転職者必見!社員の給与・賞与は、どのように決められているか?

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転職において、悩ましいことの一つが「年収交渉」です。多くの転職者が、「どの程度なら、交渉に応じてもらえるのか?」「いくらを提示すべきか?」という判断をしなければなりませんが、非常に難しいことです。

というのも、まだ日本においては「お金の話をすること」がはばかられる雰囲気がある上、「交渉したくても、相場がわからないので、希望を言って良いのか迷う」と言う人が多いためです。

そこで今回は、それを知るための最低限の知識として、「会社においてどのような要因が年収を決めているか」についてお伝えします。ご自身が年収を会社と交渉する際の材料としていただければ幸いです。

転職者が「報酬」について知っておくと得な知識

まず、転職するにあたって知っておいたほうが良いこととして、「「経営者」や「人事」がどのように「報酬」について考えているか」があります。
彼らもまた、「報酬をどのように決定すべきか」を悩んでいるのです。
そして、通常そう言った要望に対して本やセミナーで紹介されるのは以下のような話です。

1.二要因理論

まず、よく例として出されるのが、アメリカの心理学者「フレデリック・ハーズバーグ」の理論です。
実際、現在の企業におけるモチベーション・マネジメントは、彼の提唱した説に基づくものが大きいと言われています。有名な理論なので、覚えておいて損はないでしょう。
彼は「人のやる気」についての理論を打ち立てました。それは「二要因理論」と呼ばれます。
「二要因理論」とは、一言で言ってしまえば、人のやる気は、以下の2つの要因に左右されるとする理論です。

・衛生要因 … 最低限満たされていないと、仕事や職場への不満が増大する要因
・促進要因 … 働く人の仕事や職場への満足を増加させる要因

衛生要因は「人間関係」「福利厚生」など、最低限が整っていないと従業員の不満が増える要因です。ただし、これがいくら十分であるからといって「満足が増える」わけではないところに注意です。いくら職場の人間関係が良くても、従業員は「特に不満はない」という状態までにしかなりません。

逆に促進要因は、「仕事のやりがい」や「責任」など、仕事への満足を高める要因です。衛生要因が満たされていなければ意味がありませんが、衛生要因が満たされた上で、更に仕事や職場への満足を高めようとする時、「促進要因」に働きかける必要がある、というものです。

そして、その中において、報酬は「衛生要因」とされています。要は、安すぎると不満を招くが、かと言ってお金を出せば出すほどやる気が上がるかといえば、「不満はない」という状態にしかならない、ということです。

つまり、会社が年収を決定するときには、「年収は、応募者が不満を持つほど安くてはいけないが、かといって給与を高くしても得られる効果はたかが知れている」と考えています。会社は給与ではなく、「仕事のやりがい」や「得られるキャリア」総合的に見てもらおうとアピールするのです。

2.給与の満足度を決めるのは、他者との「比較」

東京大学教授の高橋伸夫氏は、その著書である「虚妄の成果主義」(日経BP社)の中で、給与の満足度は「比較によって得られる」としています。

したがって、殆どの場合、企業が意識するのは国内、業界内、会社内における「相場」です。つまり、企業はできるだけ「相場」を問題にします。転職者との交渉は、そこからの「ズレ」がどの程度か、が焦点です。

ですから、下の資料のような業界の状況を見た上で、交渉に臨むとよいでしょう。例えば転職サイトなどには、年収の分布が掲載されています。

これを見ると、例えば30代のSEやプログラマであれば平均給与は482万円。中央値は400万円から500万円なので、会社は「普通の30代のエンジニアだったら、450万円程度をまず提示しよう」と考えます。

さらに「交渉されたら480万円程度までならOKだな、でも500万円を超えるなら、かなりいい人でないと」と思うはずです。

3.給与ではなく、「賞与」で支払いたい

給与と賞与の違いをご存知でしょうか?一般的には「給与は絶対に支払うもの」、「賞与は業績が良い時にしか出さなくても良いもの」とされています。したがって、実力未知数の中途へはできるだけ賞与で払いたい、というのが多くの会社の本音です。

企業は、給与については、できるだけ「実力がわかってから」を基本路線とします。現在は多くの会社が「賃上げ」の要請をされていますが、実際には給与を上げず、賞与額を上げるだけにとどまるのは、そういった理由からです。

したがって、交渉時は「給与」について、会社は中々上げたがらないかもしれませんが、そのときは、賞与で交渉してみるのもよいでしょう。

4.「給与」は「比較対象よりもほんの少し高め(+10%程度)」が満足を生みやすい。

高すぎる給与は、双方に不満を生みやすく、時には入って数年でリストラの対象となってしまうこともあります。したがって、まずは入社し、実力によって高い給与を勝ち得る、というのが王道ではあります。しかし、最初から「いつか給与をあげてくれるかも」と思って入社するのも楽観的すぎるでしょう。

この場合、どの程度まで会社側へ要求することが可能なのでしょう。

アメリカのコングロマリットとして名を馳せたITTの総帥、ハロルド・ジェニーン氏は、その著書「プロフェッショナル・マネジャー」(プレジデント社)の中でこう述べています。

“エグゼクティブをITTに誘引し、引き止めておくために、我々は業界の平均より10%高い基本給を払いしかるのちに、気前の良いボーナスによって……”

上にあるように、実は、会社側は「いい人が取れるなら、相場よりも10%程度高めの給与ならばOK」と思っています。

会社側が「450万」と提示した時に交渉の余地は+10%の、495万円です。「相場より大幅に上振れせず、かつ、「この程度なら」と思わせる金額です」

まとめ

会社は「お金」を積んでも人はやる気を出さないことを知っています。したがって、まずは、自分の「相場」を知り、相場で交渉しましょう。前職でいくらもらっていたかはあまり当てにできません。「市場価値」は、転職サイトなどで確認できます。

そして、給与は相場の+10%以内、あるいは社員の平均的給与で考えると会社側に抵抗がありません。また、給与の交渉、賞与の交渉は別に考え、給与を低めにするなら、賞与の査定方法をきっちり聞いておくべきでしょう。さらに、マネジャーの構成、在職年数などを聞いておくと、「昇給可能かどうか」を判断する材料になります。

以上です。次の職場があなたにとって最高の職場でありますように。

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