<つぶれない会社の負けない経理戦略> 第3回 自分達の会社の良さや強みを徹底的に見直す

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コロナ禍を生き抜くために会社の資源を活用する

先日、ある会社の経理担当者の方から連絡がありました。その会社もコロナの影響を受けて売上の確保が課題になっているので、この状況を打開している会社の事例があったら教えて欲しい、ということでした。私はいつも、「経理担当者こそ、利益が出る新規ビジネスの発案が得意なはず」と言い続けているので、その方の会社でも、経理部内で自発的に新規ビジネスや打開策が考えられないかということを話し合っていく中で、問い合わせをしてくださったようです。

私は回答としてある会社の事例をお答えしたのですが、それに付け加えて「他社事例も大事ですが、もう一度、自分達の会社を徹底的に知る、ということを行ってください」とお願いしました。事業内容から社員ひとり一人の仕事の内容や特性まで、自分の会社で「まだ使い切れていない資源や才能はないか」ということを洗い出して、それを今のこのコロナ禍でも活かせるものがないかということを検討してください、とお伝えしました。

具体的に何を見直すのかというと、「ブランド」と「資源」に分けられると思います。「ブランド」に関しては、その会社に所属する人達の他にも、社員の家族や知人、また取引先などからも聞くことができると思いますし、むしろ外部からの意見のほうが、客観的に自社の評価や独自性の有無などを聞けるのではないでしょうか。たとえば周囲の方に「うちの会社が新規事業を行うとしたらどのようなことをしたらいいと思う?」ということを聞いてみると、その過程で、自社の特徴や強みが見えてくるかもしれません。

一方で、「資源」に関しては、社内の人間でしかわからない部分が多いと思います。いわゆる「ヒト・モノ・カネ」の部分です。自分達の会社にはどのような人材がいて、どのような原材料や部品、コンテンツなどがあり、今お金が会社にどれだけ残っていて、いくらまでなら使える余裕があるのか。これらの会社の「資源」をいかに活用して、新規ビジネスを考える、あるいは既存事業をアレンジできるか、ということがコロナ禍を生き抜く鍵ではないかと思います。

たとえば「モノ」に関していえば、経理部の皆さんは支払請求書からでも、自社はどのような原材料等を仕入れているかどうかということが具体的にわかるでしょう。それらを使用してモノづくりをするノウハウ自体は既に会社に備わっているわけですから、「同じ原材料を使って新しい商品を作ることはできないかな」などと考えることで、全くのゼロからのチャレンジよりも、取り扱いのノウハウがある段階からチャレンジを進めることで、時間や失敗のリスクを大幅に軽減できるはずです。

また、「ヒト」に関していえば、先日、テレビを見ていたら、新規事業に蕎麦屋を選択し、責任者として蕎麦打ちを趣味にしていた社員を抜擢した会社について放映していました。社員が100人いれば100の人生、100個の特技があるはずですから、それらを精査して、「自社の社員の特技や趣味から、自社の新規ビジネスに活かせるものはないか」という発想の転換もありではないかと思います。社員の特技や趣味などが会社のビジネスに直結すれば、担当する社員のモチベーションも当然ながら上がりますので、意欲的に仕事に取り組んでくれることでしょう。特に今コロナ禍では、従業員の給与などの固定費が経営を圧迫している会社もありますので、「従業員数が多い=リスクが高い」と思う人もいるかもしれませんが、こうした視点から見ると、社員100人の社員よりも社員1000人の会社のほうが、1000通りの特技がある点においては有利だということもいえます。何事も悲観せず、前向きにとらえられる角度を探すことが大切です。一つ配慮すべき点は、社員の特技を、経営側は「タダ使いしようとしない」ということです。

よくあるのが、英語を話せる人を、「〇〇さん、英語話せたよね」「〇〇さん、ちょっと助けて」と、その会社のありとあらゆる「英語での困りごと」を押し付けてしまうという行為です。私もいろいろな会社に伺って、社員の方達とコミュニケーションを取る中で、前職や学校の専攻などの話を聞いた際に「じゃあ〇〇さん、英語喋れますよね」と聞くと、多くの方が「いえいえ、全然喋れません」と言います。それは、自分が英語を喋れると一言会社に言ってしまうとタダ使いさせられてしまうことがわかっているので、多くの方は「ビジネスレベルではないので」と否定をされます。しかし実際には、海外から電話がかかってきたときに、流暢に英語で対応しているのを聞いて「やっぱり喋れるじゃん」と思うことも多いのです。社員の特技や資格に対しての「手当」を支給することで、その会社に所属する社員の特技や知識が活用できるわけですから、外部委託するよりも節約でき、かつ信頼できる相手に会社は仕事をお願いできるのですから、社員が自分の賜物を自己申告しやすい環境や制度を整えることも一考ではないかと思います。

経理部だからこそできる新規ビジネスの発案

「カネ」の部分については、社内においても、経理部と一部の役員などしか知らない部分です。現場に「自由な発想で新規事業を提案して」と言っても、「宇宙で…」などと、会社の資金状況とあまりにも乖離したアイデアを出されても、平時のときはいいとしても、こうしたコロナ禍のような有事では単に時間のロスにつながってしまうこともあります。そうならないように、「今、手元にいくら使えるお金があって、その資金の範囲内でできる新規ビジネスはないか」という現実的な条件設定から新規ビジネスの発想を考えるというプロセスもありではないかと思います。経理部以外の社員では、具体的な資金の数字などは通常は閲覧したり知らせたりしてもらう機会は少ないので、経理部が主体的になってできることではないかと思います。

このように考えるだけでも、「経理部だからこそできる」「バックヤード部門にいるからこそできること」もたくさんあることでしょうし、何より「売上に直結する」こと自体を経理担当者も考え、提案することは実際にできます。

先日訪問したある会社で印象的なエピソードを伺いました。その会社で新規事業のアイデアコンテストを行ったそうですが、応募の対象者を正社員だけでなく、アルバイト、派遣社員、業務委託者にまで範囲を広げて、誰でも応募ができる条件にしたそうです。その結果、優勝したのが、派遣会社から派遣されていた経理担当者だったそうです。私はそれを聞いて全く驚きませんでしたし、「やっぱり」と思いました。派遣契約で経理をしている人は、いろいろな派遣先でビジネスモデルや帳簿を見てきています。「種類」を数多くこなしているので、どのようなビジネスモデルが実際に利益を出し、また反対に出ないのか、という事例も数多く見知っています。利益が出そうで失敗の少ない新規ビジネスを考えるための「材料」を数多く持っているため、有利に決まっているのです。

「赤字にならない新規ビジネス」、「実際に現実可能な新規ビジネス」、「時間と手間をかけない新規ビジネス」、「リスクを極力抑えた新規ビジネス」。こうした新規ビジネスの発想は経理担当者が得意分野とできるはずです。経理社員の悩みの一つに、「頑張ってもそうでなくても、給料があまり変わらない」ということがありますが、こうした新規ビジネスの提案などを制度化し、実際に採用されたら報奨金を出す、などインセンティブにつながるような評価制度の制度設計などに会社もすると、経理社員のモチベーションも上がり、会社も潤い、一石二鳥ではないかと思います。

<つぶれない会社の負けない経理戦略>
第1回「売上が突然0円になったら」を想像する
第2回「粗利50%以上」の意識を社内に浸透させる

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:前田 康二郎 (まえだ こうじろう)

フリーランステレワーカー。数社の民間企業で経理総務・IPO業務等を行い、海外での駐在業務を経て独立。現在はフリーランスでのコンサルタント活動、講演・執筆活動の他、節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)を運営している。 著書に『スーパー経理部長が実践する50の習慣』『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上 日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』『自分らしくはたらく手帳』(以上 クロスメディア・パブリッシング)、『経営を強くする戦略経理』(日本能率協会マネジメントセンター)など。最新刊は『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』(クロスメディア・パブリッシング)



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