受領する請求書の規模や業種別の留意点

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インボイス制度が導入された後の受取請求書の処理をどうすべきかについて悩んでいる企業は多いと思います。ただ、受取請求書の対応に関しては、インボイス制度導入前から一定規模の会社や業種によっては課題感を持っているケースが多いです。

今回は、受取請求書の処理の効率化という観点で考慮すべき点について話をしたいと思います。

成長企業の悩み

企業が成長をしていく過程で生じる現象の一つに、拠点数が増えることがあげられます。具体的には、店舗数が増えたり、支店の数が増えるケースです。

もちろん、業務が拡大しても拠点を新たに設けずに、本社で全て対応する企業もありますので、成長する過程で必ずしも拠点数が増えるとは言い切れません。しかし、各地域で営業等を推進する企業の場合、一般的には各地域に拠点を構えるでしょう。

ここで受取請求書に関して生じる課題は、拠点でどこまで処理をしてもらうべきかという点です。

受取請求書に関しては、およそ次のような業務があります。

  • ①受取請求書が発注内容と合致しているかを確認する
  • ②合致していることを確認したあとに、支払金額等の情報をシステムに登録する
  • ③実際に送金をする

上記のうち、①の請求書の金額が正しいかどうかという点に関しては、申請部門の申請者や上長が実施をすべき業務となります。そのため、拠点がある会社であれば各拠点で実施をすることになります。

次に、②と③は会社によって処理の方針が分かれるところです。

②は請求金額を登録し、あわせて勘定科目等の仕訳情報も登録する業務で、拠点に実施してもらうケースもありますし、本社でまとめて行うケースもあります。

実務上は、前者の拠点で登録しているケースが多いと思います。

ただし、経理レベルが一定以上のスタッフが拠点にいれば問題ないのですが、いない場合、登録した内容が本社の経理スタッフの期待値と大きく乖離が生じた時は、本社で修正をすることになります。

修正のボリュームが大きい場合は、本社の負担が拠点数の増加とともに増大することとなり、その点が悩みとなっている企業もあります。

不正送金防止への対応で本社経理部門の負担が増えることも

次に、③の支払いの実行です。これも拠点で実施している企業もありますし、本社でまとめて実施している企業もあります。

ここで考慮しておかなければならない点は、不正が生じにくい体制となっているかどうかです。

拠点で支払いまで実行するケースの場合で、なおかつ、拠点に十分なスタッフがいないとなると、不正送金等がなされる可能性が高まります。特定の一人しか送金実務に携わっていなければ、不正ができる環境になっているといえます。

不正送金や着服が行われているケースの多くは、一人で業務が完結する仕組みになっていて、他者からのチェックを受ける体制となっていません。

そのため、③の送金業務自体は、本社の経理部門で一括して行っている会社も多いです。

ただし、拠点の数が増えることで、本社の経理部門の負担は増えることになりますので、一部の業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)して業務の分散を図っている会社もあります。外部の目を入れることで、不正防止につながることも期待できます。

今までは拠点数が増えるケースについて解説をしてきましたが、拠点数は増えない場合でも、企業の成長に伴って、一般的には社員数が増えることが多いです。その場合は、拠点数は増えなくとも、人数増加に伴って、発注数量等が増えることが一般的です。

この結果、増加する受取請求書への対応のために、経理部門としては業務の分散を考える必要があります。

プロジェクト管理と請求書の関係

次に、業種によって受取請求書の件数が増えると負担増になるケースについて考えてみたいと思います。

建設業、システム開発業、案件管理をしているコンサルティング会社のようにプロジェクト管理をしている業種の場合は、一つの受領請求書をプロジェクト別に分割して経理処理するケースが多いです。

1枚の請求書(今後は、適格請求書であるインボイス、あるいはそうでない請求書に2分もされます)に記載された金額をプロジェクト別に金額を分解して入力することが必要となり、この分解を手作業で行うとなるとかなりの手間が生じます。

このような手作業を縮小するために、請求書を案件別に分けてもらうようにしているケースもあります。

請求単位でプロジェクト別に分割されているので、プロジェクトさえ特定できれば、請求書に記載の金額を会計システムに投入すればよいので、1枚の請求書を分解する手間がなくなる負担軽減は大きいです。

ただし、その場合は処理件数が相当数になるので、処理スピードが求められます。

そこで、受取請求書をスキャン等してデータ化できるシステムを活用することで、入力の手間も減らしているケースもあります。

AI-OCR機能を活用して、日付、金額等がデータ化されることになるので、受取請求書の入力業務の効率化が進みます。

費用対効果を考えたうえで管理をしていく視点も

インボイス制度が導入されると、インボイスに該当するかどうかの判別も必要となります。この判別もできるシステムを活用することで、インボイス制度導入後の業務負担の軽減を図ることを志向している会社も多くあります。

なお、プロジェクト管理や部門管理等に関しては、細かく管理をしようと思えば、とことん細かく管理することも可能です。ただ、その分業務負担が大きく増えるというのも事実です。

システムを活用して代替できるのであればよいのですが、人間の手作業に負う部分に関しては、費用対効果を勘案してあまりにも負担が大きい場合は、管理単位を細かくし過ぎないようにすることも肝要です。

合わせ技のインボイスは手間になる可能性も

ほかにも業種特有のこととして、納品書等を納品や検収の都度もらう業種(飲食業、卸売業、製造業等などで該当する会社があります)の場合に、納品書等を都度もらうものの、会計上のシステム連携が納品データ等となされていなければ、月末到着の請求書でまとめて計上しているケースもあります。

このような業種の場合、現在でも個々の納品書の合計と月末の請求書に記載の数量等が一致しているかをチェックして、手間が膨大になっている会社もあります。

インボイス制度が導入されて、納品書と請求書の組み合わせでインボイスとするような相手先からインボイスを受領した場合、厳密には、納品書と請求書を組み合わせた内容が、インボイスとしての要件を満たしているのかを確認する必要が生じることとなります。

現実的にそのような検証をするかどうかということはあります。少なくとも、インボイス制度導入後に受領する予定の納品書や請求書が、どのような形式になっているのかを事前に確認しておくことをお勧めします。

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