電子保存義務に対応するためのステップ|施行まであと【5ヶ月】電帳法対応の最終チェック⑤

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前回は電子保存義務の具体的な対象を解説しました。今回は、電子保存の要件とそれに対応するための方法を見ていきます。

電子保存の要件

電子保存を行う場合の要件は、下記のとおりです。

    ①電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(この要件は自社開発のプログラムを使用する場合に限定です。)
    ②見読可能装置の備付け
    ③検索機能の確保
    ④改ざん防止措置

①と②の要件は特に大きな問題になることはないでしょう。対応が必要になるのは、③の検索機能の確保と、④の改ざん防止措置の2点になります。

検索機能の確保の要件(③)

原則として、以下の要件を満たす必要があります。

    ⑴ 「取引年月日」その他の日付、「取引金額」及び「取引先」を検索の条件として設定できること。
    ⑵ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定できること。
    ⑶ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること。
    (ただし、「税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合」には、(2)(3)の要件は不要です。すなわち、通常の方法で電子的に保存しておりダウンロードが難なくできる状況であれば、(1)の要件のみということになります。)

上記の要件は、電帳法の電子保存に対応した会計システムや経費精算・債務支払システムであれば当然に満たしているでしょう。そのようなシステムを利用するのが最も安全といえます。

システムを導入していない小規模企業や個人事業主の場合には、エクセル等の表計算ソフトで一覧表を作成する、もしくは、取引年月日、金額、取引先名をファイル名に含めるようにしておく、といった方法が考えられます。

なお、検索機能の確保の要件については、上記の原則のほか例外規定が設けられていますので、それを利用するのも一つの方法です。

例外1 売上高が5,000万円以下の小規模事業者は、「税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合」には、(1)の要件も不要になります。すなわち、検索機能の要件がすべて不要になります。

例外2 小規模事業者以外の事業者(売上高5,000万円超)は、「税務職員による質問検査権に基づくダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合」で、かつ、「電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている場合(※)」には、同様に、(1)の要件も不要になります。すなわち、検索機能の要件がすべて不要になります。
(※)詳細は取扱通達7-3に規定されていますのでご参照ください。

改ざん防止措置の要件(④)

こちらについては、以下のいずれかの措置を行う必要があるとされています(いずれか、であって、すべて、ではないことに留意ください)。

    (1) タイムスタンプが付された後の授受
    (2) 速やかに又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付す
    (3) データの訂正削除を行った場合に、その記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う
    (4) 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け

電子保存を自社内で行う場合は、一般的な会計システムや経費精算・債務支払システムであれば上記の(3)の要件を満たしているものが多いと考えられますので、検索要件と同様、そのようなシステムを利用するのが最も安全といえます。

そのようなシステムを導入していない小規模企業や個人事業主の場合には、(4)の事務処理規程を用意して運用するのが最も簡易な方法といえるかと思います(国税庁のWebページに規程のサンプルが用意されています)。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

また最近では、電子保存サービスを利用してクラウドサービス上に電子保存を行うことも増えてきています。そのような電子保存サービスを利用する際には、そのサービスが(3)または(4)の要件を満たしているかどうかを予め検討しておく必要があるでしょう。

まとめ

ここでは、電子保存の要件と対応方法を見てきました。要件のうち、検索機能の確保と改ざん防止措置の2点への対応が主となります。

たとえば売上高が5,000万円以下の小規模事業者の場合には、検索機能確保対応としてダウンロードの求めに応じることができるようにしておくこと、改ざん防止措置として事務処理規程を策定することで対応が可能となりました。

次回は、要件に対応した後の実際の運用について、見ていきます。

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