と自社保管

インボイス制度における発行業務について、制度施行後の課題は主に2つの内容が想定されます。

1つは、①発行する請求書の作成をマニュアルで作成するとしたことによる業務負荷の増加、または煩雑さによるものです。もう1つは、②制度理解が不十分なことによる業務負荷の増加です。

国税に適格請求書発行事業者として登録した事業者は、適格請求書要件に対応したフォーマットで請求書を発行する必要があるため、従来と異なるまたは追加的な要素を加味した適格請求書を作成しなければなりません。

例えば①は、以前から使用している基幹システムや販売管理システムなどが、インボイス制度に対応しない場合に起こり得ます。

これらのシステムで算定された請求内容を、制度開始前は自動で請求書作成されていたものからマニュアル(手作業)で適格請求書に落とし込む運用を行うとした会社は、請求書作成業務の負荷が増加しているかもしれません。

また、従来システムを利用していなかった会社が、そのまま継続してシステムを利用せずにインボイス対応を行った場合に、従来以上に追加要素やチェックしなければならない事項が増加したことによる負担の増加、というものです。

またインボイス制度は、適格請求書発行事業者に法として適格請求書控えの保存を明確に義務付けました。

②の課題は当該法制度を受け、自社で適格請求書を発行する都度、適格請求書控えをルールに則って保存するとした場合、発行する枚数が多ければ多いほど、共有フォルダへの保管や控えの紙をファイリングして保管といった業務が煩雑になっているかもしれない、というものです。

上記の①の課題に対する解決策の1つはシステム対応です。マニュアルで1枚1枚適格請求書を作成するのではなく、請求書に記載するべき請求額や請求内容、取引日といった内容を保持しているシステムとインボイス制度に対応した請求書発行システムを連携させます。

そうすることで、インボイス制度要件を満たした適格請求書を自動で作成することができ、マニュアルで作成する負担が軽減できる場合があります。

また、必要な情報をシステムにインプットしておくことで、手作業による作成による記載誤りというリスクも軽減でき、さらには手作業で作成した場合の二重チェックという業務も削減できるかもしれません。

②の課題に対しては、まずは制度の理解が必要です。インボイス制度施行後は、適格請求書発行者に交付した適格請求書の写しの保存義務が生じました。

ただしこの保存については、システムを利用して作成している場合に、1枚1枚発行した紙控えやデータを特定のフォルダに保存する、といったことが不要になる制度対応も準備されています。

具体的には、法制度上「自己が一貫して電子計算機を使用して作成したものについては、電帳法に基づき、電磁的記録による保存をもって書類の保存に代えることができる」とされており、要はシステムで発行時と同様の請求書をいつでも再発行することができるのであれば、それでOK、ということになります。

当該対応については、インボイス制度対応システムであればもちろん問題ないと思います。

また、完全なインボイス制度対応システムではなくとも、システム改修により適格請求書を発行できるようになっているシステムで、発行時の請求書をいつでも再発行できるシステムでも、インボイス制度対応という点においては問題なく運用できるかもしれません。

受領した適格請求書の保管

次に、インボイス制度施行後、電子帳簿保存法施行前(または対応前)、といったタイミングであればこその課題となるものが、受領した適格請求書の保管の方法かもしれません。

受領した適格請求書は、通常、税額控除を受けるために保管が必要となりますし、電子帳簿保存法においては電子データで受領した請求書は電子データのまま保管しておかなければなりません。

インボイス制度施行後、受領した適格請求書の中身をチェックしたあとはとりあえず従来と同様に保存している、という場合には、今後の対応を含め対応方法に留意が必要かもしれません。

受領した適格請求書の保存については、やはり効率的な対応はシステムに頼ることだと思います。その際、インボイス制度と電子帳簿保存法のいずれの要件も満たしたシステムの導入を検討すると、業務運用がより効果的・効率的になるかもしれません。

両制度はそもそも別の制度であり、要求事項は異なるものです。しかし証憑を保存するという観点に関しては、電子帳簿保存法に沿った保存が必要になる、という点で1つの法制度の対応で要件を満たすことが可能となります。

ここで、それぞれの法制度を個別に考えるのではなく、受領した請求書を読み取ってエラーの有無をある程度自動でチェックしてくれ(インボイス制度対応、詳細は前回の記事①をご参照)、さらにはその読み取った請求書の保管も電子帳簿保存上の要件を満たしているならば(電子帳簿保存対応)一石二鳥ではないでしょうか。

さらには、システム対応することにより人的コストも抑えることができるかもしれません。

DXへの意識変革

今回まで二回にわたってインボイス制度開始後の課題と対応について紹介いたしました。

いずれの回も有効な課題解決方法としてシステムをあげています。ただし、いずれもシステム化のみが有効な解決方法ではなく、システム化以外にもいろいろな要素や条件を考慮した解決方法はあると思います。

制度開始前からよく言われていることですが、従来に比べて対応しなければならない事項が増えているため、制度対応を適切に行うと従来の対応に比較して業務負荷が増す、ということは筆者個人的には致し方ないと考えます。

しかし、筆者がいろいろな会社のインボイス制度対応に携わらせていただき感じたことは、インボイス制度対応による業務負荷の増加を単純に課題や制度対応だから致し方ない、最低限の対応で乗り切ろう、というのではなく、これをきっかけにして業務の内容を見直してみよう、長期的な目線で考えようとすることが非常に大事、ということです。

そのためのもっとも有用な対応方法の1つはシステム対応だと考えます。短期的には、システムへの投資コストやシステム利用費用が大きな負担になるかもしれません。

ただし、人材確保が難しい最近の世の中の環境などもあり、長期的な目線で検討することが非常に大事だと思います。短期的な目線での対応としてしまうと、そこで生じた課題の解決はなかなか解決しません。

一方、長期的な目線で対応すると、当初は苦しいかもしれませんが、徐々に楽になる、または最終的にはコストが安く済む、といったことも起きやすいと感じています。

今回の記事でも記載いたしましたが、複数の要件をまとめて満たしてくれるシステムも最近は多くあります。また最近では、比較的安価に導入ができるシステムも多くなっている印象でもあります。

もしまだ皆様がシステムの検討をされずに現在に至っているのであれば、是非システムの利用を検討してみてください。

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