中堅企業のBPO導入、その実際と導入前に知っておきたいこと

読了まで約 7

BPOサービスは大企業だけのものではなくなった

経理業務のBPOサービスに関して、リソース不足、BCP、業務の効率化などの観点からご相談をいただく機会は増えてきております。相談いただく会社の規模は、上場企業の大企業グループやそのグループ会社、中堅企業、比較的規模の小さな中小企業まで多岐にわたります。

BPOサービスがあまり一般的でなかった頃は、一部の外資系企業や、四半期決算の対応がハードになった上場企業グループなどといった一部の企業のみを対象としていた面もありますが、昨今は幅広い企業規模、業種に向けてBPOサービスが提供されてきています。

そこで今回は、中堅企業におけるBPO導入事例について見ていきたいと思います。

中堅企業におけるBPO導入のきっかけ

中堅企業における経理部門というと、会社の歴史もあり、管理部門も盤石なイメージもあると思いますし、実際そのような会社も多いです。ただ、BPOの依頼が来る一つのパターンとして、
今まで経理部門を統括してくれていたコアメンバーが退職することになってしまうのですが、後継者が育っていないので、経理業務が回らなくて困っています」
といったように、特定の個人の退職を奇貨として相談を受けるケースがあります。

会社の経営陣も、信頼できるメンバーが実務を回してくれているので特に心配はしていないのですが、いざコアメンバーが抜けてしまうと残されたメンバーでは経理業務を適切に回せないことに気付き、外部に委託することを選択肢の一つとして考えることになるのです。

これは、経理部門の後継者育成がおろそかになってしまっているために起きた例のひとつです。経営者の後継者問題というのが巷では経営課題の一つと言われていますが、経理部門の後継者問題というのもあることをこの機会に認識しましょう。BPOについて「うちの会社には関係ない話だな」と思っている会社にとっても、後継者問題は決して他人事ではないのです。

では、中堅企業の BPO導入は後継者育成モンダイがある場合だけに検討されるかというと、決してそのようなことはありません。後継者育成が十分に行われている場合で、さらに業務の効率化を推進するため、より戦略的なことに時間を割くために、定型業務はBPOを導入するという中堅企業も多くあります。

BPO導入前に知っておきたいこと:クラウドシステムの利用有無

さて、それで経理業務のBPOをしようと言って、すんなりうまくいくかというとそうでもないという現実もあります。中堅企業でBPOを導入する際に、どのようなことが起こるでしょうか。

まず依頼を受ける際に、「資料はすべて会社にあるので、会社で業務を行ってください」と言われることがあります。つまり、現地に来てコアメンバーが行っていた経理業務を行って欲しいというリクエストです。

もちろん、派遣会社のようにそのようなニーズに応えてくれるケースもありますが、BPOベンダーでもすぐに人を送り出せないケースも多いです。まして最近のコロナ禍においては、感染予防の観点からも、あまり積極的に現場への派遣は行われていないのが現状です。

そのような際に、BPOサービスの導入を可能にしてくれるツールの一つが、クラウド化された経理システムです。

企業が使っている経理システムがクラウド化されていない場合のBPO導入は、必ずしも効率的に行うことができません。例えば、コアメンバーが入力していた決算伝票などの一部の経理伝票をBPOベンダーが入力し、それ以外の日常の伝票を経理部門のメンバーが分散して入力したいといった場合に、クラウドサービスを利用できればBPOベンダーと会社にいる経理部門のメンバーが同時に経理作業をすることができます。

クラウド化されていない経理システムを利用している場合は、BPOベンダーが入力をするために、いったん経理部門のメンバーは作業を止めて、経理データをメール等で送付する必要が出てきます。その間は作業が中断しますので、業務のスピードが落ちてしまいます。

別の方法として、BPOベンダーが入力した伝票データだけを会社に送付して、その分を経理部門のメンバーが会社の経理システムに取り込むという方法であれば、作業は中断しないですが、その場合は取込のミスや二重取込といったことに気をつけなければなりません。

クラウド化された経理システムであればお互いに作業を中断することはありませんし、また、BPOベンダーの方も会社に行かずにリモートで作業をすることができます。

BPO導入前に知っておきたいこと:証憑の受け渡しはスムーズか

中堅企業で経理システムがクラウド化されていると、BPOサービスが導入しやすくなる理由はもうひとつあります。

それは資料の共有をクラウド上でできるという点です。

必要な資料をクラウド上にアップすることが可能であれば、証憑を紙で送付する必要も、BPOベンダーが現地に赴いて資料を入手する必要もありません。郵送の手間がなくなると同時に、クラウド上にアップした段階で資料を共有できるので、業務の速度もあがることになります。

さらに、電子帳簿保存法の適用をすると、クラウド上にアップされた証憑を保管することでペーパーレス化の実現も可能となります。

最近は、在宅勤務も可能にする小回りの利いたクラウド上の経理システムがありますので、BPO導入を考える際は、システムの利用状況も併せて見直すとより効果が出ると思います。

一昔前だと、業務を統合するERPシステムといった、中堅企業といえどもひるんでしまうような高額な商材が多かったですが、初期投資が少なく比較的リーズナブルな月額費用で利用できるクラウド化された経理システムも増えています。その点でも、利用する側にとっては業務改善の障壁が低くなってきたといえるでしょう。

BPO導入前に知っておきたいこと:いつでも社内に業務を戻すこともできる

BPOを一度使い始めると、社内に業務を戻せなくなるのでは、と心配する中堅企業もあるかと思います。

この点は中堅企業に限った話ではありませんが、コロナ禍において、業績が順調ではない会社も一定数出てきているのも現実です。実際に、「外部への資金流出を減らしたいので、BPOした業務を社内に戻したい」という相談事項が上がってくることがあります。会社全体の業務量が減ってしまった中、社内に経理業務を実施するリソースがあるのであれば、このような緊急事態下では、外部にBPOするのをいったん取りやめるのも一つの選択肢です。

一度BPOを導入しているのであれば、業務フローが標準的になっているのが通常ですので、社内にリソースさえいれば業務を戻すことは十分に可能です。BPO導入時に業務を標準化したり、可視化してきたことがここで活きてくるのです。

また、BPO導入の効果のひとつに固定費の変動費化ということも挙げられます。このような状況下でコスト削減をしたい場合に、仮にBPOをしていない場合は社内の人件費はリストラでもしない限り削減はできませんが、外部に委託しているBPO業務であれば、いったん業務を終了させることでコスト削減ができるのです。

緊急事態だからこそ、どのように企業のコストカットをするのかはしっかり吟味する必要はあるでしょう。その上でBPOのコストをカットしてしまって本当に問題がないか、BPOに回していた業務を社内でカバーできるということを判断できれば、一時的にBPOサービスを取りやめることは難しいことではないでしょう。

まとめ

今回は、中堅企業におけるBPO導入の現状の一例をお伝えしました。

BPOを導入する際は、導入後の効率を考えて利用システムの検討をするケースが多いです。クラウド化された会計や経費精算のシステムは、BPO導入の効果を発揮するツールになりますので、導入の際はその点も考慮することをおすすめします。

BPO導入時は業務の標準化等をすることがやや面倒に感じるかもしれませんが、社内の業務整理につながりますし、可視化する過程で経理部門の後継者育成の一助になるケースもあります。

未来の経理部門のためにBPOの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

本ブログは、経費精算システム「マネーフォワード クラウド経費」を提供しているマネーフォワードが運営しています。

月初に発生する立替経費の原本突合たいへんですよね

領収書のBPOサービスの概要資料をプレゼント!

経費精算の本音調査

執筆:中尾 篤史(公認会計士/税理士)

CSアカウンティング株式会社 /代表取締役社長
日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員
著書に『経理部門の働き方改革のススメ』、『瞬殺!法人税申告書の見方』(税務研究会出版局)、
『正確な決算を早くラクに実現する経理の技30』、
『BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる』(共著)、
『対話式で気がついたら決算書が作れるようになる本』(共著)、
『経理・財務お仕事マニュアル入門編』(以上、税務経理協会)、
『たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる』(宝島社)、
『経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)、
『明快図解 節約法人税のしくみ』(共著、千舷社)など多数。

「マネーフォワード クラウド」シリーズのサービス資料