IPO準備企業のBPO活用術

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2021年は新規上場(IPO)をした会社は136社とのことで、2年連続100社を超える実績となったようです。136社のうち、マザーズ上場企業は93社と全体の7割弱をマザーズが占めていました。

上場するにあたっては、経理部門は各種資料の作成や監査法人対応等が求められることになり、多忙を極めることが多いです。

今回は、IPOをするにあたって経理のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用しているケースについてお話をしたいと思います。

とにかく時間が欲しい

会社にとって上場する機会というのは頻繁にあるものではありません。もちろん短期的に市場替えを行う会社であれば、数年内に複数回の上場にまつわる業務を実施することがあり得ますが、通常は1度実施するとすぐに実施することはないので社内に経験者があまりいないケースが圧倒的に多いです。

そのため、IPOを目指すとなると、経理部門のメンバーでもIPO準備のためにはかなりの時間を要することになります。そこで、時間を捻出するために経理業務をBPOしたいというリクエストも多くいただきます。

内部統制もはかりながらのBPO

上場するのだから自社で経理業務は完結しないといけない、と考える方もいると思いますが、最近の傾向として、完全に外部に丸投げして会社側が全く中身を把握していないケースは別として、外部のリソースを使いながらIPOを実現しているケースは増えているようです。

会社が中身を全く理解していない、あるいはBPOベンダーが実施した作業内容をチェックしていないとなると、内部統制に不備があるといわざるを得ないことになります。

そこで、一般的には作業面はBPOベンダーにアウトソースして、中身のチェックを会社側が行うという建付けにして内部統制が有効に機能するように図ります。

どこまでBPOしているのか

IPOを志向する会社は経理業務をどの範囲まで依頼しているのでしょうか。

依頼している範囲は広範囲にわたっているという印象があります。一番多いのは、経費の精算業務等の日常業務ですが、決算業務、開示業務などまで依頼をしているケースもあります。

基本的な依頼の仕方は、作業自体をBPOするものの、出来上がった成果物については発注した企業側でチェックを適切に行うという方法です。

適切にチェックが出来てさえいれば、作業自体を社内のメンバーが行っていなくとも、会社が成果物について責任を持つことができるので、上場審査に耐えることは可能となっています。

ただし、会社側が中身を把握していなかったり、チェック機能を果たしていないようであれば、経理機能が会社にないと判断されて、上場審査において問題視される可能性はありますので、内部統制を機能させたうえでBPOするということは忘れないようにしましょう。

コア業務への注力は大きな効果

経理のBPO業務を適切に行うことによる最大の効果は、経理メンバーが本来行うべきコア業務であるIPO準備業務に注力できることだと思います。

IPOを決めた以上は、短期的なゴールの一つは上場を果たすこととなります。そのための期間として、2~3年程度で集中して行うことが通常なので、その間にどれくらいコア業務に注力することができるのかが重要となります。

日常業務が忙しくて肝心なIPO準備業務がおろそかになり、上場が延期になってしまったなんて言うことになったら本末転倒ですし、経営者から大目玉を食らうことになってしまうかもしれません。

あるいは、日常業務もこなしながらIPO準備も並行して行うために過重な労働が続いたら体を壊してしまうかもしれません。

たまにあるのが、そのような環境で業務を実施する人がいなくなってしまったのでBPOをしてくれないかという依頼ですが、なかなかそのような状態からリカバリーするのは大変なので、当初から余裕をもってBPOをしておく方がIPOを達成するには有益だなと思う現場もあります。

上場後も継続利用しているケースも

今まではIPOをするまでの期間に経理のBPOを活用する話をしてきましたが、実際多いのはIPO後も引き続きBPOをし続けるパターンです。IPOをしたからと言って経理部門が暇になるわけではありません。

上場後は、企業規模拡大のためにM&Aをすることもあるでしょうし、投資家に興味を持ってもらうためにIRにも力を入れなければならず、その際に経理部門のメンバーにも多くの役割があります。

さらには、資金調達のための手法の多様化、従業員向けのインセンティブプランの策定等実施すべきことは山のようにあるといっても過言ではありません。

そこで、上場後も日常業務をはじめとしたルーティーン業務はBPOをし続けて、経理部門のメンバーがコア業務に割ける時間を確保するようにするのです。実際、そのような時間とお金の使い方をしている会社が成長し続けているように感じます。

これからIPOを目指す会社、すでにIPO済みでこれからより高みを目指す会社等ステージは様々かと思いますが、そのような会社の経理部門の方もうまくBPOを活用して、会社の目指すべき方向に一歩でも近づくようになればと願っております。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:中尾 篤史(公認会計士/税理士)

CSアカウンティング株式会社 /代表取締役社長 著書に『DX時代の経理部門の働き方改革のススメ』、『瞬殺!法人税申告書の見方』(税務研究会出版局)、 『正確な決算を早くラクに実現する経理の技30』、 『BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる』(共著)、 『対話式で気がついたら決算書が作れるようになる本』(共著)、 『経理・財務お仕事マニュアル入門編』(以上、税務経理協会)、 『たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる』(宝島社)、 『経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)、 『明快図解 節約法人税のしくみ』(共著、千舷社)など多数。

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