税理士の枠を超えて挑戦を続ける税理士法人ネクスト・プラスが捉える事業承継問題と、今後の展望について

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税理士の枠を超えて挑戦を続ける税理士法人ネクスト・プラスが捉える事業承継問題と、今後の展望について

税理士法人ネクスト・プラスは、税理士の枠に囚われない多様な事業を展開し、長崎市・諫早市を拠点に地域密着型で支援を行っています。代表税理士の東大智さんは、長崎県諫早市出身。自身も父の税理士事務所を承継した経験を活かし、事業承継問題に取り組んでいます。オーナーのやりたいことを後押しするスタイルが持ち味で、これまでに20社以上の事業承継に携わってきました。また、素早い経営判断とアンテナの広さで、保育園事業やDX支援事業など幅広い事業を手がけています。

今回は、東さんが考える承継問題の現状と未来や、保育園・DX支援事業の展開に至った背景、さらに東さんの今後の展望について幅広く伺いました。


税理士法人ネクスト・プラス
代表税理士 東 大智(あずま だいち)様

税理士。長崎県諫早市出身。横浜国立大学大学院卒業、2004年に税理士登録した後、2011年に父である東 邦義氏の東邦義税理士事務所および有限会社アズマ綜合ビジネスに入社。2017年には株式会社ネクスト・プラスへ社名変更し、代表取締役に就任。そして2019年、税理士事務所を承継し税理士法人ネクスト・プラスを設立。「お客様の未来に安心を届ける」を理念に掲げ、2020年には自身の経験を活かして書籍も発行した。現在は税理士3名と15名以上のスタッフを擁している。

著書:跡取り社長だからこそできる事業承継“創業”-承継でかなえるあなたの夢(ブックトリップ)

 

後継者問題が深刻化する日本で、日本社会を活発化させるためには

廃業を阻止するよりも、起業の促進を重視すべき

――2025年までに60万社が黒字廃業すると言われています。東さんは、日本の中小企業が抱える承継問題の現状と未来をどのように捉えていますか。

人口も経営者も減っていく中で、後継者不在による廃業は避けられません。私が支援させていただいているお客様の中でも、年に5社ほど廃業しているのが現状です。少なくとも、今後10年は仕方がないという現状認識を持つべきだと思います。

現在、国をあげて後継者問題に注力していますが、根本的な解決にはならないでしょう。また、金銭的な報酬を得ることにそこまでのこだわりがない方や、廃業したいと思っている方も実はいらっしゃるのです。廃業を前向きに考えている方に、専門家が企業価値や売却益などの余計な情報を与え、ストレスのかかるM&Aを無理に提案してしまう場面が見受けられます。その結果、廃業が遅れてしまい、自分らしい余生を送る期間が短くなってしまうこともあるのです。オーナーは、会社の経営者である以上にひとりの人間です。専門家は、企業価値だけでなく、オーナーの価値観にもっと目を向けるべきなのではないでしょうか。

現在の日本では、黒字廃業がさも悪いことであり、後継者がいないなら誰かに売らなければならないかのような風潮になっています。しかし、私は黒字廃業も1つの選択肢であると示すべきだと思います。重要なのは、オーナーがストレスから解放されて自分らしい人生を送ることではないでしょうか。

そして、廃業を止めることより大切なのは、「今後の創業・起業を増やすこと」だと思います。現在は「総サラリーマン時代」です。それは、学校教育が経営者ではなくサラリーマンになることを前提としているからです。職業講話のような場を通して経営者としての道があることを示し、起業への思いを醸成させるべきだと思います。

いかに黒字廃業を減らすかより、いかに起業しやすくするかを日本全体が重視することで、健全な発展につながるでしょう。

オーナーが自社の魅力を後継者にアピールし、後継者育成に注力する

――少子高齢化で後継者問題がよりいっそう深刻化する日本において、各企業がとるべき施策について教えてください。

少子高齢化による経済の縮小は避けられません。人材の減少と商圏の縮小を受け入れ、従来の売上を構成する商材だけでなく、自社の困りごとの解決をきっかけとした他業種展開を考えるべきです。

また、後継者に事業を譲ることを検討している場合、後継者の育成が一番の課題です。事業承継したものの、いつまでも前オーナーが株を保有して経営に関わっているようでは、後継者が育ちません。後継者自身も自分の思うような経営ができなくなってしまいます。「スパッと辞める」ことが大切なのではないでしょうか。世間的には、前オーナーも3〜5年は経営に関与すべきだと言われていますが、それで揉める例をいくつも見てきました。会社内部のトラブルは経営の大きな妨げになります。

後継者が見つかっていない場合は、オーナー自らが従業員に企業の魅力を発信していく必要があります。企業の詳細な財務状況や自身の年収などを従業員に伝えていないオーナーは多いです。商品をPRする営業と同様に、オーナーも自社の魅力を従業員にPRすることが大切です。代表になることにはもちろんリスクがあります。リスクとともに魅力を伝え、従業員に選んでもらう。そして、代表を譲ったら自身はすぐに身を引くことを伝える。そうすることで、従業員に事業を後継する魅力を感じてもらいやすくなるでしょう。

オーナーの思いを伝える場を提供し、最適な承継のあり方を目指す

――事業承継について、現在ネクスト・プラス様が行っている支援内容を具体的に教えてください。

税理士法人として、もちろん事業承継税制の適用や使用スキームの検討など税務的な支援を行っています。それ以外に、親族内承継の場合は親子で語り合う場を提供するようにしています。先ほども申し上げたように、創業の背景やオーナーが思い描く今後のビジョンなど、会社に関する詳細な情報を会社内部に伝えていないオーナーは多いです。1対1で話すのが難しい場合も多いので、私たちが第三者として立ち会い、進むべき方向を決めていくようにしています。

従業員承継の場合は、承継相手が親族ではないため、金銭の発生がポイントになります。承継する従業員にいかに金銭的負担をかけないかを重視し、退職金や株式・役員給与をどうするべきかなどを慎重に相談したうえで、事業承継計画書を作成します。

本当にやりたいことを後押しする税理士でありたい

――どのような形で承継問題にアプローチしていきたいか、今後のビジョンや展開したいサービスなどがあれば教えてください。

もちろん、事業承継税制のような節税手段は多くあります。しかし、承継問題の本質は税務面ではありません。事業承継税制の目的は、経営を次の代にバトンタッチすることを促進することです。若い世代に経営を託さないと、経済の発展にはつながりません。そうした本質を前提に、承継問題にアプローチしていきたいです。

後継者候補がいる場合、現オーナーが潔く引退し、株式を手放すことがスムーズです。そうした承継のあり方を提案していきたいですね。その分後継者の覚悟が問われますが、それは経営者として大きく成長するチャンスでもあります。

そして、跡取りとなった社長をサポートするのが私たちの役割です。経営について悩んでいる後継者に対しては、その人が本当にやりたいことを後押しします。税理士は、士業という職業柄、何事も慎重に進めるよう助言する人が多いように思います。また、経費になる・ならないでやることを判断するよう助言する人も多いです。そうではなく、その人が思い描く理想の経営を一緒に実現していきたいですね。

相談に訪れる人の中には、頭の中にすでに答えがあり、それを後押しして欲しいという場合も多いです。そうした人の背中を押すことで、「東さんと話したら元気になった」と言ってくれる人を増やしていきたいですね。

税務・会計支援を超えた多岐にわたる事業展開

身近な困りごとから保育園事業に着手

――企業主導型保育園「みらいの保育園」を2018年に開設されていますが、どのような背景で開設に至ったのでしょうか。

当時、女性従業員2名が、たまたま同時期に育休復帰の予定でした。しかし、2名とも子供を認可保育園に入れることができなかったのです。当時の諫早市では「待機児童ゼロ」が謳われていましたが、そうではない現実を目の当たりにしました。

また、当時は運良く「企業主導型保育事業」の制度が始まったばかりでした。企業が保育園を作れるこの制度を使えば、自社で保育園を作って従業員の子供を預かることができると考え、開設に至りました。

2017年の3月に企業主導型保育事業への参入を決めてから、9月には物件を購入して工事を始め、2018年の3月に開園しました。

素早い経営判断を実現するのは「ビジネスに本当に必要か」という視点

――東様は、アイデアを思いついてから行動に移すのが非常に早いという印象を受けました。その経営判断のスピード感はどこからくるのでしょう。

実行スピードは私の強みです。やりたいことが見つかったら、目の前のコスト負担と将来的なコスト負担を勘案し、参入するかをすぐ決定・即行動するようにしています。また、着手と同様に撤退も早いと思います。撤退することについて「もったいない」と言われることが多いですが、私はビジネスで不要なものはすぐに捨てるべきだと考えています。事業にとって有益性があるか否かのみで判断するようにしています。

地域にDXを学ぶ場を作りたい|DX学校加盟の背景

――DX学校諫早校について、開校の背景を教えてください。

当社は、クラウド化やオンライン会議など、IT対応に比較的早くから取り組んできました。それは、代表である私のトップダウンの判断によるものです。しかし、それでは不十分であり、従業員からのボトムアップの提案も必要だと考えていました。そのためには、従業員がITやDXについて知る必要がありますが、私も含めて従業員のほとんどがきちんと学んだことがなく、生活や仕事上の経験で得た範囲の知識しかない状態でした。

その時、たまたまFacebookにDX学校のフランチャイズ加盟募集広告が出てきたのです。また、前職がSEでITスキルがある従業員が、以前「自分のスキルを活かして中小企業を助けたい、長崎の企業の生産性を上げたい」と言っていたのを思い出しました。

広告を見てから1ヶ月後にはDX学校への加盟を決定し、2021年12月に運営会社である「株式会社DXコネクト長崎」を設立しました。その後、先程の従業員が講師養成プログラムに参加して講師の資格を取得し、2022年4月にDX学校諫早校を開校しました。

地元企業ならではのサポートで、DXに対応できる体制作りを支援

――DX学校諫早校で行っている具体的な支援内容と強みを教えて教えてください。

DX学校諫早校の支援内容は、各企業への個別のIT・DX支援がメインではありません。各企業にIT担当者を作り、その人を通じてIT・DXの取り組みを進め、企業の生産性を上げていくことがメインです。とにかく生徒さんにIT・DXについて学んでもらい、企業内での自立走行を促進することを目的にしています。

単なるDX支援では、企業自身ができるようにはなりません。自分たちでできるようになり、企業としての成長の喜びを感じて欲しいです。

現在、月に1回無料セミナーを開催中しています。また、開校3カ月で生徒4名が学んでいる状況です。

DX学校諫早校の強みは地域で唯一無二の、IT・DXについて学べる場所であることです。また、母体が税理士法人なので、経理・会計周りのIT化に強いという特徴もあります。

さらに、地方でDXというと、東京から来た知らない会社が推進している、と思われ警戒されることも多いですが、長崎や諫早に密着して事業を展開している私たちが運営することで、「地元のあの税理士法人がやっているなら」と安心感を持ってもらいやすいと感じます。

DX支援事業は、私たちグループにもメリットがあります。誰もやっていない事業なので、興味関心を持ってもらいやすく、グループの広告にも活用できますね。

国をあげて共同事業・共同経営を推進していくことがポイント

――日本の企業のうち99.7%を占めるのが中小企業です。日本を支えてきた中小企業が今後も活躍し続けるためには、どのような取り組みを強化していくべきでしょうか。

地方の中小企業は、1企業1オーナーがほとんどです。そのため、企業の将来はそのオーナー1人の能力や財力の範疇に限定されてしまいます。その範囲を超えて地域の課題を解決するためには、共同事業・共同経営でレバレッジを効かせることが大切です。しかし、経験がなくやり方がわからない中小企業や、自由を得るために独立起業したのに制約がかかってしまう、と抵抗感がある場合があります。

そのため、共同事業・共同経営の仕組みづくりを地域ごとに推進することが大切だと考えます。地域ごとに実証実験を繰り返して先進事例を作り、経営者たちの叡智や人脈を結集させ、経営資本を最大限活用する方法を考えていく必要があります。共同事業・共同経営を促進することで、承継問題の解決にもつながるでしょう。

「総サラリーマン時代」から「総起業家時代」へ

――ネクスト・プラス様は、今後長崎県、ひいては日本をどのようにしていきたいですか。

「総サラリーマン時代」から「総起業家時代」に変えていきたいです。起業というと、サラリーマンとして職歴を積んでからやるもの、というイメージがあります。その前提を取っ払い、ファーストキャリアとして経営者やフリーランスを選択できる日本にしていきたいです。

そのためには、サラリーマンや公務員よりも経営者という道を選択したい、と思わせるような体験・経験を提供する必要があります。そして、子供の選択に対して親も「起業やフリーランスの方が良いよね」と言えるような環境を作るべきです。

自治体は補助金や助成金の面から起業を支援していますが、事業を公募してその都度採択するという形では、補助金がなくなったら事業をやめてしまう場合があります。また、自治体ごとに起業支援の有無に差があることも課題です。

私は、起業家こそが今後の地方・日本を作り、導いていく人材だと信じています。そうした存在を増やすためにも、起業家を志すマインドを情勢し、起業しやすくなる環境を作っていきたいですね。

税理士の枠にとどまらず、やりたいこと・必要なことをやる

――今後どのような事業に参入していきたいですか。

中長期的な事業戦略があるわけではありません。その時の社会情勢に応じて、自分がやりたい、やるべきだ、と思ったことをやりたいです。保育園事業もDX学校も、もともと考えていたわけではありません。必要性を感じたタイミングで、情報や広告を見たことがきっかけで始めた事業です。中小企業は、あらかじめ考えた戦略に囚われることなく、その時に必要なことを素早く判断する必要があると思います。

もちろん、やりたいことをやるなら成果を出す必要がありますし、ダメならすぐにダメだと言える環境が必要です。税理士の型にはまらず、臨機応変にやりたいことを実行し、やりたダメならすぐに撤退する。その機動力・スピード力で勝負していきたいですね。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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