
アベノミクスの効果や人手不足などにより、給与の額は増加傾向にありますが、中小企業ではどの程度昇給しているのでしょうか。
政府統計をもとに、中小企業における昇給の実情や、昇給した理由、昇給しなかった理由を分析します。
中小企業の昇給率は1.8%
中小企業庁がまとめた「2018年版中小企業白書」から、従業員数の規模別に昇給率の推移を表したグラフをご紹介します。グラフからは、経済情勢の影響を受けて昇給率も変動していることがうかがえます。
(出典:深刻化する人手不足の現状|2018年版中小企業白書)
昇給した理由・昇給しなかった理由
経済産業省が実施した「平成29年中小企業の雇用状況に関する調査」では、中小企業・小規模事業者の昇給の状況が明らかにされています。
この章では、中小企業が昇給した理由、昇給しなかった理由と、そのほか調査によって明らかになった傾向をご紹介します。
昇給の理由の最多回答は「人材の採用・従業員の引き留め」
調査に回答した企業のうち、約6割強の企業が昇給を行っています。
昇給した理由として最も回答が多かったのは「人材の採用・従業員の引き留めの必要性」(49,2%・複数回答)でした。「他社の賃金動向」(21,6%)を合わせると、人材不足が中小企業の経営に影響を及ぼしていることがうかがえます。
また、「業績回復・向上」を理由に挙げた企業も34,3%あり、昇給した中小企業は業績が好調に推移していることがわかります。
業績の低迷で昇給を見送る企業も
昇給をしなかった理由としては「業績回復・向上が不十分」との回答が72.6%(複数回答)を占めました。業績の低迷により昇給を見送る企業の実情がうかがえます。
次いで多い理由は「賃金より従業員の雇用維持を優先」(20.7%)でした。リーマン・ショック後の経済低迷期には、大企業でも昇給より雇用維持を優先する傾向がみられました。一部の中小企業では、依然として昇給より従業員の雇用維持を優先する傾向があることがわかります。
このほか、「他社製品・サービスとの競争激化」(9.9%)、「原油・原材料価格の高騰」(10.1%)、「取引先企業からの値下げ要求」(6.4%)、など、外部環境の変化を理由にあげる企業もありました。
まとめ
中小企業の給与は大企業より少ないものの、昇給は継続して行われており、昇給率も増加する傾向にあります。
昇給の理由としては、人材不足への対応をあげる企業が多く、業績の回復をあげる企業が続いています。政府からの要請や税制上の後押しといった取り組みは、直接の理由にはあげられておらず、あくまでも事業環境や業績から昇給の是非を判断していることがうかがえます。
一方、業績不振や外部環境の変化などの理由から昇給を見送る企業もあり、中小企業の間でも対応が分かれる結果となっています。
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