田村夕美子の『経理塾』第4回:経理部内の上司・部下について・・・あなたの見解は適切なのか?

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経理としてスキルアップし、社内での評価を上げるためにはどうすれば良いのか?一番大切なのは「本質に対し向き合いながら、自身に備わっている“個”の潜在能力を引き出し、具体的に行動してみること」と言うのは、経理向けの研修やセミナーを行っている田村夕美子さん。Bizpedia読者に向けた田村夕美子さんの経理塾、第4回です!

前回の記事:田村夕美子の『経理塾』第3回:経営管理者としての本質に沿った経理スタッフの評価策

人間関係の問題は、“バイアス”が原因?

営業や企画開発といった外部の人と接する機会が多い部署と比べ、デスクワーク中心で黙々と仕事をこなすといったイメージが持たれる経理部員らは、個々の性格についても、“おとなしい。”“意見を口にしない。”と思われがちです。

筆者がセミナーや講演活動をしていく中で、よく見聞きされるのは、“経理の世界の人は、数字には強いが、話をすることが苦手”。“あまり人前に出たがらない”といった意見です。

もちろん、そのようなステレオタイプの印象が当てはまる人もいるのでしょうが、皆さんも既にご承知のとおり、経理の世界にいる人はそれぞれのパーソナリティーを持ち合わせているはずです。このような“人”に対するバイアスは、案外、生産性向上の足かせにもなり得るケースもあるものです。

さて、あなたの場合はいかがでしょうか?振り返りながら、本項を読み進めていただきたいのです。

CASE4:意思統一を図りたがる上司に対し、経理部員は何も言えず・・・

(今回の塾生→中堅商事会社 経理部 副主任Aさん 男性30代)

課長(男性40代)の人柄は良いですよ。ただ、経理部員全体に対し、意思統一を図りたがるのです。つまり“一緒に頑張ろう!皆、仲間!”って感じで、まるで昭和のノリです。仕事の進め方や価値観は、いくら同じ経理部内の部員だとしても、それぞれ違っていて良いと思うのです。そこを、“こうして欲しい!”“これが本当のやり方!”とくくりたがって、部員らはおとなしいため、何も言えないのです。まあ、10名ほどの経理部員を抱えているので、仕方がないのでしょうが・・・

反面教師で終わるべからず。Aさんにもバイアスが隠れていないか?

今回の塾生Aさんは、副主任の立場だけに、自身が所属している経理部内の上司に当たる課長と部員ら双方を冷静に見つめているようです。

つまり、課長は経理部員らの意思統一を図ろうとしているのでしょうが、Aさんから見れば、部員らそれぞれの意思による進め方や価値観をなおざりにしているように見えるようです。

ただ、“課長は10名ほどの部下を抱えているので仕方がない・・・”と課長の立場も思いやる様子も見え隠れしています。

このような状況は、上司と部下との人間関係に生じがちな溝でしょう。恐らく、課長さんよりもスタッフとの距離が近いAさんの見解は信ぴょう性が高いのでしょうが、まずは課長さんを非難する前に、自身の心底にバイアスが隠れていないか、客観視するところからスタートを切ることをお勧めしたいのです。

実践編:自身の見解を客観視する→軌道修正→行動。

目の前で起きている同じ出来事でも、各人のフィルターを通せば、全く異なる状況に見えることもあるものです。

今回の塾生であるAさんのように上司の方法論について、問題視したくなるケースはどこにでもあるのでしょうが、その前に自身の思考・判断が適切なのか、一度は振り返ってみることで、修正箇所があぶり出されるかもしれません。

塾生Aさんのケースを例にして、要点を以下にまとめましたので、あなたの立場に置き換えながら読み進めてください。

自身の見解を冷静に『客観視』すれば、より良いマネジメント策が表れることも・・・

自身が抱いている思い・意向等について、正当化するのはごく自然なことでしょう。特にストイックな姿勢で職務に従事しているビジネスパーソンの場合は、使命感があり、“〇〇はこうあるべき!”との思いが強い傾向にあるのではないでしょうか。

今回の塾生Aさんは、上司に対し“昭和のノリ”と評価しています。また、部員らについて”おとなしいから(課長)に何も言えない。“との見方をしていますが、それは本当に真実なのでしょうか?ひょっとしたら、Aさんの方が経理部員らに対し、”ウチの部員はおとなしい“とのバイアスがあるだけで、当の部員らは意外と納得して賛同しているにすぎないのかもしれません。もちろん、”同じ経理部員だとしても、価値観は異なる。“といったAさんの思考は否定しませんが、課長は彼なりのリーダーシップを発揮して、経理部全体の使命を遂行していることも考えられるでしょう。

まずは、スタッフらの意見を幅広くヒアリングしたり、課長の姿勢を改めて見つめ直したりした後、自身の見解が適切なのか否か冷静に『客観視』してみましょう。(下図参照)

すると、“課長は、部下らに仕事のやりがい・楽しさを教えたいのかもしれない。”あるいは、“10名もの部下を率いる必要があるため、責任感を持って当たっている”と、これまでとは異なる自身の見解が表れることもあるかもしれません。

このように新しい自身の“見解”に出会えた後は、経理部内の現場でも、課長と部下のパイプ役として、双方の思いを共有しながら業務を進めるなど、より良いマネジメントを図ることも可能ではないでしょうか。

時にあなた自身の深層心理に寄り添う必要も・・・

自身の見解を客観視すると、上司や部下に対する思いばかりではなく、自身の深層心理が表れることもあるでしょう。いくら上司の意向に対し、部下が賛同していたとしても、自身の中に“もっと、こうすれば・・・”といった思いが強いのだとしたら、それに対してフォーカスすることは、経理部全体にプラスに働くこともあるはずです。

たとえば、塾生Aさんは部下らに対し、課長さんのやり方について何も言えない事態を問題視しています。もし、部下らの意見をすくい上げる中で、彼ら彼女らの意向が通りにくい環境なのであれば、個々の創意工夫・創造性が奪われ、結局は冒頭でも記述した通り、生産性悪化への道をたどることにもなりかねません。

副主任の立場であるAさんであれば、部下ら一人ひとりからヒアリングして、より良い経理業務を各部署や自社全体に提供できるようなマネジメントをすることで、経営改善に直結している経理部の構築が可能になるでしょう。

たとえば、オペレーションの手順を変えたり、新システムを導入したりして、効率化を図る、そして、捻出された時間で各セクションに対して、価値ある情報発信するなど、もろもろの可能性を練りながら、付加価値の高い経理業務が実現できるかもしれません。

“あの上司だから、仕方がない・・・”とこぼすのみでは、ミドルマネジャーとしての職務怠慢です。ぜひ、具体的な行動を取ってはいかがでしょう。

まとめ

本項で記述したように、自身の見解を客観視して、冷静な判断や行動を起こすことは、上司と部下のパイプ役を担うミドルマネジャークラスの方であれば、取り入れていただきたい方法の一つです。

なかなかご多用で、実践する時間がない方も多いでしょうが、新たな見解を迎えて、より良好なマネジメントを図るためにも、少しずつ試してはいかがでしょうか。

筆者も若き頃は自身のやり方を変えずに突き進んだために、部下の気持ちが離れてしまい、日常のルーティン業務もうまく進まなくなった経験があります。今思えば、あの時こそ“うまくいかない部下との関係”に焦点をあてるのではなく、自身の内部を忠実に見つめていれば、悪しきバイアスの存在に気付いたのかもしれません。

決まりきった月次処理をこなす経理部隊では、もはや機能不全です。ミドルマネジャーが自身の見解を軌道修正し、経理部各人の意向を尊重しながら、生産性のみならず創造性も十分に活かされた経理部隊の構築を図ることなど、もはや当然視されるべきことなのです。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:田村 夕美子

経理環境改善コンサルタント&ビジネス作家として、セミナーや執筆活動に従事している。著書『できる経理の仕事のコツ』(日本実業出版社)、近著に『税理士のためのコミュニケーション術』(第一法規)。『速報税理』にて「顧問先のリアル事情」、ダイヤモンド・オンラインにて「未来に続く経理道」、新潟日報おとなプラスにて「晴天になーれ」など、多数連載中。



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