放送・メディア業界の経費精算システムの選び方・比較すべき項目
更新日:2024年2月13日
放送業界における経費精算業務のよくある課題
①精算処理の多くが紙と押印を前提としたワークフロー

放送業界における経費精算は、まだ紙による運用である場合も多いと言えます。領収書などを添付した紙の申請書を上司に提出し、承認印を受領して経理に回付するという従来型の方法が散見されるのです。
このような場合には、経費の申請や承認だけでなく、経費の支払データもデジタル化されておらず、手順のどこかに入力ミスや確認漏れがあると、期限内に処理が完結しないことがあります。
②放送業界特有の多岐にわたる経費項目への対応が不十分

放送業界における経費精算の特徴としては、交通費や宿泊費だけでなく、ロケ費や編集費などに外注費、交際費、備品費、消耗品費なども含まれるため経費項目は多岐にわたります。
これは、番組制作に必要なすべての経費が予め「製作費」として決められていることによるものです。しかし、現場で発生した経費が会計上のどの勘定科目になるのかは、事後に確認する必要もあり、個々の経費と勘定科目の紐づけは不十分と言えます。
③プロジェクト・イベント毎の経費処理・追跡が必要

放送業界のそれぞれの番組は、各プロジェクトやイベントで成り立っていますが、各プロジェクトの現時点での経費消化状況は非常に重要な情報です。
その製作費の範囲内に収まらなければ、別途説明資料を作成し交渉する必要も出てきます。そのためには、経費項目の中にプロジェクトやイベントの情報を持つ必要があるでしょう。
放送業界の企業様が経費精算システムを比較する際のポイント
①どこからでも申請~承認が完結するクラウド化対応か?
現場に出ていることの多い放送業の要員は、紙による経費申請では期限までに申請書が提出できないケースもあります。したがって、経費申請システムには、まずクラウド対応が求められます。デスクワークに限らず、どこからでも経費申請や承認ができるクラウド対応のシステムであれば、現地での待機時間などに経費申請することが可能です。
②事業にマッチした勘定科目や補助科目の編集機能はあるか?
制作現場からの申請においては、複雑な取引や今までになかった費用が発生することがあります。このような場合、どの勘定科目や補助科目が適正なのかを検討する必要があるでしょう。しかしながら、従来の科目に見当たらないものがあった場合には、勘定科目や補助科目を都度編集できる機能がないと処理が完結できません。プロジェクトによって勘定科目の考え方が変わらないよう、全体を見通した編集機能が必要です。
③プロジェクト単位で損益を管理する機能はあるか?
放送業界は、各プロジェクトやイベントごとに製作費が決められていますが、会計システムでは基本的に日付と勘定科目・補助科目、金額、摘要が入力の対象となります。そこで、個々のプロジェクト収支を把握するためのプロジェクトコードやイベントのコードを管理できる機能を搭載していれば、プロジェクトごとの分析や比較が可能となります。
放送業界の企業様に参考となる経費精算業務の改善事例
株式会社TVer様の事例
当初、当社では経理業務全般を紙面で行っていたことから、我々経理グループは月末から月初にかけて帳票を取りまとめるため出社せざるを得なかった状況にありました。
新型コロナウイルスの流行が拡大するなかで、会社として出社制限がかかり、業務体制の構築・業務改善の必要性に直面していました。
株式会社極東電視台様の事例
経費精算のクラウド導入を考えた当時、4〜5社を検討しましたが、マネーフォワードのクラウド経費を選択したのは、細かな使い勝手が制作会社の業務に合っていると感じたからです。
プロジェクトごとの管理ができるため、番組単位での経費精算ができ、承認ルートもカスタマイズできる点が大きなポイントでした。
放送業界の企業様に役立つ経費精算業務の効率化に関する参考資料
放送業界がバックオフィス業務のDXを進めるべき理由
総務省の情報通信白書によりますと、2019年度より放送業全体の売上高は減少傾向にあります。2022年度においては、地上波テレビ・ラジオ等の放送を合計しても営業利益は前年比マイナス33.2%となっており、衛星放送や有線テレビも前年比マイナスになりました。原因としては、視聴率低下による広告収入の減少や動画配信サービスやSNSの好調による影響などが挙げられます。
また、労働環境としてはテレビ業界などでは働き方改革についての見直しがなされており、伝統的なプロセスや厳しい制作スケジュールなどが改善されつつあるようです。
そんな中、バックオフィスに目をやると、労務や経理に必要なスキルを持つ人材の配置は難しく、経験豊富な人材育成が追いついているとは言えません。特に中小の放送業界においては、依然として手動のタスクや重複作業が発生していることがあり、業務プロセスの最適化や自動化が求められます。ビジネス環境の変化が激しい業界こそ、次の一手となるのはデータの正確性、一貫性、信頼性が確保できるデータ管理戦略による業務効率化ではないでしょうか。
出典:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」「令和4年度民間放送事業者の収支状況 別紙」「令和4年度民間放送事業者の収支状況」