BPO導入前に業務の見直しを
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を検討する会社が昨今は増えてきている実感がありますが、導入検討をしている会社には2つのパターンがあります。
「この際、業務フローを見直そう!」という会社と、
「今までのやり方で受けてくれる会社を探そう!」という会社です。
それぞれ一長一短ありますが、変化を恐れずに新たな業務フローの中で効率化が図れるという意味では、前者のパターンの方がBPO導入後にうまくいっていることが多いように思います。
今回は、BPO導入にあたり業務フローのカイゼンを図る場合にどこから手をつけるべきか、またそのメリットについて、経費精算にフォーカスして紹介したいと思います。
小口現金があれば廃止宣言を!
経理業務の中でも経費精算業務は、カイゼンの余地が大きく、仮にBPOをしないとしても効果が出やすい業務です。経費精算の業務で小口現金を使って精算をしている会社があれば、まずは小口現金をなくすことをおすすめしています。
精算をしてもらう社員の側からするとその場で現金がもらえるのでうれしい面も多いと思いますが、実は現金を扱うことで経理部門の社員には多大な時間のロスが生じています。
現金を扱って精算すると、
- そもそも現金を銀行に行って引き出さなければならないので、行く手間がかかる
- 現金が手元にあることで、毎日上長のチェックを含めて残高確認をする手間がかかる
- 精算をしに来た社員のために、経理部門の社員はいったん作業を中断して経費精算を行わなければならず、作業を中断することで集中力が途切れて再開する際に手間がかかる
等々、経理部門の社員の時間のロスが結構大きいのです。
これらのコストは見えにくいですが、そうした業務時間のロスの積み重ねが、実は他の作業に振り向けられた可能性を考えると機会損失が大きいといえます。
また、仮払制度があるとさらに厄介です。仮払金の申請者に現金を仮払時に渡すという手間以外に、
- 残金の精算時に仮払の方が多かった場合、現金を経理部門まで持参する必要がある
- 仮払の精算をしてくれない社員に経理から督促をかける必要がある
といった追加業務がかかっているのです。
ですから、経費精算のBPOを検討しているという会社がある場合は、まずは小口現金制度があればその廃止から考えると効率化の一歩になります。
さらに言うと、小口現金制度を残したままBPOを進めようとすると、BPOベンダーの中には「現金は扱いません」という会社も多く、そもそもBPOを受けてもらえないオチになってしまうことも十分考えられます。
経費精算業務はカイゼンの宝庫
小口現金がないとしても、経費精算業務は見直しを図ることでムダを削減できることが多いです。
どのような仕組みで精算業務を行っているかによりますが、同じような事項の入力を複数の社員が行っている会社もあります。
- 経費申請する社員が金額、内容(勘定科目)を経費精算書に入力
- 経理の帳簿作成担当社員が経費精算書を見て、金額、勘定科目を伝票に入力
- 経理の財務担当社員が経費精算書を見て、インターネットバンキングシステムに金額を入力
- 経理の帳簿作成担当者が、送金後の銀行情報を見て、金額、勘定科目を出金伝票に入力
といったように、同じような情報を複数の人が複数のシステムや申請書に入力しているケースがあります。
これらのムダな業務フローを変えるものとして、経費精算システムがあります。経費精算システムを入れることで、経費申請した社員の情報(金額や勘定科目等)を利用して伝票や送金のデータを生成することが可能になります。
結果として、二重入力がなくなることで、経理担当者の負担は大幅に軽減されるメリットが生じるのです。業務フローをカイゼンしない状態で、経費申請業務をBPOした場合、BPOベンダーは経理担当者が実施している入力作業等を行うことになり、効率的な状態で業務を遂行することにはなりません。一方経費精算システムを導入したのちにBPOした場合は、入力をする手間がなくなるので、添付された領収証等との照合に集中することが可能となります。
クラウド化できれば業務は劇的に変わる
導入する経費精算システムも、クラウド化されたものであれば、なお効果が出ます。
社内からしかアクセスできないシステムの場合、外出が続く社員や在宅勤務をしている社員が経費精算の業務を実施できず、業務が遅延することとなります。
これに対して、クラウド化された経費精算システムであれば、外出先からも経費の精算が可能となりますし、承認をする上司も外出先や移動中でも承認が可能です。
申請をする社員や承認する上司にとって、経費精算自体はそれほど付加価値の高い業務ではないはずです。スキマ時間を使って経費精算を終わらせ、本来やるべき業務に時間を振り向けることで会社の成長により貢献できるようになるのです。
申請者のミスを減らすためのカイゼンも
経費精算システムを入れても、実際の現場では経理の負担がよく聞く不満が、
「申請者の勘定科目の間違いが多くて修正に時間がかかる」
「上司がチェックをほぼしていないのか、差し戻しの作業に時間がかかりすぎる」
という内容です。
総じて言えるのが、一次入力者である申請者の申請ミスをなくすカイゼンが必要です。
勘定科目というのは経理部門の社員にとっては馴染みのあるものですが、それ以外の部門の社員にとっては理解が進んでいないものです。工夫をしている例として、できるだけ勘定科目を選択させるということはせずに、取引の内容を選択させて、その内容と勘定科目をマスタで紐付けることで、結果として勘定科目のミスを減らしていく仕組みを構築しているケースがあります。
一次申請者のミスを減らすことができれば、上司のチェックが甘くても(本当はよくないことですが・・・)、経理部門の社員が修正依頼をする回数は減らせます。
会社によっては、申請者の一次入力をする手間を減らすとともに、入力ミスを減らすために一次入力からBPOをするケースもあります。
さらに、クラウド化された経費精算システムの中には、領収書等をスマホで撮影してアップロードするだけで、金額や勘定科目も自動判定してくれる優れものもあります。その上、判定に自信がないものをアラートとして教えてくれたりもします。
こうなると入力の手間もなくなりますし、チェックを重点的に実施すべき対象も絞られてきますので、BPOをする場合でも業務範囲が業務カイゼン前と比べて狭めることも可能です。
業務フローを変えればBPOも明確に
今回は、経費精算の業務フローを改善しながらBPOを導入する方法とメリットを見てきました。BPOを導入しようとすると、今の業務のやり方やシステムの課題が浮かび上がることがあります。
その際に、「面倒くさいからとりあえず今のやり方でBPOしてしまおう」とせずに、導入を検討する段階で業務フローを変えることで、副次的な効果が生まれることが実務的には多いです。
今回お話した経費精算の例で言うと、
- 小口現金制度がなくなることで現金管理から解放される
- 二重入力のムダが経費精算システムの導入でなくなる
- クラウドシステムを導入して在宅勤務でスムーズに業務を遂行できる
- マスタ設定を工夫することでミスが減る
- 入力作業をBPOすることで一次入力者の負担がなくなる
という効果がBPOの導入に合わせて得られるのです。
BPOを導入するとなると、そのための準備をしなければならないというイメージがあり負担感が先に出てしまうこともあると思いますが、業務フローのカイゼンを一緒に考えてくれるBPOベンダーと一緒に進めることで、業務改革の羅針盤を見ながら進められます。はじめの一歩さえ踏み出せば大きな成果が得られることも多いのです。
変化を恐れずに、BPOを活用して会社を改革することを考えてみるのはいかがでしょうか。
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