
前回と今回でグループ経営におけるインボイス制度対応の検討について紹介しています。
今回は、グループ経営において、実務を行ううえで論点となってくる留意事項を具体的に紹介させていただきます。みなさまの会社で当てはまることがあれば、ご注意ください。
<前回記事はこちら>
グループ経営におけるインボイス制度の検討の進め方と留意点①
企業グループにおけるインボイス対応
グループ経営を行っていても、インボイス対応は基本的には各社で対応しなければならないことは前回の投稿で紹介させていただきました。
しかし、グループで効率的な運営を行っているが故に生じてしまうインボイス論点もあります。グループ経営だからこそ、企業グループの各社が個別にインボイス制度対応を行うことが難しい事態が生じることもあります。
例えば以下のような状況などが想定されます。インボイス制度対応において未検討の事項があれば、ご参考ください。
グループ間で請求書なく経理処理している場合
まずは、グループ間、特に親会社と子会社間で取引を行っている場合で、請求書を発行することなく精算している場合です。
グループ間取引であっても、主たる営業取引においては請求書の発行をしないということはないかもしれません。しかし、グループ内で管理業務を委託したりしている際に生じる業務委託などの一般経費では、実務対応として発行していないこともあるのではないでしょうか。
グループ内稟議や契約によって取引価格が決まっており、グループ内の会社間では自明の金額であることから、特段請求書を発行しなくてもわかり、暗黙の処理を行っている状況があれば注意が必要です。
また、グループとしての費用の按分を親会社などグループ内の特定の会社が実施し、グループ稟議で承認を経て決定したものを按分して各社に負担させていたりする場合、グループ共通の稟議があることから、その後の請求実務を省略している場合も見受けられ、同様に注意が必要です。
このような場合、シンプルに適格請求書を発行する対応に変更するか、契約書などに適格請求書に必要な要件を盛りこむ、その他の通知書や覚書で適格請求書に必要な要件を相互に確認しあう、といった対応が想定されます。
いずれにしても、請求書自体を発行しておらずインボイス制度対応において何も対策をしていないのであれば、インボイス制度が要求している事項に沿っていない可能性があるため、ご確認ください。
請求支払業務をグループ内で集約している場合
次に、グループ経営を行っていると複数のグループ企業の経理業務を集約した運営(経理センターなど)を行っていることがあります。その際、経理業務だけではなく、債権債務管理や請求支払業務も集約している運営をしている場合には注意が必要です。
この場合、特に注意するべき事項はグループ間の取引ではなく、企業グループ外に請求している事項です。
取引を行っている会社(業務を委託している会社)と請求支払業務を担っている会社が異なった場合に、請求書の記載内容には実際の取引を行った会社の適格請求書に必要な要件が記載されていなければなりません。
請求支払業務を委託し、請求されるグループ外の会社とも合意を取り、委託された会社名義で請求業務を行っていたとしても、請求されるグループ外の会社と取引を行ったのは委託した会社になるため、グループ外の会社が欲しい情報は請求管理業務を行っている会社の情報ではなく、請求管理を委託した会社の適格請求書に必要な情報となります。
請求内容が、この要件を満たしているかどうか注意してください。
また、上記の仕組みのなかでグループ会社間の留意事項もあります。経理業務は委託していないが、請求支払管理だけ委託している場合には、グループ会社間で回収した金額や支払った金額の精算を行うことが想定されます。
その際、精算の方法についてインボイス制度も媒介者交付特例といった対応方法も公表しており、インボイス制度対応方法に沿った対応となっているか、ご確認いただいた方が良いかもしれません。
グループ統一システムを利用している場合
グループ統一の会計システムや請求書発行システムを利用している場合にも注意が必要です。
システムを管理している会社が国内会社である場合は、その管理している会社もインボイス制度対応が求められるため、統一システムもインボイス制度対応となることが多いように思います。
ここで注意が必要な状況は、グローバル企業の国内会社で、かつシステムを海外の会社が管理している場合です。
インボイス制度について、似たような法制度は海外にもありますが、今回施行されたインボイス制度は日本のみの独自の法制度になります。そのため、グローバルの会社にインボイス制度対応を任せることは難しいことが多いです。
例えば、システムから作成される請求書の消費税の端数処理や登録番号が適切に表示されていますでしょうか。
国内の会社においてインボイス制度内容を的確に理解し、グローバルの統一システムに国内会社のみの仕様を追加する改修をする、国内会社のみで追加のシステム導入を検討、またはシステムに依拠しないマニュアルでのインボイス対応、などが必要になるかもしれません。ご確認ください。
上記でご紹介した内容は、あくまで例となっていますが、実務を見直すといろいろと論点がでてくるものです。
すでにインボイス制度が開始されてしまっていますが、誤ったまま運用をつづけてしまうよりは対応を諦めるのではなく、一度立ち止まって適切な対応を行えるようにご検討ください。
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