新しい経理の仕事の骨格① 変化する時代の経理の理想像とは?

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RPAやクラウド、AIなどさまざまなテクノロジーが台頭する昨今、これからの経理の仕事はどうなっていくか。一部では経理の仕事が「なくなる」「奪われる」などといわれるが、実際には経理が本来の仕事をできるようになる、とフリーランスの経理として活躍されている前田康二郎さんは言います。本連載では、前田さんと共に「経理の仕事の骨格」を見つめ直していきたいと思います。

経理の仕事とは何か?

クラウドなどで経理処理が簡素化されていく中、経理そのものの仕事や人員体制も簡素化していくといわれています。ここで改めて確認しておきたいのですが、そもそも、「経理の仕事」というのは、いったい何を指すのでしょうか。

ある人は、伝票起票をするのが経理の仕事という人もいるでしょう。また、ある人は、試算表を見て分析をし、社内の各所に数字が良くなるような改善策などを提案するのが経理の仕事だというかもしれません。他の職種もそうでしょうが、経理一人ひとりに聞けば、それぞれの「経理像」というものがあるのではないでしょうか。

また他方で、周囲が「こうあってほしい」と求める経理像もあります。
自分が「これだ」と思っている経理像と周囲から求められる経理像、この二つの中身が合致して初めて、「自分も皆も求める経理像」になることでしょう。

ということは、少なくとも周囲が求める経理像というのは、時代に合わせて少しずつ変化を伴っているはずですので、自分がこれぞと思っている経理像も、時代の変化に合わせて、微調整していかなければいけないのだと思います。
そこで、「新しい仕事の骨格」として、これからの「経理の仕事」とはどのようなものが中心となっていくかについて、数回に分けてお話していきたいと思います。

経理がルーチンワークにかける時間はどれぐらいか

多くの経理社員が「ルーチンワーク」を抱えていると思います。
経費精算、支払請求書の支払、入金の突合などといったものから、試算表や会議資料の作成まで、立場によってそのルーチン作業はさまざまでしょう。実際にそれらのルーチンワークに関して、皆さんはどれくらいの時間をかけて行っているでしょうか。

ある人は、週5日フルタイムでひたすら経費精算のチェックと起票だけをしている人もいるかもしれません。そのような環境の場合、これからの時代は、そうしたルーチン作業のすべては自動化ができなくても、一部分はクラウドをはじめとしたさらなる新しい技術で時間も短縮されていくことでしょう。

たとえば経費精算では、すべての経費精算の種類は網羅できていなくても、国内の交通費の精算に関しては、現状でもどの会社のクラウドの経費精算ソフトでも一通りはできます。そうすると、国内の交通費がやはり経費精算の中では件数的には多くのウェイトを占めますから、それらにかかる時間というのは短縮されていきます。
非課税、不課税の領収書の処理や、仮払、出張精算、日当などは、個別で引き続き手作業でやったとしても、全体の経費精算処理における作業時間は短縮していく、ということです。

すべての経費精算を1人がやると生産性は上がる?

以前、50人規模の会社で、1カ月ひたすら一人の社員が全員分の経費精算だけをやっている、というケースを見たことがあります。その会社は一般社員には一切経費精算をさせずに、すべての領収書を1人の社員に預け、その人がすべて処理をしていました。他の社員は、その分、営業など現場対応の作業に集中する、という方針でした。本来であればそれはそれでうまくいくようにも見えたのですが、よく観察していると、一見効率的に見えて、実は非効率的な部分もあるとも思えました。

実際に経費精算を任された社員の作業風景を見ていると、各社員はルールとして、領収書の裏側に自分の名前と、何の目的で使ったのか、ということを記入した上で経費精算担当者に渡していました。ただ、その社員が昼休み、あるいは定時で帰宅後など席にいない時にも机の上に置いて行ったりするものですから、領収書に自分の名前を書き忘れている人がいると、周囲に声かけをしたり全社メールで「昨日の夜に私の机に領収書を置いて行った方がいたら、名前が書いていないので、名乗り出てください」とメールをすることもありました。また、名前だけを書いて、何のための目的で使ったのかが書かれていない、書かれていてもその意味がわからないものは、その都度、結局担当者が本人に聞き取りに行っていました。各社員が「完璧に」経費精算を出してくれれば、確かにこのやり方は効率的なのですが、どの組織においても、一定数、事務処理そのものが苦手な人たちはいます。

このフローの場合、本人に加えて経費担当者の2人分の時間がロスしてしまうこともあるので、結局あまり効率的ではなくなっていました。自分の領収書はやはり自分で処理したほうが早く、内容も覚えているので、途中から各自で申請するように申請方法を変えてもらいました。その結果、その経費担当者はまるまる時間が空き、他の業務ができるようになりました。現場からのクレームも特にありませんでした。

経費精算ソフトが充実する以前から、私は基本的にどの会社にも各社員で経費申請をしてもらうようにお願いしていましたが、ソフトが充実した今の時代であればなおさら、このように本人申請の方式が一般的になっていくことでしょう。

経理部は「利益を生む」仕事をする部署

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先ほどの事例に出てきたような「経費精算だけを専任でしていた経理社員」というのは、イレギュラーな処理や、ダブルチェックの作業などは残りますが、全体の作業時間にしたら、以前の数分の1にはなっていきます。経費精算に限らず、他のルーチン作業も、完全な無人化は難しくても、作業時間が半分、それ以下になるようなソフトが今後も開発されていくことでしょう。経理処理だけをクローズアップすれば、これまでよりも少ない社員数で済む、済まさないといけない時代になるということでしょう。では、だからといって経理部自体の規模を縮小して社員を一気に減らして良いかというと、またそれは別問題ではないかと私は思います。

つまり「経理とは何か」という点において、「単に経理処理をする部署」という考え方であれば、経理社員を一気に減らしてしまうことでしょう。
他方、経理を「分析や提案をする部署」と捉えている場合は、経理処理で時間が浮いた分、より「考える」「オリジナリティを求められる」仕事へのシフトを会社は経理社員へ促していくことでしょう。つまり経理を単にコストのかかる部署ではなく、経理からの提案でも、売上や利益を確保していくという「利益を生む部署」として経理の仕事を認識するということです。

経理社員自体も、ルーチン業務の効率化であいた時間を他の仕事で埋めることができるスキルがその人自身にあるか、ということが今後問われていくことでしょう。

ではそれが一体何か、ということは、実はさほど難しいことではありません。
たとえば経費精算であれば、経費精算のスキルから、経理業務の時間が減った分、経理でこのような分析管理をしてみたい、といったようなアイデア出しや実践をしていけばいいのです。

利益を生む経理には、どのような仕事があるか

一例として、営業成績が上位グループとそれ以外に分けて、経費精算を集計、頭割りをして平均値を出し、経費の使い方においてどのような金額バランスの違いがあるのかといったことを分析すれば営業社員の役に立てるかもしれません。

一般的には経費は削減したほうがいいと言いますが、むしろ「うちの会社は営業成績が上位グループの平均は、それ以外に比べて3000円多く旅費交通費を使っていた。つまり、1件当たりの営業時間を効率よく短時間で済まし、営業先を1件でも多く回っている結果かもしれない。その分、訪問社数も多いため、移動費もかかっている」という分析が出るかもしれません。すると、単純に数字だけでは推し量れないこともわかってくるわけです。

仕事を多く受注できる人は、経費もある程度は使います。会社の売り上げ、利益を「伸ばす」という見地で「経費」というものを捉えると、単に「削減すればいい」とか、「経費を使っていない人のほうが良い」ということではないのです。

経理社員もそれぞれ「オリジナリティ」を出して、活躍できる時代になってくるのではないかと思います。そのような解析ソフトが社内に導入されたときに、すぐパパッといくつもアイデアが出せるかどうか。それは今から準備していないと出すことはできないと思います。
そしてそのような分析、提案というのは、税理士、会計士、外部のアナリストよりも、やはり組織の内部で直接的に社員や証憑、データに触れている「経理」が最速で情報を得ることができるわけですから、より速く正確な分析提案も「経理が」できるはずです。

経理が利益を生む仕事をするべき、1つの理由

会社のすべての数字を見ることができるのは多くの会社が「経理」だけではないでしょうか。それを「当たり前のこと」と、あぐらをかいて何にも活用しない経理社員と、「この環境は特別なこと」と思い、大いに活用する経理社員とでは今後さらに会社からの評価も差が広がっていくことでしょう。

経営者の多くは、社員に数字をわかってほしい、とは言いつつも、すべての数字や明細を公開するかというと、それはまた別問題と考えている場合が多いです。説明不足のまま数字を見せると「なぜ自分の給与よりこの人のほうが高いのか」「隣の部署のほうがどうして予算が多いのか」など、数字を利己的な観点で見てしまう社員が一定数いるので、社内が混乱することを心配するからです。

しかし、社員の立場からすると、一部の数字しか見せられないまま「数字に強くなれ」というのも難しい話です。だから「経理社員」というのは、他の誰よりも、数字に関する分析、提案に関しては本来有利な環境であり、それを社内に啓蒙する役割も担うか担わないかで会社の数字自体もだいぶ変わってくるのではないかと思います。細かい数字が開示できない部分は、経理がその「代弁者」となって、「どう行動すればよいか」という日本語に置き換えることができれば、経理が「経営者の参謀」「居ないと困る経理」という認識に皆がなることでしょう

この点を今一度クローズアップし、自分のこれまでの働き方、スキルと、「分析・提案の習慣」をどうMIXさせたら、新しい経理の仕事として提案ができるか、新しい経理の役割を作れるか、ということを考え、実践してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ルーチンワークが減る分、経理は「考える」仕事を増やせる
  • 会社の数字を最大利用し、どのように行動したら良い数字につながるかを探る
  • 会社の数字について、経理がその代弁者となることができる

次回も、新たな時代における経理の仕事について考えていきたいと思います。(毎月更新予定)

執筆:前田 康二郎 (まえだ こうじろう)

学習院大学経済学部を卒業後、数社の民間企業で経理総務・IPO業務等を行い、海外での駐在業務を経て独立。現在はフリーランスでのコンサルタント活動、執筆活動の他、日本語教師としても活動している。 著書に『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』『スーパー経理部長が実践する50の習慣』(以上 日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』『自分らしくはたらく手帳』(以上 クロスメディア・パブリッシング)、『経営を強くする戦略経理』(日本能率協会マネジメントセンター)など。最新刊は『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(日本経済新聞出版社)。



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