オフィスの賃貸家賃や税理士顧問料等の月次定額決済取引はインボイス制度でどうなる!?請求書を発行していない取引に対する対応とは

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通常、会社が賃貸しているようなオフィスに関する家賃などは、毎月の請求書領収書などは交付されません。

同様に税理士に支払う顧問料についても、月次定額報酬の口座振替による支払い(以下、「月次定額決済取引」)が多く、都度の請求書の交付を受けてはいないのではないでしょうか。

今回はこのような「月次定額決済取引」における、実務上の対応を見ていきたいと思います。

「月次定額決済取引」についても、原則はインボイス保存が必要

このような企業のオフィス賃貸借契約や税理士等の顧問料などの請求書等が交付されない取引について、インボイス制度が適用されると、仕入税額控除の適用を受けるためにはどのような対応が必要になるのでしょうか。

契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として適格請求書の保存が必要です。それ以外にも、一定期間分の取引についてまとめて領収書の発行依頼し、それらを入手のうえ、保存という方法も考えられます。

インボイス制度においては、その書類の名称が良くも悪くも問われないため、当然これら領収書についても適格請求書としての記載事項が必要となります。

契約書+他の書類との組み合わせも可

しかし、適格請求書として必要な記載事項は、ひとつの書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになります。

そのため、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。(国税庁インボイス制度公表サイト内、『消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問93』より)

よって、このような「月次定額決済取引」の場合には、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに、他の書類を合わせて、適格請求書の記載事項を満たす方法も認められることとなります。

他の書類については、実際に取引を行った事実を客観的に示す必要があります。これらについては、特段限定されてはいないため、支払いの事実を証明するような書類であれば幅広く認められるのではないかと考えられます。

例えば、窓口やATMで振り込んだ際に受け取る利用明細や控え、該当する銀行通帳なども当然に認められるでしょうし、インターネットバンキングで振り込んだ際の出金記録なども改竄されない形で適正に保存、出力ができれば問題ないでしょう。

ただしその際には、電子帳簿保存法の要件を遵守することが必要となります。例えば、インターネットバンキングを利用している場合は振込等の画面のハードコピー(スクリーンショット等)や、CSVファイル等の明細データをダウンロードしたものなどが考えられます。

これら電子取引に関する「訂正削除防止規程」を適切に整備し、共有サーバー上に検索性を担保した形で規則的に保存、もしくは必要に応じて電子帳簿保存法対応した「文書管理ソフト」に格納保存することが必要です。

上記対応についてまとめると、以下のような方法から自社にとって合理的な方法を選択することになります。

    1. 代金決済の都度、インボイスを入手し保存
    2. 一定期間分の取引について、まとめて領収書を入手し保存
    3. 契約書+客観的に取引事実を示す書類を入手し保存(以下図参照)

 


(国税庁「インボイス制度 オンライン説明会」資料より)

インボイス制度開始前の既存契約における注意点

インボイス制度適用後の令和5年10月以降の「月次定額決済取引」契約においては、少なくともその契約書に役務提供を受ける相手側(仕入先)の「登録番号」、「適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」を記載しておけば、上記対応によってインボイス制度上は、仕入税額控除が認められることとなります。

しかしながら、インボイス制度開始前の既存分の契約については、契約書に上記の追加事項(登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等)が不足することが想定されます。

その場合、契約書の再締結が必要となるのでしょうか。

この点、実務上は適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えないこととされています。(以下図中「令和5年10月以降のご案内」参照)
 

(国税庁「インボイス制度 オンライン説明会」資料より)

まとめ

今回は、企業のオフィス賃貸借契約や税理士等の顧問料などの、請求書等が交付されない「月次定額決済取引」における実務上の対応を見ていきました。

いずれにせよ、これ以外には認められないといった絶対的な対応というものはなく、自社にとっての負担や合理性といった観点から取捨する必要があります。

まずはインボイス制度というものがどういった目的があり、その対応に向けて自社一体となって取り組むことが肝要と考えますので、今回の記事が皆様の取り組みの参考となれば幸いです。

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