- 更新日 : 2024年6月7日
勤怠管理を「紙」から「エクセル」に移行は大変?
勤怠管理を紙で行う問題点とは?
勤怠管理を紙で行い続けることには、下記のようなデメリットがあります。
- 手書きやチェックの手間がかかり、ヒューマンエラーもある
- 本人や上司が途中経過を把握できない
- 紙の保管や振り返りが大変
紙の勤怠管理表は、手書きや集計に手間がかかります。紙に記入された数字を集計するとなると、頼りになるのは計算機でしょう。しかし当然ながら手計算時のヒューマンエラーが発生する可能性があります。
昨今の過重労働問題で、最近はますます時間外労働の管理が企業に求められています。本来であれば、毎回上司への時間外労働の自己申告をし、上司は部下の勤怠状況を把握した上で申告を許可することが必要になりますが、紙の勤怠管理ではそれが難しいのも実情です。手書きの手間から、毎日勤怠をチェックすることをせず、月末に「残業が超過していた」という事態にもなりかねないでしょう。
紙で勤怠管理を行っていると、月末ともなると各部署から勤怠管理関係の書類が大量に集まり、1枚1枚めくりながら数名がかりで何度も何度もチェックすることになります。特に、休日出勤や残業時間の計算は給与に直結するため、神経をとがらせて計算することが求められます。またクラウド管理ではなく、書類を保管するとなると場所もとり、社内の限られたスペースで管理することが困難になります。
紙からエクセルに移行するときのメリット
勤怠管理に使うエクセルシートのテンプレートは、1から作成しなくても、Web上で探してダウンロードすれば簡単に手に入れることができます。中には無料でダウンロードできるものもあります。自社の勤怠管理の内容を網羅できているシートであれば、手間とコストをかけずに移行することも可能なのです。手書きの手間もなくなり、入力さえ間違えなければ、今まで計算機で手計算していたときのミスはなくなるでしょう。
紙からエクセルに移行するときのデメリット「関数編」
勤怠管理を、紙からエクセルに移行するときのデメリットもあります。
- 勤怠管理をエクセルに移行するには「関数」の知識が必須
- 関数以外にも、「条件付き設定」や「データの入力規則」などの知識も必要
- 知識があっても、関数を作成するときのヒューマンエラーがある可能性もある
勤怠管理は、単純に「出勤日数や残業時間の合計が分かれば良い」というものではありません。出社時刻と退社時刻の入力から時間外勤務を計算するだけでは済まない場合があるからです。休憩時間を差し引いたり、早出出勤や深夜残業など、数種類の時間外残業があったりという場合は関数も複雑になり、さまざまな条件をIF関数などで組み合わせることが必要になります。そのため出勤や遅刻、早退、休日出勤などの条件を付けた日数を数えるのにも、COUNTやCOUNT IFといった関数の使用が必須です。時間の切り上げや切り捨ての計算は、ROUND系の関数が必要になります。これを1つのセルで数種類を組み合わせて使用しなければならないこともあるのです。
大変なのは複雑な関数の使用だけではありません。作成した関数を消されないようにセルに保護をかけたり、表示方法を統一するために入力方法を規制したりすることも必要になってきます。数値によってセルや数字の色が変わるようにするような工夫も必要でしょう。エクセルの出来栄えを追求するとキリがありませんが、ある程度の精度がないと入力や計算の間違いを防止できず、手作業でのチェックや修正は減ることはないでしょう。私は、エクセルの資格保有者で、普段から関数をよく使用していましたが、それでもエクセルで勤怠管理を完璧に行おうというのは、とても困難な試みでした。
紙からエクセルに移行するときのデメリット「社内への定着編」
エクセルの勤怠管理表の場合、前述のように関数などを駆使してもできることは限られています。労働基準法や就業規則をすべて網羅することは難しいく、従業員個人の入力の仕方で調整する必要が出てくるのです。そのため、入力ルールの説明や、入力の間違いがないかのチェック、修正に時間を費やすことになるでしょう。ましてや、入力する社員は、エクセルに詳しい人ばかりではありません。従業員が入力に慣れ、運用が定着してくるまでは、運用途中での改善や修正が繰り返されることも多々あるでしょう
まとめ
- 勤怠管理を紙やエクセルで行うのは、手間だけではなく、ヒューマンエラーが起こりやすい
- 勤務体制によっては、コストと手間をかけずに紙からエクセルに移行することができる場合もある
- 労働基準法や就業規則などをすべて網羅したエクセルを作成するには限界がある
- 紙からエクセルに移行した場合の入力方法や社内ルールについての周知や対応は大変
企業の勤務体制によっては、勤怠管理を紙からエクセルに移行することによってメリットがある場合もある。しかし、時間外勤務が多かったり、勤務体制が複雑だったりする場合は、その分、エクセル上の管理内容も複雑となります。
規定をすべて網羅したエクセルを作成するには高度な技術が必要となる上、社内での定着にも時間がかかるでしょう。その結果、苦労して紙からエクセルへ移行したものの、最終的に手間はそれほど削減できなかったという結果に終わる場合もあります。
勤怠管理の手間削減と正確性を重視するのであれば、クラウドシステムへの移行を検討してみるのもいかがでしょうか。入力や計算ミスなどのヒューマンエラーもなくなり、全社分の集計や現状把握もしやすくなります。打刻のシステムと連動しているため、自己申告よりも不正が起こりにくいでしょう。労務担当者だけでなく、入力する従業員の手間も楽なのでおすすめです。
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