
この記事では、中小企業庁が行った「平成26年度中小企業における会計の実態調査」の結果をもとに、中小企業の経理業務の実情を読み解きます。
まず、中小企業では経理業務を担当する人員がどのぐらいいて、どのように経理業務を行っているかについて読み解きます。次に、中小企業向けの会計基準である「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)の導入状況を読み解きます。
目次
経理の人員と業務の状況
経理業務は限られた人員で行っている
経理業務の担当者の数について尋ねたところ、58.2%の企業が「1人」と回答しています。「2人」との回答が17.9%、「0人」との回答が12.2%あり、多くの中小企業は限られた人員で業務を行っていることが浮き彫りになりました。
経理担当者の数が少ない要因には、複数の経理担当者を置くほどの余力がないといった経営体力の問題があげられます。また、会計ソフトの導入などで経理業務が省力化できていることや、経理業務を税理士などに外注することで最小限の人数で対応できていることも考えられます。経理業務の状況について尋ねた項目では、約4分の1の企業が「税理士などに外注している」と回答しています。

(出典:平成26年度中小企業における会計の実態調査事業報告書|株式会社 富士経済(経済産業省中小企業庁委託事業))
経理帳簿に記帳する頻度について尋ねたところ、「毎営業日」との回答が最も多く(43.6%)、次いで「毎月」との回答が多くありました(35.5%)。
毎日継続した取引があれば、毎日こまめに記帳する方が正確にできるメリットがあります。一方、取引の件数が少なかったり、月末など特定の時期に取引が集中したりといった場合は、月ごとに記帳する方法でも差し支えありません。自社の取引の実情に応じた方法で業務ができていればよいでしょう。

(出典:平成26年度中小企業における会計の実態調査事業報告書|株式会社 富士経済(経済産業省中小企業庁委託事業))
会計の専門的なことは税理士に相談している
普段付き合いのある会計専門家について複数回答形式で聞き取ったところ、「税理士」との回答が99.5%と大多数を占めました。すべての会社は法人税を申告しなければならず、税理士に申告書の作成を依頼することが理由として考えられます。

(出典:平成26年度中小企業における会計の実態調査事業報告書|株式会社 富士経済(経済産業省中小企業庁委託事業))
「中小企業の会計に関する基本要領」の導入状況
「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)は、中小企業が利用するのに適した会計基準として平成24年に定められたものです。
「平成26年度中小企業における会計の実態調査」では、中小企業における中小会計要領の導入状況についても聞き取っています。
中小会計要領を導入しているとの回答は少ない
調査の結果、中小会計要領を導入していると回答した企業は少数にとどまることがわかりました。「完全に導入しているかは分からないが、従前から行っている会計処理が中小会計要領にほとんど拠っている」という回答を含めても、15%にとどまります。
導入しているとの回答がこれほど少数にとどまるのは、中小会計要領が十分に知られていないからです。
ただし、中小会計要領について「知らない」と答えた企業でも、経理業務を税理士に任せていれば、中小会計要領を導入している場合があります。税理士を対象に顧問先の会計が中小会計要領に準拠しているかどうかを尋ねたところ、約半数の企業で準拠していると回答しています。このように、中小企業経営者と税理士の間で、中小会計要領についての認識に違いがみられます。
中小会計要領の認知度 | 中小会計要領の導入状況 (中小会計要領を知っていると答えた企業の内訳) | ||
知っている | 24.4% | 導入している | 31.2% |
完全に導入しているかは分からないが、従前から行っている会計処理が中小会計要領にほとんど拠っている | 30.2% | ||
会計専門家に任せているため把握していない | 24.1% | ||
導入していない | 14.6% | ||
知らない | 75.6% | - | - |
中小会計要領の導入で金融機関からの評価が良くなる
中小会計要領を導入した企業に導入のきっかけを尋ねたところ、「会計専門家に勧められたため」という回答が多くを占めました。そのほか、資金の借入条件を有利にする目的や経営改善に役立てる目的との回答もありました。
中小会計要領を導入して経営力強化に活用している企業からは、金融機関からの評価が良くなったなどのメリットを感じているとの回答が得られました。中小会計要領の導入によって会社の財政状態や経営状況がより客観的に表わされるようになったことが、評価の向上につながっていると考えられます。

(出典:平成26年度中小企業における会計の実態調査事業報告書|株式会社 富士経済(経済産業省中小企業庁委託事業))
一方、中小会計要領を知っていながら導入していない企業にその理由を聞いたところ、導入のメリットが感じられないとする回答が多く寄せられました。そのほか、税理士から勧められていないことや、自社のルールを変える必要性を感じないことが理由としてあげられています。
まとめ
以上、「平成26年度中小企業における会計の実態調査」の結果から、中小企業の経理業務の実情を読み解きました。
中小企業は限られた人員で経理業務を行っている一方、税理士など外部の専門家を活用していることがわかりました。また、中小企業向けの会計基準である中小会計要領は、広く普及しているとは言えない状況ですが、導入した企業はメリットを感じていることが明らかになりました。
経理業務の経験が長い人でも、他の会社がどのような業務を行っているかについては、あまりわからないものです。中小企業における会計の実態調査の結果を参考にして、自社の経理業務の改善に役立ててみてはいかがでしょうか。
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