他人事だと思っていた「経理の属人化」、直面するとこんなに大変だった…!

読了まで約 5

私は、数年前まで社員数50名ほどの事業所で経理を担当していました。経理の課題としてよく耳にする「属人化」ですが、私の部署では複数で経理を担当していたので、特に問題もなく日々の業務を行っていました。

ところが、私の所属していたところとは別の支店でとある事件が起こりました。今回は「属人化」の深刻な影響を実感したエピソードをご紹介します。

急な事態に、もはや対処不能?!

事件が起こったK支店は、売上規模も小さく社員の配属数も少ない、とても小さな支店。

そのため、経理を担当する固定の社員がおらず、実務は派遣社員に任せている状態でした。その派遣社員はかなり長く在籍し、安定してK支店の経理を仕切ってくれていたので、誰もが安心して任せきっていました。

ところがある日、派遣会社の担当者を通じて急に退職の連絡が入ったのです。継続の意思確認をする定期面談の場でも契約を更新しないという話はなかったそうで、まさに青天の霹靂でした。ご家庭の事情だったようで、結局彼女は一度も出社することなく、引き継ぎも全くできないまま退職してしまいました。

困ったのが残された社員たちです。売上規模は小さかったものの、彼女が1人で実務を行っていたので、K支店の経理は完全にブラックボックスと化していました。K支店では、正社員も他支店と兼務しているような社員が多く、誰ひとりとしてこれまでの経理を細かく把握している人はいません。

残された彼女のパソコンやデスクを頼りにルーティン業務を整理するところから始めたものの、次の月次決算まで時間もなく、もはやお手上げ状態でした。

困ったK支店の責任者は、ついに本社へ助けを求めます。当然のことながら、派遣社員1人に経理業務を任せていたことが上層部で問題となり、K支店の管理職は厳しく叱責されました。

間もなくして本社から発表された対策は、「新しい派遣社員が慣れるまでは、各支店の経理社員がフォローする」というもの。その場しのぎにしかならない対策に私たちは唖然としました。

しかし、上からの指示に従うしかないのが会社員。結局、各支店の経理担当者が交代でフォローに入ることになり、私も1週間ほど出張しました。

その間も自部署の経理業務は止まるはずもなく、並行して行わなければならなかったため、ただただ残業が増えて大変な思いをする羽目になったのです。

この事件で感じた課題

今回は、よく言われている属人化の課題がまさに浮き彫りになったエピソードをご紹介しました。

誰もが「本当は良くない」と気がついていたはずなのに、人員体制やその他の業務の忙しさにかこつけて真剣に対策をしなかった結果、起こるべくして起こった事件だといえるでしょう。

やはり最大の問題は、経理業務を派遣社員1人に任せていたことだと考えられます。K支店では長いこと派遣社員1人に経理を任せていたので、急な退職で大混乱を招いてしまいました。

今回に限っては無事でしたが、「1人しか経理の内情を知らない」という状態は不正などのリスクも発生しやすくなります。どんなに信頼していても対策を講じなければいけない課題であると痛感しました。

また、K支店の経理は担当派遣社員の個人ファイルなどアナログで管理されていたため、他の社員からは見えなかったことも問題として挙げられます。

出納帳や棚卸しデータは毎月社内SNSにアップされていたものの、経理システムは個人PCのデスクトップにあり、証憑書類なども個人で保管している状態でした。

そして、該当派遣社員の退職後、また新しい派遣社員を採用するだけという対策にも問題があったと感じます。新しい派遣社員を採用するだけではまた同じ事態に陥る恐れがあり、全く根本的な解決にはなっていないといえるでしょう。

クラウドサービスやBPOが救世主に!

では、当時どのような対策をすれば良かったのでしょうか。今だから進言できる解決策を考えてみたいと思います。

クラウドサービスの利用

クラウドサービスなら場所や端末を選ばずに誰でも利用できます。誰でも、いつでも経理の情報を確認できるので、業務の標準化につながり、属人化のリスクを軽減できるでしょう。

また、銀行口座やクレジットカード情報と自動連携できるサービスを活用すれば、経理初心者でもミスなく処理を行えるというメリットもあります。

BPOの活用

経理担当者の急な退職を受けて、K支店では「新しい派遣社員を採用するまで既存社員でなんとかする」という対処法を選択しました。しかし、ここでは経理業務のアウトソースが効果的だったのではないでしょうか。

例えば経費精算においては、領収書の受け取りから、経理の代わりに社内規程に則って申請の承認までを代行してくれるサービスも存在します。他支店から応援を要請することによる社員の負担、移動費・残業代などのコストを考えると、より効率的な方法だといえるでしょう。

こうしたBPOサービスを利用するにあたって、「クラウドサービスによる経理が軌道に乗るまで」といった短いスパンで柔軟に依頼できれば、現場にとってはさらに便利だと思います。

まとめ

経理の現場では、「今月の決算を終わらせる」など目先の忙しさに集中してしまい、起こるかどうかもわからないリスクへの対策はついつい後回しにされがちです。

K支店のケースでは、突然のリスクに備えて日頃から対策をしておくことがいかに重要かを実感しました。

「自分のところは大丈夫」と過信せず、経理の問題点を洗い出したり、いざという時に頼れるサービスを見つけておいたりすることが大切です。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。