
連載を通じ、私達『人間』と『事務作業用のロボット』が、一緒に仕事をする新しい『仕事のカタチ』が『RPA』だと定義してきました。前回は『Robotic Crowd Agentを使ったRPA体験』について紹介していきましたが、今回「後編」として、『CSVファイルへのデータ抽出』を、『RPAのはじめかた』著者のカワサキタカシさんにわかりやすく解説してもらいます。
RPAツールをもっと体験してみよう!
みなさま、『RPAの基礎知識』からはじまって、『RPAツールとマネーフォワード クラウド経費との共通点』、そして、『Robotic Crowd Agentを使ったRPA体験』と、少しずつRPAの世界にも慣れてきましたね。
前回ご紹介した「Robotic Crowd Agent」ですが、実際に動かしてみましたか?パソコンの画面が自動的に動いていく様子は、見ていてちょっとワクワクしますよね。「ロボットってこんな感じなのかー」というイメージが、グッと明確になったのではないかと思います。

参考URL:https://tutorial.co.jp/news/release/2019/06/rc_agent/
Robotic Crowd Agentは、ものすごくシンプルでコンパクトなツールなのですが、第一線で活躍している大手のRPAツールと同じように、ワタシ達のパソコン上での操作を、「記録」して「実行」することができます。シンプルな分、こちらのほうが設定はスムーズです。RPA入門としては本当に良いツールですので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
では今回は、「Robotic Crowd Agentを使ったRPAツール体験」の後編として、「CSVファイルへのデータ抽出」をおこなってみましょう!
データ抽出の設定
ここでは、みなさまがご覧いただいている「Money Forward Bizpedia」のWebサイトを使って、データ抽出をおこないます。日々更新しているメディアサイトの「記事一覧」をロボットが自動的に作ってくれたら…うん、スゴく便利そうですよね。
抽出の流れは、こんな感じに組み立ててみました。
STEP1-1:「記事のタイトル」を抽出する
STEP1-2:「記事のカテゴリー」を抽出する
STEP1-3:「記事の公開日」を抽出する
STEP1-4:「記事の抜粋」を抽出する
STEP2:抽出したデータを「CSVファイル」に出力する
ふむふむ。メディアサイトでの記事一覧には、「記事のタイトル」だけではなく、「公開日」や「抜粋文章」が書かれていることが多くあります。それらのデータも一緒にCSVデータとして出力しておけば、Excel上でカンタンに記事を確認することができますね。
それでは、「猫のアイコン」をクリックして、Robotic Crowd Agentのメイン画面を開きましょう。『●REC』の隣に『□EXTRACT DATA』というボタンがありますので、そちらをポチッとどうぞ。
『データ抽出モード』に入りました。画面上に「抽出したいデータをクリックして、データの名前を設定します」と表示されています。
マウスを動かすと、「記録モード」の時と同じように、マウスカーソルが乗っているWebサイトの「各要素」が、『黄色い枠』で括られるようになります。
記録モードの時は、黄色い枠を左クリックすることで、「ポップアップメニュー」が表示されましたが、データ抽出モードでは、同じように左クリックすると、「データ抽出設定画面」が表示されます。まずは、「起点となる記事のタイトル」をクリックして、データ抽出設定をおこないましょう。
データ抽出設定画面では、「Data Name(データ名)」を入力します。このデータ名は、CSVのファイル上での「カラム名(列の名前)」になります。自由に付けられますが、ここではわかりやすく「Title」としておきましょう。
データ名の入力ができたところで、「次へ」を押してください。
すると、「黄色い枠」が『空色の枠』に切り替わります。「この部分がデータ抽出対象ですよ」というわけですね。
ここから大きくふたつのルートに分かれます。
① この記事のタイトルだけ抽出したい場合は、「同じ記事のタイトル」選択して、詳細画面の「次へ」をクリック。
② 一連の記事のタイトルをまとめて抽出したい場合は、「次の記事のタイトル」を選択して、詳細画面の「次へ」をクリック。
こんな感じです。今回は一連の記事のタイトルをまとめて抽出したいので、「次の記事のタイトル」を選択して、詳細画面の「次へ」を押しましょう。
(①の場合、「完了」ボタンを押したくなりますが、「完了」ボタンを押すと「データ抽出モード」丸ごと終了してしまいますので、基本的には「次へ」を押したほうがわかりやすく動作します)
データ名は、あらかじめ「Title」が入っていますので、そのまま「次へ」。
画面上の「空色の枠」が一気に増えて、各記事のタイトルがデータ抽出対象になりました!
では続けて、STEP1-2からSTEP1-4までの各項目を設定していきましょう。
まずは、記事カテゴリーである「経費精算」の文字を左クリックして、詳細画面をオープン、「Title」と入りっぱなしになっているデータ名を、「Category」に上書き修正、「次へ」を押します。
すると、「空色の枠」が一気に増えます。既に記事タイトルの段階で「一連の行を抽出します」と設定していますので、その設定のままで、「新しい項目」が追加された、というイメージですね。
こうなると後はカンタンです。「日付」と「抜粋」をクリックして、データ名をそれぞれ「Date」「Excerpt」と上書きしたら、「次へ」で順次項目の追加をしていきます。
すべての項目の設定ができましたので、「猫のアイコン」からメイン画面を開いて、「■STOP」ボタンをポチッとな。データ抽出モードを終了させましょう。
CSVファイルに出力してみよう!
では、抽出設定ができましたので、「▶TRY」ボタンを押して、実際にデータ抽出をしてみましょうか。せーの、よいしょ!
「実行中」の文字がしばらく表示されて……『データ抽出結果画面』が出てきました!
1行目には、「Title」「Category」「Date」「Excerpt」と、先ほど設定した「データ名」が入っています。そして2行目からは、「抽出したデータ」がズラッと並んでいますね。
データ抽出結果画面の右下にある『ダウンロードCSV』ボタンをクリックすると、この画面の内容を「CSVファイル」の形式でダウンロードできます。早速CSVファイルをダウンロードして、Excelで開いてみましょう。
おおー、データ抽出できていますね。「記事のタイトル」「記事のカテゴリー」「記事の公開日」「記事の抜粋」すべての項目が埋まっています。
ここまで来たら、後はもう自由自在ですね。セルや文字に色を塗ったり、カテゴリごとに並べ替えたり。Excel上で見やすく加工した後、メールやグループウェアでチームのメンバーに届けてあげましょう!
ちょっとした裏技をひとつ
データ抽出おつかれさまでした。沢山の記事の情報を、ササッと自動的に表にまとめてくれる、かなり実用感のあるロボットを作ることができましたね。
ただ…ですね。ひとつだけこの「Robotic Crowd Agent」には『悩ましい仕様』がありまして。せっかく苦労して作ったこのロボットなのですが、Google Chromeを閉じると…「消えてしまう」のです。
前回お話ししたように、あくまでもこのツールは、「Robotic Crowd」という上位(有料)ツールの入り口、と色合いが強いものですので、作ったロボットをしっかり「管理」したい場合は、ロボットをそちらに引っ越しすることがオススメとされています。(メイン画面にある「□Copy」機能は、そのための機能です)
ですが、できれば「Robotic Crowd Agent」も、もっともっと活用したいですよね。
ということで、今回は少しだけ、「裏技的な方法」をお教えしましょう。
まずは、今出てきた「□Copy」機能を使います。
この機能を使うと、「設定内容をテキスト形式のコードでコピーする」ことができますので、コピーしたコードをメモ帳に貼り付けます。「記事情報抽出」のようなわかりやすいファイル名を付けたら、「ファイルを保存」、と。
保存できたら、「RESTART」ボタンを押して、画面を初期化します。
最初の状態に戻りましたね。この状態ではコードを貼り付けることができませんので、一旦「□EXTRACT DATA」ボタンを押して、どの項目でもいいので、データの抽出設定をおこないます。
データ名は何でも大丈夫です。「次へ」ボタンを押した後、猫アイコンからメイン画面に戻って、「■STOP」ボタンを押します。
コードが表示されましたね。こうすることで、コードが「貼り付けられる状態」になります。
「▶TRY」ボタンも表示されていますので、先ほどメモ帳に保存しておいたコードで上書きを行い、「▶TRY」ボタンを押すと……
先ほどの設定のとおりに、データ抽出がおこなわれました!いやっほーい!
はじめてのデータ抽出ロボット作り
今回は「データの抽出」の設定と、ちょっとした「裏技」のお話でした。シンプルな設定内容でしたが、なかなかどうして、ガッチリデータを取得してきてくれましたね。
①特定のWebサイトを開いて、②「表」などの一連の情報をコピペして、③Excelでまとめる。実際の仕事の中でもよく登場する作業だと思います。そしてこれが意外と面倒で、「うっかり行を飛ばしてデータが不揃いだったり」、「文字の装飾情報まで一緒にコピペして見た目も不揃いだったり」。ちゃんとしたExcelファイルにするには手間も時間もかかります。
その点、RPAツールは、設定さえ正しくおこなうことができれば、後はいつでもボタン一発で「素早く、正確に」データを作ってくれます。まさに『ロボットの本領発揮』という感じですね。
さて、前回と今回とで、「Robotic Crowd Agent」を使ったRPAロボット作りを体験してみました。「記録」と「実行」、「データ抽出」、「裏技」も駆使すれば、無料ツールでも作業効率アップは夢ではない……のは確かなのですが。
こうなってくると、『本物のRPAツールはどんな感じなんだろう?』ということが気になってきませんか?
ということで、次回は「Robotic Crowd」を使って、本物のRPAツールを少しだけ覗いてみることにしましょう。「スケジューラーを使ったロボットの管理」「エディタを使ったロボットの編集」などなど、RPAツールが持つ魅力的な機能をご紹介しますね。
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