大学生の情報格差をなくし、学生生活を豊かにする – Penmarkの立ち上げから苦悩、思い描くビジョンまで

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大学生の情報格差をなくし、学生生活を豊かにする|Penmarkの立ち上げから苦悩、思い描くビジョンまで

「大学生が1番初めに入れるアプリ」として強いポジションを築いているのが、履修管理アプリ「Penmark」です。代表取締役CEOの横山直明さんは、「情報格差をなくしたい」という思いでPenmarkを立ち上げました。メディアから出発したPenmarkは、今では累計ダウンロード数50万件を突破するアプリに成長。さらに、2020年12月には、前澤ファンドからシリーズAラウンド、2022年7月にはシリーズBラウンドの資金調達を実施しました。

今回は、横山さんがPenmark立ち上げに至った原体験から、資金調達までの知られざる苦労、さらにPenmarkの今後や実現したいビジョンまで幅広く伺いました。

株式会社ペンマーク
代表取締役CEO 横山 直明(よこやま なおあき)様

慶應義塾大学経済学部4年生。高校時代はフリーランスとして活動。大学進学後に、WEBメディア「Penmark News」を立ち上げる。2018年12月に株式会社ペンマークを設立し、履修管理アプリ「Penmark」をリリース。累計ダウンロード数は50万件を突破、対応大学数は4,000校以上。また、2020年12月に前澤ファンドからシリーズAラウンド、2022年7月にシリーズBラウンドの資金調達を実施。現在は、大学生活を幅広くサポートするさまざまなサービスを立ち上げている。

 

「情報格差をなくしたい」という思いから始まったPenmark

高校2年生の時からビジネスを経験

――まずは、横山さんの簡単な経歴を教えてください。
奈良県の田舎で育ちました。ずっと東京に出たいという思いがありましたね。大学生になったら上京して自立できるよう、ネットでいろいろ調べていました。そこで、フリーランスとして活動している方の存在を知り、話を聞いて初めてビジネスの世界を知ったのです。そこからさまざまなスキルを独学し、高校2年生の時からフリーランスとしてアフィリエイトやメディア運営、WEB制作、SNSマーケティングなどをやっていました。

「Penmark News」を作ったのは、大学3年生の時です。大学入学後、学内での情報格差に課題を感じ、慶應義塾大学内でのメディアを作ることにしました。そこから法人化し、アプリ「Penmark」をリリースして現在に至ります。

――横山さんは今も大学生なのですか?
そうです。現在25歳ですが、まだ大学生です。大学8年目の4年生ですね。学内にいる方がユーザーと接点を持つ機会が作りやすいですが、親からは早く卒業するよう急かされています(笑)。

情報格差を実感したという原体験から「Penmark News」立ち上げへ

――横山さんは「大学内の情報格差をなくしたい」という思いで学生団体を創立したそうですが、その思いが醸成されたきっかけは何だったのでしょう。
自身の経験がきっかけです。テニスサークルで活動していたのですが、大きいサークルではなかったため、授業や就活などの情報集めに苦労することがありました。実際、周りの学生を見てみても、情報が集まってくるコミュニティに入っている人はさまざまな面で有利で、逆にそうでない人は苦労している状態でした。最初にどのクラスやサークル・部活に入るかで、得られる情報がかなり変わってくると実感しましたね。「大学入学後のコミュニティ選定によって、下手したら人生も変わってしまう」という状況に大きな課題を感じました。

そこで、まずは慶應内で情報格差をなくせるよう、履修選択や授業・慶應生の情報などを集約して、配信するメディアを作ったのです。ちなみに、「Penmark」という名前は、「ペンは剣よりも強し」を表す慶應の校章から来ています。

――「Penmark News」や「Penmark」は、どれくらいの人数で運営しているのですか。
メディアは20〜30人ほどで運営していました。なかには、今も残って活動してくれているメンバーもいます。アプリの立ち上げは、私が中心となり、2〜3人ほどの開発チームを組んで取り組みました。コンセプト策定は私が担当し、それを開発チームで形にする、という体制です。資金調達後は、正社員を雇い、専門のプロダクトマネージャーやデザイナーの方にも参画していただいています。

――法人化を決めた理由は何だったのでしょうか。
出資を受けるためです。法人化したのは、アプリをリリースする4ヶ月ほど前でした。メディアの広告営業先の社長さんがペンマークの活動に可能性を見出してくださり、出資のご提案を頂いたので、開発資金として資金調達を実施しました。

――出資を受けたということは、当時からビジネスモデルが確立していたのでしょうか?
実は、その時点では今のビジネスモデルは確立していませんでした。学生団体時代の活動実績や、開発予定のアプリのコンセプトなどの話し合いを踏まえ、出資のご決断をしていただきました。

情報共有の場を提供するためにアプリをリリース

――その後、時間割アプリ「Penmark」のリリースに至った経緯を教えてください。
メディアの立ち上げから半年ほど経った時、自分たちで情報を一方的に発信することに限界を感じました。自分たちが発信をやめたら情報が届かなくなってしまう、という体制から、学生たちが情報を共有しあえる体制に変更しようと決めました。そこで、メディア立ち上げから1年後に、学生が参加して情報をシェアできるプラットフォームとして、アプリをリリースしたのです。

学生たちが情報を共有しあえる体制を作るために実装したのが、「授業内トーク」でした。一つひとつの授業ごとに課題や試験の情報を共有できる、という機能です。

――大学生にとって非常に便利な機能ですね!実際にPenmarkで解決したと実感した課題や、ユーザーからの声で印象的だったものはありますか。
第一に、当時の自分を救ってくれるようなアプリだと、個人的には思っています。レビューで嬉しい声をもらうことも多いですね。Apple Storeのレビューでは、例えば「簡単操作でログインや時間割作成ができ、見やすく分かりやすいのがとても良いと感じました」であったり「無料で時間割 、 課題の管理が出来るので感謝でしかありません」といった声もいただいています。また、授業が始まった直後や試験前に、トークルームが活発化しているところを見ると、ユーザーに活用してもらっていることを実感します。

1つ、印象的なエピソードがあります。慶應の教室がマップでわかる機能を作ったのですが、それを私が構内で使っていた時、たまたま同じ機能を使っている新入生がいました。その人から、「このアプリめっちゃ便利ですよ!」と声をかけられたのです。ユーザーからの嬉しい声を直接聞けた瞬間でしたね。
インタビューの様子1

前澤ファンドからの資金調達までの苦労と、Penmarkが描く今後

コロナで大打撃を受けた2020年

――ペンマーク様は、前澤ファンドからシリーズA・Bラウンドの資金調達を実施したとのことですね。資金調達に至るまでの経緯や苦労したエピソードを教えていただきたいです。
資金調達自体は、プレシード・シード・シリーズA・シリーズBと4段階で行っています。

前澤ファンドからの資金調達には、2020年2月の応募から2020年12月の契約締結まで、10ヶ月ほどかかりました。

実は、審査を通過して資金調達を受けること自体には、当初そこまで期待していませんでした。「前澤ファンドからフィードバックを貰えたらラッキー」くらいの心持ちでしたね。実際、一次審査のプレゼン資料は、締め切り日にシード調達で利用した資料をそのまま提出したくらいです。それが運よくボーダーギリギリで通過してくれました。

ただ、コロナで状況が一転しました。当時、シードで手に入れた資金をもとに、並行して積極的にプロモーションを行っていた時で、ちょうど、Penmarkが慶應から全国100大学に拡大したタイミングです。そこでコロナが直撃し、対面授業がなくなったことで、プロモーションがうまくいきませんでした。シード期に立てた事業計画は、全てパーになってしまいました。

その影響で、当初計画していたシリーズAの計画から大きく下方修正してでも、とにかく資金調達をする必要性に迫られました。VCを30社くらい回りましたが、十分な金額の調達はできませんでしたね。会社が潰れるかもしれない、という危機に追い込まれたのです。

――側から見ると順風満帆そのものですが、苦労があったんですね。同時期に前澤ファンドの選考があったということですか?
その時期に、前澤ファンドの三次審査がありました。三次審査では、前澤さんと実際に面談を行うのですが、4回ほど面談が組まれました。面談の度に課題が課されるのですが、ただでさえ「会社が潰れるかもしれない」という精神状態だったので、その数週間を乗り越えたことが起業してから1番のハードシングスでしたね。

前澤ファンドに認められた、自身の魅力とサービスの強み

――その中でも資金調達に成功した、ということは、やはりペンマーク様や横山さん自身に魅力や強みがあると思います。ご自身やサービスの強みをどのように捉えていますか?
前澤ファンドからの出資を受けたなかでは、私が最年少でした。実は、シード期にも9人から出資を受けたのですが、実際に会ったのは8人なんですよね。1人には断られてしまったのですが、ある1人が2人の投資家を紹介してくれたのです。慶應生向けにリリースしたアプリが開始1ヶ月で40%のシェアを獲得し、それを全国に横展開していくフェーズだったので、勢いがある若手として期待していただいた部分があったのかなと思います。

また、Penmarkが時間割機能を売りにしている点も大きいと思います。新入生が、入学後1番初めに入れるアプリは時間割アプリです。特にプロモーションをかけなくても、毎年20万人以上の新入生がペンマークが運営する時間割アプリをダウンロードしてくれています。「大学生が1番初めに入れるアプリ」という地位をある程度確立できている点は、強みだと感じています。

大学生がみんな使う、という点は、前澤ファンドからも評価されました。大学卒業後のライフタイムまでサービスを拡充すれば、ずっと使ってもらえるアプリ・サービスを構築できるのです。

――確かに、その点は大きな強みですね!アプリを作った時からそこまで見通していたのですか?
アプリを作った時は、ここまでの展開は想定していませんでした。自分に必要なアプリを作りたい、という思いだけでしたね。

ただ、シード期の資金調達の際に、すでに今のビジネスモデルの原型を組んでいました。強気の調達を行いたかったので、とにかくリサーチを重ね、「大学以降も使える」という点をアピールできるビジネスモデルを組みました。当時は「日本版のFacebookを作る!」と言っていましたね(笑)。

インタビューの様子2

大学生活を幅広くサポートする存在でありたい

――そこまで見通していたとは流石です。今も、「Facebookを作る」という思いは変わらないのですか?
実は、現在は「IPOまでは対象とするライフタイムを伸ばさない」と言い切っており、大学生協のように、大学生活に幅広く寄り添う存在を目指しています。

大学生協は、学食のほかに教科書やパソコン・スーツなどの物品の販売や、旅行・教習所といったサービスの紹介、共済など、多様なサービスを展開しています。売上の75%は学食以外が占めているのです。

しかし、コロナの影響で学生の購買活動がオンラインに流れ、生協の売上は外部に流出しています。そこで、Penmarkがその流出分の受け皿になろうとしているのです。具体的には、「Penmark賃貸」や「Penmarkバイト」などのポータルサイトを、事業会社と連携してリリースし、アプリと連動させることを想定しています。例えば、学生の空きコマに単発バイトの案件を紹介したり、法学部の新入生に司法試験やロースクールの情報を提供したり、などです。また、時間割から必要な教科書をワンタップで購入できるサービスも検討しています。学生のデータを駆使して、大学生協が取り扱っている領域を代替していきたいですね。

大学生協は、能動的にお店に来た学生にしかサービスを提供できません。一方、Penmarkは受動的な学生にもサービスをレコメンドできます。Penmarkには、ターゲティング広告の配信に強みがあります。大学生協と共存しながら、Penmarkならではの強みを発揮して、大学生活に寄り添うサービスへと拡大させていきたいですね。

ライフスタイルの変化に対応し、学生の生活を豊かにするサービスへ

――Penmarkの今後について教えていただきたいです。
まずは、前澤ファンドからの期待に応えたいですね。10億円近く出資していただき、大きな期待をかけてもらっています。現在は、IPOを見据えて動いており、期待に応えられる結果を出すために奮闘中です。

また、コロナで大学生のライフスタイルが変化していることも見逃せません。例えば、今までの大学生といえばサークルや飲み会が定番でしたが、最近では将来を考えて、1年生からインターンをやる学生も増えています。また、教科書をECサイトで購入する学生も多いです。このように、ライフスタイルが変化し、オンラインとオフラインが共存していくと考えられるなかで、Penmarkがオンライン側のポジションとして定着できるよう、サービスを拡充していきたいですね。

――最後に、Penmarkでどのような世界を実現したいですか。
Penmarkを通じて、学生がより多くの人に触れられる機会を提供したいです。情報に触れるきっかけは、人との出会いです。しかし、大学生活で交流できる人数には限界があります。人生の選択肢を広げてくれる存在に出会えるかどうかは、運次第です。

Penmarkで、1,000人、2,000人と、より多くの人と交流できる機会を提供したり、自身の刺激になるような学生を紹介したりできれば、学生の一生を豊かにできると信じています。将来、学生生活を振り返った時に、学生生活で下した選択に後悔しないでもらいたいですね。また、長期的には卒業後のライフスタイルまでサポートしていきたいと思っています。

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