- 作成日 : 2025年10月9日
レインズとは?仕組みからメリット、利用する流れまで徹底解説!
不動産の売買を検討する際、しばしば耳にする「レインズ(REINS)」という言葉。これは不動産業界の根幹を支える極めて重要な情報システムです。レインズを理解することは、不動産取引の透明性を知り、自身の利益を守る上で非常に役立ちます。
この記事では、不動産流通の心臓部であるレインズの基本的な仕組みから、法律との関係、利用するメリットと注意点、実際に利用する際の流れまで、分かりやすく解説していきます。
目次
レインズ(REINS)とはそもそも何か?
レインズとは、宅地建物取引業の免許を持ち、指定流通機構の会員として登録した不動産会社(宅地建物取引業者)だけが利用を許された、不動産物件情報を交換するためのコンピュータ・ネットワーク・システムです。
その正式名称は「Real Estate Information Network System」であり、頭文字をとってREINS(レインズ)と呼ばれています。
一般の方が物件探しに利用する不動産ポータルサイトとは全く異なり、不動産会社間で情報を共有し、不動産流通の円滑化、迅速化、そして透明性の確保を目的とした、まさに業界のインフラと言える存在です。
レインズは全国に4組織ある
レインズは、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣から指定を受けた全国4つの「指定流通機構(東日本、中部、近畿、西日本)」によって運営・管理されています。
これにより、各地域の不動産市場の実情に即した、きめ細やかな情報流通が可能となっています。不動産会社として開業する際は、自身の営業エリアがどの機構の管轄になるかを把握しておく必要があります。
機構名 | 通称 | 主な管轄エリア |
---|---|---|
公益財団法人 東日本不動産流通機構 | 東日本レインズ | 北海道、東北、関東、甲信越 |
公益社団法人 中部圏不動産流通機構 | 中部レインズ | 東海、北陸 |
公益社団法人 近畿圏不動産流通機構 | 近畿レインズ | 近畿2府4県 |
公益社団法人 西日本不動産流通機構 | 西日本レインズ | 中国、四国、九州、沖縄 |
レインズはどのような仕組みで法律とどう関係している?
レインズが不動産流通の要である理由は、その仕組みが法律(宅地建物取引業法)と密接に結びついているからです。
物件情報の登録と共有が基本
レインズの仕組みの基本は、売主から依頼された物件情報を不動産会社が登録し、それを全国の不動産会社で共有することです。このシンプルな仕組みにより、不動産取引の迅速化と透明化が実現されています。
- 不動産会社が、売主から売却の依頼を受けた物件の情報をレインズに登録します。
- その登録された情報は、4つの機構が共同で利用する全国統一のシステムに反映され、システムの稼働時間内であれば、会員である不動産会社が速やかに検索・閲覧できます。
- 購入希望者を持つ不動産会社は、レインズで見つけた物件を顧客に紹介し、売主側の不動産会社へ問い合わせを行います。
この情報の共有システムにより、一つの不動産会社が単独で買主を探すのに比べ、圧倒的に多くの購入希望者へ物件情報を届けることが可能になります。
レインズと媒介契約の法的な情報
不動産会社が売主と結ぶ売却のための契約を「媒介契約」と呼び、これには3つの種類があります。このうち2つの契約では、レインズへの物件登録が法律で義務付けられています。
媒介契約の種類 | レインズへの登録義務/期限 | 特徴 |
---|---|---|
専属専任媒介契約 | あり(義務)/契約締結日の翌日から5営業日以内(不動産会社およびレインズの休業日を除く) | 売主が依頼できる窓口は1社のみ。売主自身が買主を見つけても契約不可です。 |
専任媒介契約 | あり(義務)/契約締結日の翌日から7営業日以内(不動産会社およびレインズの休業日を除く) | 売主が依頼できる窓口は1社のみ。売主自身が買主を見つけることは可能です。 |
一般媒介契約 | なし(任意) | 複数の会社に依頼可能です。 |
このように、特に売主からの依頼を1社のみが受ける「専任媒介契約」および「専属専任媒介契約」では、物件情報を広く共有して売却機会の損失を防ぐため、宅地建物取引業法に基づき、レインズへの登録が法的に義務化されているのです。このルールが、不動産市場の透明性・公正性を担保する重要な役割を担っています。
レインズを利用するメリットは?
レインズは、売主、買主、そして不動産会社の三者すべてに大きなメリットをもたらします。
対象者 | メリット | 具体的な内容 |
---|---|---|
売主 | 早期・適正価格での売却 | 全国の不動産会社とその顧客(購入希望者)に物件情報が共有されるため、広く買主を探すことができ、より良い条件での早期売却が期待できます。 |
買主 | 豊富な選択肢と迅速な発見 | 依頼した不動産会社を通じて、専任・専属専任媒介契約の登録義務物件を中心に、全国の物件情報を広く横断的に探すことが可能です。(※一般媒介契約の物件や不動産会社が自ら売主となる物件などは任意登録のため、市場の全ての情報が登録されているわけではありません。) |
不動産会社 | 業務効率と成約率の向上 | 横断的な物件提案が可能に:自社で抱える物件だけでなく、全国の会員が登録した多数の物件情報を検索できるため、顧客の多様なニーズに対して「物件がない」という機会損失を防ぎ、スピーディな提案ができます。 データに基づく正確な価格査定:過去の膨大な成約事例データを参照できるため、経験や勘だけに頼らない、客観的で説得力のある査定価格を算出できます。これは顧客からの信頼獲得に直結します。 資料作成の手間を大幅に削減:物件の販売図面(マイソク)などをシステムから直接ダウンロードできるため、資料作成にかかる時間を大幅に短縮し、より重要な顧客対応や営業活動に時間を集中させることができます。 業務の標準化と新人教育への活用:全国共通のシステムであるため、業務フローが標準化されます。新人でも使い方を覚えれば、ベテランと同じ情報にアクセスできるため、教育ツールとしても非常に有効です。 |
レインズを利用する上での注意点は?
レインズの利用には、主に「費用・法的義務」「不正行為(囲い込み)」「情報公開の範囲」という3つの注意点があります。多くのメリットがある一方で、これらのポイントを事前に理解しておくことが、トラブルを防ぐ鍵となります。
利用には費用と法的な義務が伴う
不動産会社にとって、レインズの利用には費用や法的な義務が伴います。費用面では、レインズの利用料や請求方式が、所属する団体や地域を管轄する指定流通機構によって異なります。
例えば、検索ごとに料金が発生する従量課金制のエリアもあれば、会員であれば追加のシステム利用料がかからないエリアもあります。
また、法的な義務として、前述の通り、専任・専属専任媒介契約を締結した際には、定められた期間内に物件情報をレインズへ登録する義務を負います。
不正行為「囲い込み」に注意が必要
レインズの仕組みを悪用した「囲い込み」という不正行為に注意が必要です。
囲い込みとは、売却依頼を受けた不動産会社が、売主と買主の双方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙うあまり、他社からの物件問い合わせに対して「すでに商談中です」などと嘘をつき、意図的に紹介を断る行為のことです。
この行為は、売主にとっては物件が広く市場に出回らず、売却の機会を失うという重大な不利益につながります。売主としてできる最大の対策は、不動産会社から交付された「登録証明書」を使い、定期的に自身の物件のステータスを確認することです。万が一、紹介活動が十分にされていないと感じた場合は、すぐに媒介契約を結んだ不動産会社に説明を求めることが重要です。
プライバシーと情報公開の範囲を理解する
レインズに物件を登録する際、売主様の氏名や連絡先といった個人情報が直接掲載されることはありません。しかし、物件を特定するための詳細な情報が、不動産会社間で広く共有されることは事前に理解しておく必要があります。
レインズでは、円滑な取引のために以下のような情報が公開されます。
- 物件の所在地(番地などの詳細な所在地情報の公開は、物件登録時に不動産会社が公開を選択した場合に限られます)
- 物件の価格、面積、間取り、築年数など
- 物件の写真(外観・内観)
- 地図情報
これにより、近隣住民など物件に詳しい方が見れば、どの物件が売りに出されているか分かってしまう可能性はあります。
ただし、これらの情報にアクセスできるのは、宅地建物取引業法に基づき守秘義務を負う不動産会社に限られています。また、システムはセキュリティで保護されており、誰でも見られるわけではありません。売却活動を円滑に進めるための情報公開と、個人情報の保護のバランスが取られていると理解しておくと良いでしょう。
不動産を売却する際、レインズはどのように利用される?
不動産を売却する際、レインズは物件情報を広く共有し、最適な買主を見つけるための中心的な役割を果たします。その流れは、不動産会社との媒介契約締結から始まります。
ステップ1. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
まず、売却を依頼する不動産会社を決め、「媒介契約」を締結します。この時、契約の種類(専属専任媒介、専任媒介、一般媒介)によって、後のレインズへの登録が義務か任意かが決まります。
- 専属専任・専任媒介契約:義務として、不動産会社は物件情報をレインズに登録します。
- 一般媒介契約:登録は任意です(登録しないケースもあります)。
ステップ2. 不動産会社が物件情報をレインズへ登録する
専属専任・専任媒介契約の場合、不動産会社は法律で定められた期間内に、物件の所在地、価格、面積、間取り、写真などの詳細情報をレインズに登録します。
- 専属専任媒介契約:契約締結日の翌日から5営業日以内(不動産会社およびレインズの休業日を除く)
- 専任媒介契約:契約締結日の翌日から7営業日以内(不動産会社およびレインズの休業日を除く)
ステップ3. 「登録証明書」を受け取り、登録内容を自ら確認する
不動産会社はレインズへの登録が完了すると、その証明として「登録証明書」を売主へ渡す義務があります。この書類には、登録内容のほか、売主自身が登録情報を確認するためのIDとパスワードが記載されています。
証明書を受け取ったら、必ず専用サイトにログインし、以下の内容を自身の目で確認しましょう。
- 登録内容の確認:売却価格、物件写真、所在地などが契約通りに正しく登録されているか。
- 取引状況の確認:現在のステータスが「公開中」なのか、あるいは公式ステータスである「書面による購入申込みあり」などに正しく更新されているか。
この確認作業は、不動産会社の不正行為「囲い込み」を防ぐための、売主ができる最も強力なチェック機能です。
ステップ4. 全国の不動産会社へ情報が共有される
登録された物件情報は、システムの稼働時間内であれば即時にレインズのネットワークへ反映され、全国の会員不動産会社が閲覧可能になります。これにより、買主を探している多くの不動産会社が物件情報を閲覧し、自社の顧客へ紹介することが可能になります。
ステップ5. 購入申込が入り、取引状況が更新される
物件に興味を持った買主から書面による購入申込が入ると、不動産会社はレインズ上の物件ステータスを「公開中」から「書面による購入申込みあり」へ更新する義務があります。この更新により、ほかの不動産会社はその物件が現在交渉中であることを即座に把握でき、重複した問い合わせや案内を防ぎ、売主・買主双方の負担を減らすことができます。
ステップ6. 売買契約が成立し、「成約登録」を行う
無事に売買契約が成立すると、不動産会社はレインズに契約日や実際の成約価格などを登録(成約登録)する義務があります。この成約データはデータベースに蓄積され、他の不動産会社が将来の価格査定を行う際の重要な参考情報として活用されます。
レインズに関するよくある質問(FAQ)
Q. レインズは一般の人でも見ることができますか?
A. 原則として、一般の方がレインズのデータベースに直接アクセスし、物件を検索することはできません。
なぜなら、レインズが会員である不動産会社間の情報共有を目的とした専門的なシステムであり、会員には法律上の守秘義務が課せられているためです。なお、レインズで共有される成約情報などに、売主様や買主様の氏名といった個人情報が直接含まれることはありません。
Q. レインズと不動産ポータルサイトの大きな違いは何ですか?
A. 利用者が不動産会社に限定されている点と、情報の網羅性の根拠が大きく異なります。レインズには、登録が義務付けられた物件を中心に多くの物件情報や過去の成約価格が蓄積されますが、ポータルサイトへの掲載は広告であるため任意です。
情報の鮮度を保つ仕組みにおいても違いがあります。レインズは法律で定められた期間内の登録や、取引状況の更新が義務付けられており、情報の鮮度を維持するよう制度設計されています。
Q. 賃貸物件もレインズに登録されていますか?
A. はい、賃貸物件の登録も可能です。しかし、売買物件と違って登録義務がないため、全ての賃貸物件が網羅されているわけではありません。賃貸情報の流通は、民間の不動産会社専門サイトが中心となることも多いのが実情です。
Q. レインズの利用料金は、売主や買主が支払うのですか?
A. いいえ、レインズのシステム利用料は会員である不動産会社が指定流通機構に支払います。売主様や買主様が直接レインズの利用料を請求されることはありません。
Q. 他社が媒介する物件が「囲い込み」されている疑いがある場合、確認する手段はありますか?
A. 確証を得るのは難しいのが実情ですが、以下の手順で状況を確認し、対応することが推奨されます。
- レインズのステータスを再確認する:まず基本として、レインズで当該物件のステータス(「公開中」「書面による購入申込みあり」など)がどうなっているかを正確に確認します。
- 元付業者へ記録に残る形で問い合わせる:電話だけでなく、FAXやメールなど記録が残る形で「〇月〇日現在、レインズで公開中のためご紹介したい」と連絡します。もし紹介を断られた場合は、その理由(「契約予定である」「本日申込が入った」など)を明確に確認し、日時と共に記録します。
- 時間をおいてステータスを確認する:もし「商談中」などの理由で断られたにもかかわらず、長期間レインズ上のステータスが「公開中」のままであれば、囲い込みの可能性が高まります。
- 所属団体へ相談する:明らかに不審な対応が続く場合は、自社が所属する宅地建物取引業協会や、管轄の指定流通機構へ相談し、指導を仰ぐことも一つの手段です。
レインズの正しい理解が、不動産取引の未来を拓く
ここまで解説してきたように、レインズは不動産流通の透明性、公正性、迅速性を支える社会的なインフラです。宅建業者にとっては業務に不可欠なツールであると同時に、売主にとっても、自身の資産を適正な条件で売却するためにその仕組みを知っておくべき重要な存在と言えるでしょう。
特に、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ際に発行される「登録証明書」は、売主が取引の透明性を自ら確認できる強力な権利です。不動産取引に臨む際は、こうした制度を正しく理解し、積極的に活用することで、より安心で満足度の高い成果へとつなげることができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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