田村夕美子の『経理塾』第3回:経営管理者としての本質に沿った経理スタッフの評価策

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経理としてスキルアップし、社内での評価を上げるためにはどうすれば良いのか?一番大切なのは「本質に対し向き合いながら、自身に備わっている“個”の潜在能力を引き出し、具体的に行動してみること」と言うのは、経理向けの研修やセミナーを行っている田村夕美子さん。Bizpedia読者に向けた田村夕美子さんの経理塾、第3回です!

前回の記事:田村夕美子の『経理塾』第2回:経理パーソンが扱う“データ”そのものに向き合う

優秀な経理像とは?この問いに対しての“答え”を俯瞰(ふかん)してみる。

ひと昔前であれば、“経理は怖がられて一人前”といったやゆも当たり前のように聞かれましたが、さすがに昨今では、他部署とのコミュニケーション能力など、ヒューマンスキルが重要視されるようになりました。しかしながら、いまだに “優秀な経理像”とはどんな人か?との問いに対し、“簿記・税務などの専門知識を豊富に備えている。”、“ミスなく、効率よく仕事を進める人”といったテクニカルスキルに重点を置いた返答が多く聞かれるようです。

さて、あなたの見解はいかがでしょう?もし、あなたがマネージャークラスである場合、部下の方に対して、何を求めているでしょうか。もちろん、“優秀”の定義についての価値観や考え方はさまざまなのでしょうが、現状維持のままでは、人材育成のみならず自社の発展の面でもマイナスな危険性が潜在しているかもしれません。

本項をひもときながら、あなたのこれまでの“答え”を俯瞰(ふかん)し、軌道修正に当たることをお勧めしたいのです。

CASE3:経営者勇退による世代交代。古典的な思考も継承され・・・

(今回の塾生→老舗製造業 管理部経理課 係長Cさん 女性40代)

“私は中途入社です。上司は私よりも年下の男性なのですが、生え抜き社員。彼がスタッフらに求めることは、月次処理の早期化や証票類をくまなくチェックしてミスを発生させずに仕上げるといった、事務処理能力を重視したものばかりなのです。もちろん、彼の見解も間違っていませんが、それらばかりでは、疑問視してしまいます。
社長も今春、交代しました。世代交代なのですが、どうやら先代の経営方針をそのまま維持するようなタイプらしく、先行きが不安です。”

改善策は自ら当たるべき!

Cさんは、他社でキャリアを積んだ経験が買われ、現在の転職先では係長としての職務についているようです。転職組の強みは、“他社を知っている・経験している”ため、現行よりも効果的な方法や抜本的な改定を提案できるなど、生え抜き社員が思いつかないような取り組みが可能なところでしょう。しかしながら、よく見受けられるのは、Cさんのように転職先の仕事のやり方のみならず、社内文化になじめないために、現況に対して疑問視したり、不安になったりするシーンです。ここで、単に愚痴で終わるだけでは、進展などあるわけありません。

実は筆者も経験者の一人です。転職先の社内文化や性別で仕事を割り当てる古典的な方法に納得できなかったのですが、当時は能力不足で代替案も出せずにストレスを抱えていました。しかしながら、いくら当時の筆者がいちスタッフだったとしても、内部会議の際に発言するなどの術はあったでしょう。十分に反省する点です。

さて今回の塾生Cさんは係長の職務に就いているわけで、自社の経営にも直結するような仕事ぶりを発揮する役目があるはずです。よって、“上司はスタッフらの事務処理能力ばかりを求めている。”、“先行き不安・・・”だと感じているのであれば、現状における問題点をピックアップし、それらが起因しての今後の不安要素を掲げ、具体的な改善策を発信するのは、基本的なところでしょう。

筆者がセミナーや個別コンサルティングの中で、受講者の方に以下に示したワークシートを用いて、自ら解決策を検討してもらい、仕事の現場にて、実行していただくプログラムがあります。今回の塾生Cさんにも同様に行っていただきました。以下は手順とCさんが記入したワークシートです。本項をお読みの方も試してはいかがでしょうか。

手順1:現状における問題点
現況において、まさに感じている、危惧している問題点を記入する。
 
手順2:生じるかもしれない危険性
“1”により、今後、予測される危険性を具体的に記入する。
 
手順3:具体的な改善案
どのような方法を取り入れれば、改善に向かうのかあるいは危険回避できるのかを考え、記入する。

実践編:スタッフの実情・潜在能力に注視しながら着実に進める。

今回の塾生Cさんは、ワークを通して自身の日頃の思いを整理し、そもそもの経理スタッフへの“評価基準”にメスを入れ、改定を起案すると導き出しました。ワークシート内に記されている、“コストや経営資源の有効活用等、経営改善に繋がるような仕事が主体化される。”といった評価基準が晴れて実現されれば、スタッフ各人も経営管理者としての本質的な仕事を優先する可能性が高まり、自社の経営改善にも功を奏するはずです。

しかしながら、“そう簡単に実践できるわけない・・・”と感じた方もおられたはずです。
決して“絵に描いた餅”にならないように、Cさんのケースを用いながら、実践編でもしっかりと手順を踏みながら進めていきましょう。

1、スタッフクラスの仕事現場の実情をすくい上げる。

実務を担うのはスタッフクラスです。まずは、彼ら彼女らに対し、評価基準改訂の起案を周知し、実現した場合、どのような課題・問題点があるか否かすくい上げる必要があるでしょう。それらがクリアされなければ、Cさんが思い描くような仕事にスタッフらが従事するのは困難です。

たとえば、各部門からデータの送信期限が守られない、上下関係があり物言いできないなど、これまで見えてこなかった実情が浮き彫りになるかもしれません。中には、関連部署に対して、経理スタッフの仕事を理解してもらうために、経営会議等の場で協力を求めるなど、Cさんのような管理者だからできうることもあるはずです。

ここがなおざりでは、先に進めません。又、万が一Cさんの起案が今回は通らなくても、スタッフらは、実務がスムースに片付く効果は残ります。目をつぶることなく当たっていきましょう。

2、本題!評価UPに繋がる仕事スタイルをスタッフクラス自ら模索してもらう。

次に新評価基準が導入された場合、どのように実務を進めていけば良いのか、各人に模索してもらいましょう。言わば、ここが本題にあたるところです。注意していただきたいのは、トップダウンで、『このようにやりましょう』。と、お仕着せのごとく進めるのは控える点です。

スタッフと一口に言っても、潜在能力や価値観はさまざまです。たとえば、“部門別の原価・費用の傾向と収益をわかりやすくみせるための資料作成に当たる。”あるいは、“費用発生までの承認フローを見直し、チェック機能を強化させる”など、スタッフ各人の視点が効いたアイデアが続々と現れるかもしれません。

個別面談や経理の内部会議の中で意見を集めるなど、方法はさまざまですが、スタッフらの意向を尊重した進め方を重視していきましょう。

3、上司への交渉。適度な感情を交え、これまでの経緯と自社への貢献度を伝える。

最後は、Cさんの腕の見せ所。上層部への交渉術です。

Cさんのケースで言えば、生え抜き社員の年下上司ですが、たとえ、相手が部長クラスやさらに上でも、それほど、気負う必要はないでしょう。人格やタイプ、そして組織間の風通しの程により、方法論は慎重に考える必要があるのでしょうが、経理スタッフの職務に潜在している可能性と導入された場合の自社へ貢献度を添えながらのプレゼンは基本スタイルです。ただ、経理スタッフらの生の声をすくい上げて当たってきた中で、人間だから故に生ずる感情もあったはずです。

これまでの手順(1~2)を通してのエピソードを思い返しながら、適度に感情を盛り込みながら、当たってはいかがでしょうか。

評価基準が現行のままでは、危うい!今すぐ着手を。

日々の仕事に集中していると、じっくりと現況を見直し、自身の頭で改善策を考えることなど難しいのでしょうが、目の前のことばかりに明け暮れていれば、5年後、10年後の未来も同様の仕事模様が続くか、あるいは、外部環境が大きく変化して、“同じ仕事”など消え失せているかもしれません。わずかの隙間時間にでも、前述したワークを取り入れて、手順を踏み、改善案を自ら導くようにして、実践していけば、徐々にでも良好に向かうはずです。

今回は経理スタッフの評価がテーマでしたが、まさに経営リソースの中でも最も重要な位置にある、“経営管理者である人材の活性化”にも通ずるので、もし今後も同様に古典的な評価基準に甘んずるのであれば、自社の経営面にも負の影響が及ぶと考えるべきです。

さて、あなたは自社内でどのような立場なのでしょうか?本項を最後まで読まれて、経理スタッフの評価方法について、“全く問題ない。”と感じた方は僅少でしょう。

あなたの頭の内に表れた問題・課題解決に着手することから、スタートを切りましょう。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント&ビジネス作家として、セミナーや執筆活動に従事している。著書『できる経理の仕事のコツ』(日本実業出版社)、近著に『税理士のためのコミュニケーション術』(第一法規)。『速報税理』にて「顧問先のリアル事情」、ダイヤモンド・オンラインにて「未来に続く経理道」、新潟日報おとなプラスにて「晴天になーれ」など、多数連載中。



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