
私は、数年前までとある企業で経理を担当していました。
私が新入社員の頃お世話になったW部長は、とても穏やかで面倒見の良いタイプ。丁寧に指導してくれる気さくな部長は、社員からの信頼も厚く模範的な上司でした。ただ一つ、「飲み会が大好き」という点を除いては…。
今回は、そんな飲み会大好き部長が起こした珍事件をご紹介します。
どうしても飲み会に行きたかった部長の秘策とは…?
これは、まだ新型コロナウィルスが猛威をふるう前、コンプライアンスも今ほど厳しくなかった時代の話です。
私の部署は、実務担当者2名と部長というメンバーで構成され、毎月の経理業務を行っていました。私たちが日々の実務を行い、部長が全体のとりまとめを行います。
部長はいざという時には責任を取らなければなりませんが、基本的には私たちの処理したものを承認するだけなので、業務量としてはそこまで多くはなかったと思います。
飲み会が大好きなW部長は、18時になると嬉しそうに帰宅し、翌日には飲み会で仕入れた情報を私たちに教えてくれる、そんな微笑ましい日常でした。
しかし、月末月初の繁忙期にはそうもいきません。月次の締め作業では、在庫を一つずつカウントしたり、台帳と合わなければ原因究明をしたりと時間がかかることも多いのです。実務担当の私たちは、こうしたトラブルがあると残業になることもよくありました。
一方、部長はというと、数字が固まって承認をするまでに「ただ待っているだけ」の時間が多く、割と暇そうにしていることも…。
とある月初の金曜日、朝から深刻そうに『今日は◯◯社の大事な接待があるんだよな〜』と早めに帰りたいアピールをするW部長。
近隣企業の気の合う部長同士の飲み会だと知ってはいたものの、私たちは部長のために早く処理を終えようと頑張っていました。(ウキウキと飲み会に出かけてく姿は憎めないものがあり、私たちはW部長の飲み会をそこまで否定的に捉えてはいませんでした。)
順調に進んでいるように見えていた作業ですが、終盤に差し掛かった頃、現金実査で誤差が発生してしまいます。どこで現金の払い出しミスがあったのかを洗い出すのに時間がかかってしまい、残念ながら18時までに終えるのは難しい状況に。
明らかにソワソワする部長を横目に、私たちは原因究明に奔走します。ようやく解決の目処が立ったとき、時計は19時を回っていました。
問題は解決しましたが、あといくつか書類を作成し、承認をもらうという工程が残っています。「あと30分はかかるかな」と気まずく思いながら作業をしていた時、事件は起こりました。
ついにしびれを切らした部長が、『内容はOKだから、あとはそっちで印鑑押しといてよ』と私たちに印鑑を預けて飲み会に向かってしまったのです。
「そんなのあり?!」と驚きましたが、どうしても飲み会に行きたい部長の情熱に、「そんな方法があったか〜」と妙に感心してしまったのを覚えています。
しかし、運が悪いことに、承認が終わっていないのに部長が帰宅していることにたまたま気づいた支店長が、事の経緯を把握することとなってしまったのです。後日W部長は厳しく叱責され、改善報告書を提出する事態となりました。
アナログな承認を不便に感じている上長も多い?

W部長は「飲み会に行きたいから」というとんでもない理由で承認を他の人に任せようとしました。
こんな理由で承認を人任せにする上長はかなり珍しいと思いますが、実際には出張や外出、他の業務が忙しくて「印鑑を預けたい」と思ったことのある承認者も多いのではないでしょうか。
できあがった書類に判を押して承認するアナログな経理では、どうしても現場に立ち会う必要があります。月末月初などの承認が必要なタイミングで在席していられるようにいくらスケジューリングしたとしても、緊急の対応が入れば難しくなってしまうでしょう。
上長の承認が遅れると、その後の処理にも遅れが生じ、影響は広範囲に及びます。経理の現場にとって、「その場で承認ができない」ことは大きな課題だといえるのではないでしょうか。
システム導入で実現する業務効率化
アナログ承認の問題を解決するためには、やはりシステムの導入が効果的です。
例えば、申請から承認まで一貫してオンラインで完結できるシステムがあれば便利でしょう。承認者は外出中でもスマートフォンから承認が可能となり、承認だけのために自席で待つ必要もなくなります。
移動のすき間時間で承認を行うなど業務を効率的に進められるだけでなく、「承認待ちで処理を進められない」という担当者サイドの問題も解決できるのではないでしょうか。
また、経理で扱うさまざまなデータと自動連携できる機能があれば、さらなる業務効率化が期待できます。銀行口座やクレジットカード情報をはじめ、領収書や明細データ、交通系サービスまで幅広く連携できれば、処理にかかる時間を大幅に削減できるでしょう。
さらに、インターネットバンキングへの連携を行なえば、キャッシュレス対応も可能になると考えられます。小口現金で経費を精算する必要がなくなれば、日々の現金実査や現金誤差発生時の対応が一切不要になり、担当者の負担も減らせるでしょう。
まとめ
今回は、飲み会にいきたいという呆れた理由で承認を部下に任せようとした部長の話でした。理由の是非はともかく、アナログ承認が経理の現場にとって問題になっていることは事実です。
他業務との両立、時間外労働の削減といった真っ当な目的でシステム化を希望する声は大きいのではないでしょうか。
画期的な機能を備えたシステムを導入することで経理全体の業務効率化につながり、経理に携わる人々が快適に働けるようになるのではないかと思います。
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