倒産寸前から復活。『破天荒フェニックス』に学ぶ、経営者に必要な3つの力

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多くの小売業が苦戦を強いられる中、ネット通販でその業界を制しつつあるAmazon。大手の攻勢が進む小売業界で、中小は淘汰の道を歩むしかないのでしょうか。

そんな時代に、借金14億円を抱え、絶対倒産すると言われた実店舗型メガネチェーンを生き返らせた男がいます。ここでは、その物語を書き留めた話題の書籍『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』(NewsPicks Book)をひも解きながら、小売業界のみならず変化が激しい現代に事業を成功させるには何が必要なのか考えてみます。

田中社長に学ぶ、今、求められる3つ力

2008年、デザイン企画会社を経営していた主人公・田中修治は、14億円の短期借入金を抱えたオンデーズを個人で買収する決意を固めた。当時メガネ業界には圧倒的なガリバー企業がないと踏んだ田中は、“メガネ界のZARA”を目指し、100人が100人「絶対に倒産する」と言い切る“街の眼鏡屋さん”オンデーズを、“世界一のメガネチェーン”にすべく立ち上がる――。

主人公の田中修治こそ、株式会社オンデーズ社長の田中修治氏です。この自伝ともいえるエンターテインメントビジネス小説『破天荒フェニックス』には、事業を成功させるためのエッセンスが詰め込まれています。

まずは田中社長から学ぶ、ビジネスに必要な3つの力を紹介します。

その1:思い描いたイメージを現実にする行動力

田中社長は、年商3億円のデザイン会社社長から、突然14億円の借金を抱えるメガネチェーン店の代表取締役社長になります。その理由が「圧倒的な差がないメガネ業界で、なんとなく自分でも勝てそう」だと、漠然と感じたから。

借金まみれの中、新店舗のオープン、雑貨チェーンの買収、価格設定の大変更、海外進出など、怒濤の改革に打って出ます。

田中社長のたぐいまれな行動力の根底には、「自分の思い描く未来を信じぬく力」があるように感じさせます。

例えば、「売上げが一円でも落ちたら倒産」というタイミングで高田馬場に新店舗をオープン。「新店舗を大成功させて、俺の考える新しいオンデーズのコンセプトやブランディングの正しさを証明する」と、経理責任者の反対を押し切ったのです。

田中社長の自分を信じる力と、大胆な行動力によって、オンデーズは新しい未来を切り開いていきました。

その2:苦境でも勝負をかける逆境力

2009年、革新的なコンセプトを掲げたライバル会社の快進撃を受けて、オンデーズは出店競争に敗れつつありました。次第に田中社長は海外に活路を見いだしていきます。資金は底をついていましたが、海外の可能性にかけて半ば無理矢理シンガポール進出を果たしました。

ここからは、どんな状況になってもとどまらず勝負する大切さが描かれています。

2011年3月11日、東日本大震災が起こり、オンデーズの10店舗も被害に遭いました。さらには停電の影響もあり全体の4割の店舗が1カ月以上まともに営業できない状況に陥ります。「倒産」という言葉が頭をよぎるような苦しい状況下においても田中社長は「社長の自分が不安を見せたら社員はますます不安になるだけ」と平静を装い、早期の業績回復を図るため即座に資金繰りの指示を出します。

そして震災から5日目には、休業中の店舗在庫を利用したメガネ無料配布ボランティアを企画、2週間後には自ら被災地の避難所を巡りました。

メガネの無償配布は被災した方にとても喜ばれました。また、この経験から「メガネは人の生活に欠かせない必需品」だと再認識した田中社長。震災後の苦境もなんとか乗り越え、業績は一気に回復。オンデーズは躍進を遂げていきます。

コントロールできない外部要因に対して、今できることで勝負していく、その姿勢が会社の成長につながったと言えるでしょう。

その3:頼もしい仲間を引き寄せる信用力

田中社長の周りには、彼の理想を実現すべく、力強い仲間たちが集まってきます。経理担当の奥野良孝氏を筆頭に、10年来の付き合いの仲間、買収した雑貨チェーン社員、フランチャイズオーナー、メガネフレームメーカー社長など、皆が田中社長に吸い込まれるように、ともに夢を実現するために奔走します。

素晴らしい仲間が集まる秘密は、田中社長の行動が信用を積み上げているからでしょう。

オンデーズ買収後、まずは60店舗すべてに直接出向き、一日中店頭に立ち、仕事終わりには社員を居酒屋に誘い、腹を割って話し合いました。

さらには、絶対にリストラは行わず、全国の社員の心を一つにしようと高田馬場店をプロデュースし店頭に立ちました。自らが率先して働き、社員を守り抜くその姿が全員の結束を高め、困難を乗り切る大きな原動力になったことは間違いありません。

そんな田中社長の活躍から、次章では明日から自分の仕事に活かすヒントを探ってみましょう。

田中社長に学ぶ、未来を切り開く3つの心得

「倒れるときは前向きに」ともかく行動あるのみ!

本書の後半では、たびたび「倒れるときは前向きに」という言葉が出てきます。

オンデーズの個人買収に踏み切らなかったらこのドラマは生まれませんでした。失敗をしながらも前に進み続ける姿はまさに“不死鳥”。経営は結果がすべて、そのためには「動くしかない!」という強い意志が文章全体にみなぎっています。

経営者やフリーランサーは、やるかやらないか、変えるか変えないか、常に意思決定を迫られています。そんなときには、「不確定だから今のままでいいや」と思うより、「倒れるときは前向きに」夢のあるほうへ賭けてみるのはいかがでしょうか。

外部要因からの逆風を受けても何度でも立ち上がれ!

東日本大震災を受けて、4割の店舗がまともに売り上げを出せない中、ボランティアに立候補した社員とともに被災地へと向かいメガネを配布した田中社長。実際に現場でメガネを渡す中で、メガネはファッションである前に「視力という、人々の生活に欠かせない、とても重要なもの」であることを改めて実感します。

震災での経験を活かし、貧困地域や被災地でのメガネ無料配布プロジェクト「OWNDAYS Eye Camp」を設立、今も活動を続けています。この『破天荒フェニックス』の売り上げも、全額寄付される予定だそうです。

競合のセンセーショナルな戦略に追い込まれるようにして始めた海外進出も、今では日本国内よりも多くの店舗と売上げを誇るようになりました。

努力だけではどうしようもできない外部要因が立ちはだかったときこそ、チャンスと捉えて一手を打ち出す。その勇気と発想を常に持ち合わせていることが、どんな状況でも前進できる秘訣なのかもしれません。

誰よりも動いて部下や取引先の信頼を勝ち得よ!

スティーブ・ジョブズのそばにスティーブ・ウォズニアックがいたように、成功には優秀な右腕や仲間が必要不可欠です。田中社長は全店舗へ赴き、社員と直接顔を合わせて意思疎通を図りました。

社員やフランチャイズオーナーで見込みのある人物をチェックし、いざというときに重要なポストを任せています。立候補する従業員の意見を尊重し、即座に異動を指示します。

社長自ら結果を出すことで、社員の団結力を新たにする。率先して行動を起こし、結果で社員をモチベートしていくその姿勢が、信頼と団結力という目に見えない大きな力を生む土台となるのです。

まとめ

「やはり大きな事をやるなんて、自分には無理だ」
「どんな状況でも、強い意志と行動力で道を切り開いてやる!」

ここまで読み終えて、あなたは今、どちらの気持ちになっていますか?

1年後の見通しを立てるのも難しい、不透明な現代社会で成功を収めるには、田中社長のような「とにかくやってみる! 行動してみる! 倒れるときは前向きに!」という前のめりな姿勢が重要なのかもしれません。

そしてどんなときでも進み続けようとするこの姿勢が、逆風に立ち向かったとき、大きな翼を広げたフェニックスとなって新しい未来を切り開いていく力となっていくのでしょう。

(文・サムライト)

紹介した書籍

書名:破天荒フェニックス オンデーズ再生物語
著者 :田中修治(@shuji7771
出版社:幻冬舎
発売日:2018/9/4

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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