田村夕美子の『経理塾』第5回:組織図の正しい読み方を問う

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経理としてスキルアップし、社内での評価を上げるためにはどうすれば良いのか?一番大切なのは「本質に対し向き合いながら、自身に備わっている“個”の潜在能力を引き出し、具体的に行動してみること」と言う、経理向けの研修やセミナーを行っている田村夕美子さんのBizpedia読者に向けた経理塾、第5回をお届けします!

田村夕美子の『経理塾』第4回:経理部内の上司・部下について・・・あなたの見解は適切なのか?

これまでの経理の組織体制を見直す!

ほとんどの企業に存在する組織図。主流となるカタチは、最上部にトップが君臨し、その下にセクションごとの長、そして下部にはスタッフらが配置されているピラミッド型ではないでしょうか。このような組織図が刷り込まれた企業内の経理部では、部長や課長職を担う人が部下に対して、自身の価値観のみで部下をコントロールしようとする例も少なくありません。

昨今では、このところ組織の在り方も様変わりし、個々の意思決定で経営活動が進められるようなフラット型も見受けられるようになりましたが、カタチはどうあれ、そもそも組織図とは経営活動をスムースに進めるため、機能を表しているに過ぎないのは言うまでもないでしょう。

世界情勢や経済動向が否応なしに自社に影響を及ぼす中、経理部内のマネージャーらが、これまでの手法に何ら疑問を持つことなく、業務のかじ取りを進めるのであれば、経理管理者の集合体に歪が生じ、経営活動が脅かされることもあるのではないでしょうか。

今回は経理部内の組織の在り方見直し、機能を十分に果たすべき方法について再考していきます。

CASE5:上場準備チーム発足!前途洋々に見えたものの、ウラ事情は・・・?

(今回の塾生→サービス業 経理部 企画リーダーAさん 女性40代)

「わが社もいよいよ上場することになり、経理部内で“上場準備チーム”が発足しました。
 組織図上にも本チームが加わり、気持ちを引き締めて当たるところなのでしょうが、チーム内の人選が納得いかないのです。ここだけの話ですよ。この度、中途入社の人をチームに入れるらしいのですが、どうやら上場企業での勤務や上場準備の経験もない人を採用する計画らしいのです。上司は、“あなたより知識のある人では、やり辛いでしょう”と言っていましたが、どうも納得できません。経験者の方が加わった方が生産性も上がるはずなのに。まあ、私の意見など通らないでしょうが・・・」

当事者として問題意識→解決策を探るべき!

人材を募集する際、求人サイト等には“即戦力を求む!”と謳っていながらも、実際の採用の場面では、知識経験が豊富な人より、現時点で“使いやすい人”を採用する傾向が強いのは否めないのではないでしょうか。

その背景には、現在勤務している社員らのレベルやパワーバランス等を考慮しながらの気遣い、そして一口で言えば、独特の企業文化が影響しているでしょう。こうした実情について一概には否定できないでしょうが、今回の塾生Aさんのように、上場するためのチームなのであれば、今後を見据え、それ相当の人材の集合体が機能しなければ実現など困難なはずです。

勿論、Aさん持ち前のマネジメント能力が発揮され、上場が成されたとしても、これまでの悪しき企業文化が蔓延していれば、人材が活きた経営が成されず、市場で自社が登壇しても、投資家らから指示が得られず、資金調達についても危うい危険性があります。

Aさんは自身が所属する経理部について、「私の意見など通らないでしょうが・・・」と諦めモードの様子が見受けられますが、今後は単に経理部内の一部員を意識しながら職務をこなすよりも、未来のステークホルダーからの視点を想定し、当事者意識を持って職務を進める必要があるでしょう。

このような実情が隠れている経理部内で、上場準備チームがスタートを切るのは、危ういかもしれません。今後、どうするべきか、具体的な実践編を見ていきましょう。いつものように塾生Aさんのケースをもとに、記述していきますが、今のあなたにとっても、今後成すべきヒントがあるかもしれません。

実践編:これまでの経理部内で人材を発掘する!

経理部員らの成果を振り返る

塾生Aさんは、「ここだけの話・・・」と実情を打ち明けてくれましたが、知識経験のない新人をチームに加えることで、Aさんが部下として使いやすくなり、スムースに“上場”に行き着くことなど、誰しも思わないはずです。Aさんは今後、上場準備チームのリーダーになるのですから、人選についても受け身の姿勢では、NGのはずです。

まずは、Aさんが所属する経理部内の部下・後輩に焦点を絞り、推薦に値する人材を発掘することを視野に入れる必要があるでしょう。上層部の視点よりも現場を見てきたAさんならではの見解で、相応しい人を検討してはいかがでしょうか。具体的な方法としては、経理部員らのこれまでの成果を振り返ってみることをお勧めします。

たとえば、ルーティン業務に黙々と当たっていたが、さらに効率的な策を発案して実現させたり、法令集を読み解き、自社で活用できる税法を適用させたり、思い返せば上司らが気づかない場面で、活躍していた人材がいるのではないでしょうか?

そして、そのような部員らを上場準備チームの中に加えるとしたら、どこでその経験を発揮できるのか模索し、ある程度のプランを仕上げ、実現に向けて上司に対して説得することも可能なはずです。

また、本項をお読みのあなたが身を置いている経理部の実態が、会社組織内においてキチンと機能しているのか否か、自問自動してみることをお勧めします。

たとえば、経理規定がかなり以前のもので見直しがされていないために、各部署の経費申請等のシステムにも悪影響が及んでいる、あるいは、しかるべき情報が経理部スタッフ全員に浸透していないため、定型業務にも支障が生ずることがあるなど、気づいた善処策を模索するべきです。方策は現況をレポートにして、上層部に上申する。あるいは、同僚らとタッグを組んで、現場サイドから具体案を募って、実行せざるを得ないところまで完成させるなど、諸々あるでしょう。

一歩でも前進することで、経営管理部隊である経理部内の機能改善が図られ、企業の繁栄にも繋がるはずなのです。

“ウエ”=“未来”と捉える

次に根本的な組織図の見方を少し噛み砕いて考えてみましょう。もし、ピラミッド型の組織で経理部であれば、一番上に経理部長なり、経営陣の側近の人が位置しているでしょう。冒頭でも述べたように、組織図上の“ウエ”に位置する人は自身の価値観のみで部下をコントロールすることなど、もはやあり得ないことだと、受け止めることです。上司は“ウエの人”ではなく、経理部機能をしっかりと果たす責任者に過ぎないと捉える必要があるでしょう。

経営管理者の総合部隊として、経理部が企業の未来を見据えた経営活動の支援を進めていこうとするのであれば、部長以下の人材の能力を確実に活かした職務の遂行が不可欠です。よって、時には世代交代などにより、役職者よりも能力の高い人材が現れることも、十分にあり得るはずで、彼ら彼女らの声をすぐい上げながら業務を遂行するマネジメントが主流となるべきではないでしょうか。

今回の塾生のAさんであれば、現在は上場準備チームを率いるリーダーに抜擢されましたが、Aさんはその“チーム”のリーダーをしっかり全うする役目を担う人材に過ぎないのです。

それであれば、自身がやりやすい方法、上司が好む方法よりも、実際の“ウエ”を見て職務を全うする必要があるでしょう。“ウエ”=“未来”と捉え、自社が上場した際の在り方などを問い、チームリーダーとして、時には直属の上司を超えて、更に上層部から経営方針について具体的なところをヒアリングしながら、自社の企業価値を高める策を検討するなど、本質的な職務を遂行する必要があるのではないでしょうか。

本項をお読みの方の立場は様々でしょうが、本当の意味での“ウエ”を見つめ、現在の職務の方向性を振り返り、軌道修正を図ってはいかがでしょうか。
(下図参照)

まとめ

日々の業務に追われてしまうと、組織機能について視野に入れながら仕事を進めることについて、どうしても盲目的になってしまいがちですが、経営管理者部隊の経理部内が旧態依然の体制では、企業全体に悪しき影響が及ぶかもしれません。一スタッフの潜在能力が発揮できるところか否か、まずは客観視してみましょう。

筆者は、経理部員向けのセミナー、社内研修で東奔西走していますが、普段は大人しく黙々と経理実務をこなしているような人が、講義終了後には、自社のためにどのように貢献度の高い職務を進めるべきか、しっかりしたプランを発表することなど、珍しくないのです。

さて、あなたが所属する経理部隊は、部員一人一人が生き生きと未来を見据えながら、働いている組織環境でしょうか?まずは、振り返ってはいかがでしょう。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント&ビジネス作家として、セミナーや執筆活動に従事している。著書『できる経理の仕事のコツ』(日本実業出版社)、近著に『税理士のためのコミュニケーション術』(第一法規)。『速報税理』にて「顧問先のリアル事情」、ダイヤモンド・オンラインにて「未来に続く経理道」、新潟日報おとなプラスにて「晴天になーれ」など、多数連載中。



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