まさかの全滅!?部長の平和を壊した決算7日間奮闘記

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私は、数年前まで社員数50名ほどの事業所で経理を担当していました。私の部署は、実務担当者2名と部長というメンバーで構成され、毎月の経理業務を行っていました。

部長は私たちの処理を承認し、全体を管轄する役割で、基本的に細かい実務を行うことはありません。管理職と聞くと、多くの方がこういった働き方を想像するのではないでしょうか。

ところが、私の部署では、急に部長がすべての実務を自分1人で行わなければならないという危機的状況が発生したのです。今回は、部長の在任中でおそらく一番大変だったであろう一週間のエピソードを紹介します。

突如部長に訪れた試練とは…!

数ある支店の中のひとつで売上規模も小さかった私の部署では、経理の実務的な部分は担当社員2名に任されており、特に経理の実務経験もない関係会社からの出向者が部長として配属されるのが恒例の人事でした。

部長はいざという時には責任を取らなければなりませんが、基本的には私たちの処理したものを承認するだけなので、比較的平和なポジションだったと思います。

これはまだ新型コロナウイルスが登場する前のこと。特に感染対策などは重視されていない日常でした。ある日、お子さんが発熱したとのことで保育園から連絡があり、同僚が早退しました。お子さんはインフルエンザだったそうで、翌日同僚も感染したことが判明。

「これはヤバいぞ…」という空気が部長と私の間に漂い始めたその日、午後になって気のせいか寒気が…。帰宅後やっぱり熱が出たので病院に行くと、予想どおりインフルエンザでした。

心配されたのが部長ですが、部長はデスクが少し離れていること、同僚と私のように一緒にランチをしていたわけではなかったことが幸いして、感染を免れました。ですが、実務担当者が2人とも1週間の出勤停止になってしまったので、部長も相当焦っていたと思います。

タイミングは最悪で、その1週間はなんと四半期決算の締め作業がある月初だったのです。実務経験のない部長が1人で決算をやるしかないというピンチでした。私たちも気が気ではありません。

というのも、普段部長は承認ボタンを押すだけなので、システム入力はおろかログインすらできないレベルだったのです。その頃はまだリモート体制も整っていなかったので、私たちは画面を見ることもできず電話で指示を出すしかありませんでした。

部長も悪戦苦闘しながら頑張ってくれたものの、初めての実務に膨大な時間がかかり、かなり大変な思いをしたようです。

経費精算、棚卸、支払い請求といった作業をすべて1人で、しかも初めて行わなければならないので、想像を絶する苦行だったといえるでしょう。

連日深夜まで残業、土日も出勤してなんとか期日までに締め作業を終えることができましたが、二度と味わいたくない苦しい1週間だったに違いありません。

月次決算にはなぜ時間がかかる?

今回の件では、いったい何がどう大変だったのでしょうか。具体的に分析してみたいと思います。

もちろん部長が実務を把握していなかったことが大きな問題点ではあるのですが、休日を返上するほど月次決算に膨大な時間がかかってしまった原因として、以下の問題点が挙げられます。

  • 直接対応しなければならない紙での経費精算

経費精算では20人以上いる営業社員に対応しなければなりません。ところが、当時の経費精算は紙の申請書が提出され、対面で直接現金を手渡すという形式だったのです。

営業部はシフト制で土日も出社する社員がいたため、部長はそんな営業全員の経費精算に対応できるよう、土日も出社しなければなりませんでした。

  • 現金の払い出しミス

このように部長1人で多くの経費精算に対応していたため、現金の払出しにミスがあったようです。

最後に現金実査を行った際に誤差があることが発覚し、部長が青ざめたのは言うまでもありません。どこで間違えたのか洗い出すだけでも相当な時間がかかります。

一人ひとりの精算金額と誤差金額を見比べ、可能性のありそうな社員全員に聞き込みを行い、やっとのことで誤差の原因を突き止めましたが、かなり大きなタイムロスでした。

  • システムへの入力ミス

普段実務を行わない部長は打ち込みに慣れていなかったため、システムへの入力ミスも多発しました。金額や税区分など小さな入力ミスが連続し、なかなか業務が進みません。

入力しては修正を繰り返し、一つひとつ確認しながら進めていくので膨大な時間がかかってしまいました。

  • 書類の整理

紙ベースの証憑書類が中心だったため、領収書を日付順に並べ替える、不備のある書類について確認するなど、入力の前段階で書類を整理する必要があります。これも時間がかかってしまった原因だといえるでしょう。

自動化システムやアプリを導入すれば解決できる!?

こうした問題を解決するためには、どのような選択肢があったのでしょうか。

私たちが部長にも実務レベルを見える化して共有しておくべきだったという反省はもちろんあるのですが、決算に時間がかかるという問題を根本的に解決するためには、やはり業務システムを活用する必要があるのではないかと思います。

例えば、次のようなシステムやアプリがあれば、経理業務にかかる時間はかなり短縮できるのではないでしょうか。

自動化システム

例えば領収書や明細データ、交通系サービスなどと連携し、データを自動的に取り込むシステムがあれば、手入力によるヒューマンエラーを減らせるはずです。

また、振込データの自動作成やインターネットバンキングへの自動連携ができれば、経費精算を現金で行う必要がなくなり、キャッシュレス対応も可能になるのではないでしょうか。

小口現金を廃止できれば、これまで月末に行っていた現金に関する処理を減らすことができます。

スマートフォンの専用アプリ

また、スマートフォンのアプリによる経費精算が可能になれば、社員は自宅や外出先などからいつでも自由に申請できます。

経理サイドとしても月末に全社員の出社を待つ必要がなくなり、スムーズに対応できるでしょう。

申請・承認から管理まで全行程を電子で完結できるためペーパーレスが実現し、証憑書類の整理や保管といった手間も削減できるのではないでしょうか。

まとめ

実務担当者がインフルエンザで全滅したこの事件。部長にとってはとんだ災難でしたが、アナログな経理業務の課題を身をもって実感する機会にもなったようです。

私の退職後、交通系サービスなどと自動連携するサービスの導入や、キャッシュレスの実現に向けて動いているという噂を耳にしました。

こうして経理業務を改革していくことは、実務担当者の負担を軽減できるだけでなく、今回のように緊急で管理職が対応することになっても、スムーズな対応ができるでしょう。

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