適格請求書の発行対応、適切に終わっていますか? 

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皆様はもうインボイス制度の対応はお済でしょうか。インボイス制度が施行された後、受領する請求書は、ある程度発行する取引先に依拠するしかない部分はあります。

しかし自社で発行する請求書については、取引先に迷惑をかけないように、しっかりと制度対応した適格請求書を発行できるように準備しておくことが望まれます。

発行する事業者は仕入税額控除に関して大きな影響はないと考えずに、適格請求書発行登録した事業者は制度要件を満たした適格請求書を発行する義務があります。

また、要件を満たした適格請求書を発行しないと受領する会社からの信頼を失ってしまう潜在的なリスクもあります。

そこで、今回、適格請求書を適切に発行する際の実務上の留意事項を紹介させていただきます。

適格請求書の要件の復習と一般的な影響

インボイス制度が要求する適格請求書のフォーマットや実務上の留意事項を述べる前に、まずはインボイス制度で求められる適格請求書の要件を簡単に復習していきます。

その要件は、①適格請求書発行事業者の名称及び登録番号、②取引年月日、③取引内容、④税率区分毎の対価の額と適用税率、⑤税率毎の消費税額等、⑥請求書の受領者名称、となっています。

これら6つの要件のうち、インボイス制度施行に伴って対応する会社が最も大きな影響を受けると想定するものが①及び⑤だと思います。また、大きな影響ではないものの意外と見落としがちの要件として、②や③も留意が必要です。

①については新規に登録番号を記載しなければならないことが対応事項になり、追加で記載する対応方法にあまり論点となることはないため、それ以外について下記でご紹介します。

消費税の端数処理論点への対応について(項目⑤対応)

この要件は、どの会社も対応を悩まれる適格請求書上の消費税の端数処理方法の論点となります。

従来、請求書内に記載している明細ごとに消費税額の算定(消費税の端数計算)をしている会社が多かったと思います。しかし、制度施行後に適格請求書を発行する場合、請求書1枚につき税区分ごとに1回の消費税算定しか認められません。

この要件の対応については、請求書をExcelなどでマニュアル作成している会社は、消費税の算定ロジックを変更するのみでインボイス要件を比較的容易に対応することが可能です。

一方、規模の大きい会社など請求書の発行業務をシステムから自動発行している会社は対応が困難な場合があります。具体的には、システムの仕様として明細ごとに消費税の端数処理をするような仕様になっている場合、仕様を変更することは容易ではないことが多いです。

そのため大きなシステム改修が必要になる場合があり、どの会社にとってもシステムの大規模な改修は簡単な判断ではないと思います。

また、システム検討においては、単純に請求書発行システムだけではなく、販売管理システムなど請求書発行システムに自動で紐づけているシステムについても同様に、インボイス制度に対応した消費税算定を行っていないと影響を受ける場合があることも留意しなければならない事項です。

そのようなシステムで運用をしていた場合、どのように制度対応したらよいでしょうか。

選択肢は多くはありません。まずは現状のシステムを改修し要件を満たす仕様に変更すること、次に請求書発行に関してインボイス制度対応のシステムを新規に導入し新システムにて要件を満たすこと、です。

その他、システムに依拠せずマニュアルで請求書を作成し直すことも方法として考えられます。後者になればなるほどシステム対応コスト(時間と費用)を抑えた制度対応が可能ですが、その分人的コストが必要になることが一般的です。

現システムの改修となると、適格請求書発行に特化した新システム導入に比較して長期間を要することが少なくなく、費用も多額になりがちです。制度施行まで間に合わない可能性もあり、未対応の会社ではこれらの点も判断要素になり、合わせて留意しなければなりません。

また、システム改修や新規システム導入については、会社内で様々な部署や担当者も巻き込んだ対応が必要になることも忘れてはなりません。システム連携や会社セキュリティを考慮するとIT専門の部署や担当者の検討参加は不可欠であり、コストによっては取締役会などの承認まで必要になることもあり、いくつものハードルが生じます。

また、新規にシステム導入する際に合わせて確認が必要な事項として、会計処理との整合性という論点もあります。

例えば、販売管理システムなどで取引を管理し、販売管理システムと会計システムが連動している一方、新規に適格請求書要件を満たした請求書発行システムを導入した場合、販売管理システムおよび会計システムで認識していた消費税金額と異なる消費税金額が適格請求書発行システムで認識される可能性があります。

そのとき、取引先に請求する金額は変更できないため、請求金額(入金金額)と会計上で認識していた債権金額との間に生じた誤差を、どのように処理するのかを事前に検討しておくことが必要になります。

取引年月日や内容(項目②、③対応)

次に上記項目のうち、②取引年月日や③取引内容についての要件です。

記載事項として、これら2項目はインボイス制度施行に関係なく以前から記載しており要件として当たり前じゃないか、と思われる方もいるかもしれません。しかし、だからこそ意外と見落としてしまいやすい点でもあります。

取引年月日について、皆さんの会社の請求書を一度振り返って確認してみてください。単純な取引ほど取引年月日は省略されてしまっていることが多くはないでしょうか。

改めて確認すると、単純なことであるがゆえに要件を満たしていない結果になるかもしれません。改めてご確認することをお勧めいたします。

なお、取引年月日の記載は具体的な日にちまで記載せずとも○月分などとすることでも問題ありません。取引内容についても、制度対応をすることをきっかけに取引年月日と同様に明確に記載していたか、確認してみてください。

システムを無視できない

近年、システムを利用していない会社は多くないと思います。システムだけがインボイス対応方法ではありませんが、多くの会社ではシステムとの関連を無視してインボイス対応することは困難だと思います。

システム利用しているから大丈夫だろうと思わず、自社の状況を把握分析し、インボイス制度へ適切に対応できるようにしてください。

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