電子保存義務に対応した運用方法|施行まであと【5ヶ月】電帳法対応の最終チェック④

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前回は電子保存の要件とそれに対応するための方法を見てきました。今回は、検索機能要件と改ざん防止措置要件のそれぞれへの対応について、運用上のポイントを挙げていきたいと思います。

1.検索機能確保の要件への対応

1-1 小規模事業者(売上高5,000万円以下)

検索要件について、小規模事業者の場合は、例外規定の利用も含めると以下のいずれかの方法になると考えられます。

    ①「税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにする」(検索要件は不要となります)
    ②エクセル等の表計算ソフトで一覧表を作成する、もしくは、取引年月日、金額、取引先名をファイル名に含めるようにしておく、といった方法により検索要件を満たす方法
    ③電帳法に対応(検索要件に対応)した会計システムや経費精算・債務支払システムを利用することにより検索要件を満たす方法

 

運用上のポイント
①では、電子保存した「すべての」取引情報について、ダウンロードの求めに応じられる状態で保存しておくことが必要です(取扱通達4-14)。一部でも応じることができなかった場合には、検索要件不要の緩和メリットは受けられなくなりますので留意が必要です。

②エクセル等の表計算ソフトで一覧表を作る、ファイル名を変更する、といった作業は手作業で行うことになります。網羅性・正確性を確保できるよう、定期的・計画的に実施する必要があるでしょう。

③会計システムや経費精算・債務支払システムを利用して検索機能要件を満たすためには、要件で指定されている3つの要素「取引年月日」、「取引金額」及び「取引先」の情報がシステムに保持されている必要があります。

「取引年月日」と「取引金額」は会計帳簿の基礎データになりますので通常保持されていると考えられますが、「取引先」の情報はシステム上必須ではないことが多く、漏れがちですので留意が必要です。

1-2 小規模事業者以外の事業者(売上高5,000万円超)

検索要件について、小規模事業者以外の事業者の場合は、例外規定の利用も含め以下のいずれかの方法になると考えられます。

    ①「税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにし」、かつ、「電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにする」(検索要件は不要となります)
    ②エクセル等の表計算ソフトで一覧表を作成する、もしくは、取引年月日、金額、取引先名をファイル名に含めるようにしておく、といった方法により検索要件を満たす方法
    ③電帳法に対応(検索要件に対応)した会計システムを利用することにより検索要件を満たす方法

 
運用上のポイント
①の前段は1-1小規模事業者の場合と同じです。後段は、取扱通達7-3に説明があります。要約すると、電子保存している取引情報を印刷した書面を、以下のいずれかの方法で規則性をもって整理しておくことが求められます。また、当該書面を元に、保存している電子取引の情報を探し出せるようにしておくことも求められています。

    (1) 課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめたうえで、取引先ごとに整理する方法
    (2) 課税期間ごとに、取引先ごとにまとめたうえで、取引年月日その他の日付の順に整理する方法
    (3) 書類の種類ごとに、(1)又は(2)と同様の方法により整理する方法

なお、こちらについては、質問検査時に印刷・整理する方法ではなく、日常的に書面を印刷して整理しておく運用方法が想定されているようです。

②は小規模事業者の場合と同じですが、一定規模以上の事業を営んでいることから、網羅性・正確性を確保しながら手作業でこれらを行うことは効率的とはいえないかもしれません。

①または③の方法を検討することが考えられます。③は小規模事業者の場合と同じです。

2.改ざん防止措置の要件への対応

改ざん防止措置要件については、以下のいずれかの措置により対応を行うことになります。

    (1) タイムスタンプが付された後の授受
    (2) 速やかに又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付す
    (3) データの訂正削除を行った場合に、その記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う
    (4) 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

 
運用上のポイント
(1) は、電子取引情報の「受領者」ではなく「発行者」がタイムスタンプを付与することを意味しています。タイムスタンプが付された情報はその後に改ざんされていないことを証明できますので、改ざん防止の観点では、発行者が付すことで十分となります。

たとえば、「発行者」がタイムスタンプを付したPDFファイルを電子メールで受領した場合は、そのまま電子保存することで要件を満たしていることになります。運用上は、そのようなケースを判別する方法や判別後のフローを設定しておくことが必要になります。

(2) は「受領者」がタイムスタンプを付す場合を意味しています。ここでの「速やかに」と「業務の処理にかかる通常の期間を経過した後、速やかに」は、別稿で取り上げた「スキャナ保存」の「早期入力方式」と「業務処理サイクル方式」の期間と同じになります。後者の場合は事務処理規程が必要になることも同じです。

なお会計システムや経費精算・債務支払システムが電子保存への対応をタイムスタンプの付与のみによって行っている場合、上記の期間内にシステムに取り込んで処理を行う必要がありますので留意が必要です。たとえば、PDFファイルを受領した3か月後にシステムに取り込むのではすでに遅く、要件を満たさないことになります。

(3) こちらは、具体的には下記のようなシステムが該当するとされています。

    ①電磁的記録の記録事項に係る訂正・削除について、物理的にできない仕様とされているシステム
    ②電磁的記録の記録事項を直接に訂正又は削除を行った場合には、訂正・削除前の電磁的記録の記録事項に係る訂正・削除の内容について、記録・保存を行うとともに、事後に検索・閲覧・出力ができるシステム

会計システムや経費精算・債務支払システムを利用して改ざん防止措置要件に対応するのであれば、こちらの要件を満たすシステムを利用するのが安全といえます。

運用上は、当該システムに電帳法対応機能(改ざん防止機能など)を利用するかどうかの設定をする必要がある場合には、それを有効にしておくことが必須となります。

(4) 電帳法対応の会計システムや経費精算・債務支払システムを利用せずに手作業で対応する場合は、こちらの事務処理規程を策定して運用することになります。当然のことですが、実際の事業運営と合わせた規程にする必要があります。定期的に見直しを行うことも必要です。

会計システムや経費精算・債務支払システムを利用して各種の要件に対応する場合には、クラウド型のシステムがお勧めです。電帳法は要件が複雑であり、また将来改定されることも十分に考えられます。

クラウド型のシステムであれば、システムを提供する開発サイドでソフトウェアの改定を行えますので、ユーザーによるアップデート作業などが不要です。アップデート作業を怠ったことにより最新の法令に対応できなかった、といったことが起こらないようにしたいですね。

まとめ

電子保存の要件のうち、検索機能の確保と改ざん防止措置の2点の要件への対応について、実際の運用上のポイントを見てきました。

電帳法に対応した、クラウド型の会計システムや経費精算・債務支払システムを利用することが最も安全といえます。ただし、システムを利用する場合にも留意点がいくつかありますので注意が必要です。

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