ここが辛いよ入金消込〈Vol.1〉:取引先件数が多い業界では、金額が一致していても単純作業で疲弊してしまいます。

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入金消込は業種業界によって特徴があり、その特徴が実務の負担と直結することも多いです。

今回から数回のシリーズで、業種業界ごとの入金消込の特徴や留意点についてお話をしたいと思います。

ズバリと当てはらまない業界のかたでも、近しい事象もあると思いますので、実務における参考にしていただければ幸いです。

請求額と入金額が一致していると比較的容易

入金消込に関して、請求額と入金額が一致していることは入金消込が比較的容易になる要素といえます。

月末に締めて翌月末に入金がされる取引で、取引の内訳項目が少ない場合は、請求額と入金額は一致しているケースが多いので入金消込が比較的実施しやすいように思います。

取引内訳が少ないのに対して、取引内訳が多いとどのような弊害があるでしょうか。

日々納品があるような取引の場合は、請求書の明細行が相当な数になって、仮に納品日の認識が取引先とズレていると請求額に関して当方と先方でズレが生じる可能性があります。

その結果、当方からの請求に関して同額の入金がないという事象が発生してしまい、入金消込が容易でなくなってしまうことになります。

これに対して取引内訳が少ない、例えば1明細しか取引がない場合は、翌月に入金がされれば非常に簡単に入金消込ができます。仮に翌月末に入金がなかったとしても、どの分がまだ未入金なのかということの識別が簡単です。(このケースの場合は、1明細分しかないのでわかりやすいでしょう。)

人材、IT、士業サービスは同額が多い

請求額と入金額が一致してくる業種業界としては、人材関係、IT関係、士業関係サービスなどがあげられます。

人材関係ですと、例えば派遣会社があります。派遣会社の場合は、月の締めのタイミングは必ずしも月末ではないですが、月末締めで請求をしている会社は多いです。

例えば、1名の派遣社員を派遣先に派遣している場合は、1名分の請求をすることになります。この場合、請求明細には1名分の請求額が表示され、派遣先が月末締めで翌月末入金の場合は、翌月末に請求額と同額が入金されることが多いでしょう。請求額と入金額が同額なので、入金消込の判断自体はそれほど難しくはないです。

人材関係では人材紹介会社なども同様に、明細行が比較的少ない請求をするケースが多いと思います。月に数十人規模の人材紹介を受け入れるような大手企業もあるでしょうが、中小企業の場合は月に1名あるいは2~3名程度がせいぜいだと思いますので、請求の明細行は少ないことが多いです。

IT系のサービスでも、派遣をしているケースや開発をしているケースでも派遣人数が多くなければ、明細行は少ないでしょう。開発案件も、複数同時にプロジェクトが走っていなければ請求明細は少なく、結果として請求額と入金額が同額となるケースが多いでしょう。

士業サービスで弁護士報酬や税理士報酬などの場合、月額固定の請求をしているケースなどは請求額と入金額が同額となるケースが多いです。

ただ、士業サービスの場合は、請求額もほぼ毎月同額のため、何月分の請求に対して入金があったのかを適切に把握していないと、ひと月分入金がなかった場合などに滞留している事実を把握できずにいたまま放置される、ということも実務上起こっています。

同額の入金でも件数が多いと処理は相当負担

請求額と入金額が同額であれば入金消込業務自体に負担がないかというと、そんなことはありません。

ボトルネックは、その件数です。取引先が多い場合は、同額の入金であっても入金消込の作業に相当の時間を要することになります。

100件ほどの取引先の件数であれば、人力で対応が可能かもしれませんが、300件以上の取引先数になると、人力での対応はかなり厳しいものがあります。

目視で通帳に印字されている取引先の名称から取引先を特定して、そのうえで、債権管理をしている債権の消込作業を行うというアナログな形で作業をしていると、大量の消込はそう簡単には終わりません。

人を手分けして行うことで多少の平準化はできますが、チームのコミュニケーションが悪いと誤った入金消込をしても誰も気付かないということもあります。

また、複数人で作業を分けて行うには、債権管理のシステムに複数人が同時にアクセスできることが求められます。しかし、スタンドアローンで利用しているシステムの場合はそのようなこともできないので、結果として一人にしわ寄せがきてしまうということにもなりかねません。

月末入金は経理の月次締めとタイミングがかぶってしまうのも痛い

また、日本の商習慣では売掛金の入金が月末に集中する傾向がありますが、月末に入金があり、通帳を見ながら入金消込をするとなるとどうしても作業は月初になってしまいます。

経理のメンバーが入金消込をして、同時に月次決算の担当も持っている場合は、月初は両方の業務で多忙を極めてしまいます。

入金消込を優先すると月次決算が遅れるというジレンマもあるので、両方を優先度高く作業してもらうことになりますが、あまりに非効率であると嫌気がさして退職してしまうなんていうことにもなりかねません。

入金消込は、非効率な状態で作業をしていると単調過ぎで嫌気がさすという可能性もあります。

心地よく仕事をしてもらうためにも作業効率を上げる仕組みを

このような負担の大きい状態を脱却するための仕組みを作ることは、入金消込業務の重要な要諦の一つといえます。

請求額と同額の入金が多い業界業種にとって強力なツールは、自動消込機能を実装した入金消込システムかと思います。

自動消込の場合でも、今回のケースのように請求額と同額の入金が多い場合は、入金元口座の情報等に基づいて自動消込をすると、かなりの割合で正しい消込を実施してくれるものと思います。

仮に500件の消込対象があったとしても、95%が自動消込で入金消込が完了すれば残り5%の25件ほどに関して確認作業を含めて対応すれば、よいことになります。

これくらいの件数であれば月次決算等の作業の阻害要因にならないでしょうし、かなりの件数の入金消込が自動化されていれば入金消込業務が単調で嫌だということにもならないでしょう。

働き方改革という視点でも、自動消込が有益な業種業界の方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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