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インボイス制度が開始
2023年10月1日に遂にスタートしたインボイス制度。
準備期間はある程度あったものの、いざ開始となると細かい点が気になったり、実務上の処理をどのようにするのか、まだ見切り発車の会社も多いようです。
国税庁が作成するQ&Aの冊子も気付いたら2023年4月改訂版で150ページ以上となっていて、実務上多くの疑問が生じていることが推察されます。
今回は、インボイス制度開始後に受け取った請求書等の処理に関して、最低限しておくべき事項について見ていきたいと思います。
受け取ったものがインボイスかどうか判別は必須
インボイス制度の特徴の一つは、仕入税額控除をするには、インボイス(適格請求書)を入手する必要があるということです。
インボイスでない請求書等では、仕入れや経費に係る消費税額を、消費税の計算上差し引くことができません。仮に差し引くことができない場合は、その分だけ多く消費税を納税する必要があるので、受取側としてはインボイスの入手が今後重要になってきますし、入手した請求書がインボイスに該当するかどうかを適切に判別する必要があります。
ただ、経過措置として、インボイス制度導入後の6年間は、免税事業者からインボイスに該当しない請求書等を受け取った場合でも、一定割合(前半の3年間は80%、後半の3年間は50%)を仕入税額控除できるように制度設計されています。
システムをうまく使えれば効率化が期待できる
請求書を受け取った際は、主に次のような点について請求書をチェックし、会計システム等へデータを投入することになります。
- インボイスに該当するかどうかを判別
- 適格請求書登録番号(インボイス番号)が請求書に記載されているか
- インボイス番号が実際に存在しているのかどうか
- インボイスに該当しない場合は、免税事業者かどうか
- 消費税額は10%か8%(経過措置の場合もあり)か
今までよりもより多くの視点で受取請求書をチェックしなければならなくなります。そこで、システムを活用してそれらの課題解決を図っていく会社も多くあります。システムを活用してどのように効率化を図っているのかを見てみましょう。
取引先マスタを整備
取り組んでいるひとつの事例としては、取引先マスタにインボイス番号を登録する機能がある場合は、事前に取引先マスタに登録をしておくことが挙げられます。
受取請求書を入手し、システムに登録する際に、取引先を適切に選ぶことで適切な税率が自動的に選択されるようにしておくのです。ただ、手動で取引先マスタを整備する場合は、やや手間がかかります。
AI-OCR機能を活かしてインボイス判定
システムによっては、AI-OCR機能とAPI連携機能を活用して、入手した請求書に記載されているインボイス番号と国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトに登録している番号と照合してくれるものもあります。
読み取ったインボイス番号の存在を確認するとともに、その番号をシステムに反映にさせてくれるという優れものです。
このような優れたシステムを活用すれば、
- インボイスかどうかの判定
- インボイス番号が有効に存在しているかの確認
といった作業を一定程度省略できるので、業務効率が上がることが期待できます。
免税事業者との取引だけでも抽出するのも効果的
システムを活用することで、受取請求書入手時のシステム登録等の効率化を図ることは可能ですが、免税事業者との取引については注意が必要です。
システムを活用して、インボイスに該当しないと判断がされた場合、一義的には、免税事業者との取引と推察されます。
もちろんその判定を信頼して追加の調査等を行わずに、免税事業者との取引を前提に消費税コードを選択する、という業務の流れにする会社も多いと思います。都度、免税事業者なのかどうかを調べるのは費用対効果を考えるとかなり無駄であるという判断も入るでしょうから。
ただ、定期的に取引を行う取引業者に関して、適格請求書発行事業者登録をせずに、免税事業者のままなのかどうかをインボイス制度導入時に確認を済ませておくことも有益です。
事前に免税事業者であることが判別されていれば、当該取引先と取引をする際は、消費税コードに関して経過措置のコードを選択するようにマスタ設定をしておくことで、都度消費税コードを修正する手間もなくなるからです。
こうすることで、少なくとも免税事業者からの仕入れについて全額仕入税額控除をしてしまう、といったミスの発生を防止することが可能です。もちろん、免税事業者との取引が膨大な場合は、そのための設定もかなり手間かもしれません。
実感として、多くの企業で定期的な取引を行っている取引業者は適格請求書発行事業者であることが多く、免税事業者の数はそれほど多くないので、管理可能な範囲と考えます。
まだスタートして間もないインボイス制度ですので、今後も課題や疑問も生じてくると思います。利便性高いシステムが今後もリリースがされてくると思われますので、定期的に最新情報をキャッチアップして、業務効率の向上も追求していきましょう。
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