業務においてリスクやフローが変わると、それに伴い内部統制行為も変化する可能性があります。
インボイス制度施行の影響も同様で、制度に関連したリスクや業務のフローが変わることが想定され、この変化に関連してチェックするポイントや内部統制行為も変化する可能性があります。
そこで、今回はインボイス制度施行に伴う業務フローの変更点や会社等の内部統制の見直し、新規構築のポイントをご紹介します。
新規取引開始時や継続取引更新時
インボイス制度施行前後で変わってくる業務として、取引先が適格請求書発行事業者(以下、登録事業者とする)の登録を行っているか否かの情報をどのように把握し、把握した情報をどう管理するか、があります。
取引先が登録事業者か否かの情報の把握方法は各社で異なりますが、その情報の管理は一般的に取引先マスターで管理することが考えられます。基本的に、取引先マスターはいつでもだれでも更新できるものではなく、更新のための申請と承認行為が必要になることが一般的です。
さらに重要なことは、取引先マスターの更新の目的の一つとして、その取引先と取引条件の判断結果を残すことがあります。取引先の登録状況によりどのような取引条件とするのか、新規取引開始時に相手が登録事業者ではなかった場合にそもそも取引をするのか、の判断要素もあるかもしれません。
そのため、制度施行後に変更する業務として、取引先の登録情報を把握する業務とそれを管理するためのツール(例えば、登録事業者か否か項目や登録事業者番号の項目などを管理するツールとしての取引マスター)の追加が想定されます。これらの業務は制度施行前には通常なく、従来の業務に追加して考慮する必要があると考えられます。
上記の業務の変更に対応して、取引先の登録状況の確認時に社内チェックを実施することや、取引先マスターの承認時に追加項目の内容まで確認して承認する、といった統制行為の追加もしくは見直しが想定されます。
請求書受領時
インボイス制度施行後で変わる大きな点として、登録事業者から受領する請求書等が適格請求書の要件を満たしていないと、受領した会社は仕入税額控除をすることができなくなるという点があります。
そのため、受領した請求書が要件を満たしているかどうかの確認が制度施行前後で変わってくると考えられます。請求書等を受領する行為自体は制度施行前と変わるものではありませんが、統制行為の変更は生じるかもしれません。
ここでいう統制行為は、会社の仕入税額控除の把握方法により多少異なるかもしれませんが、大枠でいうと受領した請求書が適格請求書の要件を満たしているかどうかを確認する、というものになります。
この確認行為の中には、事前に自社で把握している請求書等の発行事業者情報と請求書記載内容との整合性を確認する、といった詳細な確認から、詳細な記載の内容までは確認せず請求書フォーマットがインボイス制度要件を満たしているか、といった容易な確認まで考えられます。
確認の程度は会社のリスク管理の方針やその他の業務フローとの兼ね合いで変わってくると思います。
さらに留意する点として、誰が当該確認行為をするのかといったことも決めておかなければなりません。請求書等の受領者が行うのか、または請求書等を管理し支払業務などを担当する方が行うのか、などです。
請求書発行時
続いて、前項とは逆に自社で請求書を発行する場合です。
自社が登録事業者となっており適格請求書を発行しなければならない場合、その請求書等が適格請求書の要件を満たしていないと、受領する事業者が仕入税額控除をすることができなくなり困ってしまう可能性があります。
そのため、適格請求書の要件を適切に満たしていることを確認する業務が必要になります。請求書等の受領の場合と同様に、業務自体の変更はないかもしれませんが、統制行為の見直しの有無については検討が必要です。
簡単には、発行する請求書等が適格請求書の要件を満たしていることを確認するというものです。これも前項と同様で、誰がそのチェック行うのか、もポイントになります。
会計処理時及び税務申告時
制度施行後においては、仕入等の取引がインボイス制度の要件を満たした仕入等か否かにより、税務申告の金額が変わってきます。適切な税務申告を行うためには、取引の都度、会計処理時にそれらの要件を考慮して入力しておくことが考えられます。
多くの会社は、取引内容がインボイス制度の要件を満たしていない場合には従来と異なる適用税率の入力等を行う、もしくは区別できるようにしておくことが必要になります。
その入力等においては、受領した請求書等がインボイス制度の要件を満たしているか否かの判断に紐づいた適切な入力等が必要です。
インボイス制度の要件を満たしていない場合、インボイス制度における経過措置の適用の有無、適用する経過措置の割合、によって入力等も変わります。
会計処理時の入力等が変わるため、その行為を確認もしくは承認する際も追加したチェックポイントが必要になります。
最後に
インボイス制度の対応により業務フローが大きく変わる会社は少なくないと思います。前項までは、一般的な業務の変更と統制について記載しました。
会社のインボイス制度の対応方法によっては、例えば請求書等を発行せずに契約書等でインボイス制度の要件を満たす場合などについても、従来と業務の内容や統制行為が変わってくることもあり、当該投稿だけですべての変更を網羅しているものではありません。
適切な制度対応をするためには、適切な業務フローの設計と統制行為の設計が必要です。
インボイス制度施行後の検討ではなく、制度施行前に適切に検討し、場合によっては監査法人や内部監査担当との協議を実施しておくことが望まれます。
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