平成は日本が敗北した時代。NewsPicks新編集長・池田光史に聞く「平成の三大経営者を選ぶなら…」

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池田光史

孫正義、柳井正、永守重信――数々の経営者を見つめてきた経済ジャーナリストは「平成を代表する経営者」に誰を選ぶのでしょうか。

本企画では経済メディア編集長3名にインタビューを実施。NewsPicks編集長の池田光史さん、プレジデントオンライン編集長の星野貴彦さん、BUSINESS INSIDER JAPAN編集長の浜田敬子さんに、「あなたが思う平成の三大経営者」を聞きました。その内容を全3回にわたりお伝えします。

第1回は、令和時代が幕開けした2019年5月に、NewsPicks編集長に就任した池田光史さん。池田さんが挙げた「平成の三大経営者」はすべて外国人経営者でした。その意図は?

平成は「日本が敗北した時代」

【プロフィール】池田 光史(いけだ みつふみ)
NewsPicks 編集長
1983年鹿児島県生まれ。2007年東京大学経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。書店営業を経て、週刊ダイヤモンド編集部。金融、日銀・財務省、自動車を担当。2016年4月よりNewsPicks編集部。2019年5月にNewsPicks編集長に就任。

池田光史さん:平成を一言で振り返ると「日本が敗北した時代」、もっと言うと「惨敗した時代」ですよね。かつては世界的に隆盛を誇った電機や半導体が衰退の一途をたどりました。

では、そういった日本の基幹産業を叩きのめしてきた経営者は誰だったか。2000年代に業績を急拡大させたサムスンの李健熙、ソニーのウォークマンに憧れたアップルのスティーブ・ジョブズの2人でしょう。

そして今、自動車産業も「CASE(コネクテッド、自動運運転、シェアリング、電動化)」がもたらす大転換期と言われます。その象徴として、伝統的な日本の自動車メーカーのマインドを動かしたのが、テスラのイーロン・マスクでした。EVをやらなきゃ、と本気で思わせたわけです。

この3人が、日本の基幹産業の凋落ぶりを浮き彫りにしたと思っています。

李健熙(サムスン)

【プロフィール】李健熙(イ・ゴンヒ)
サムスン電子会長
1942年生まれ。韓国の実業家。1965年早稲田大学を卒業し、アメリカでMBAを取得後、韓国に帰国。1968年に東洋放送入社、1979年サムスングループ副会長に就任し、1987年にサムスングループ2代目会長となる。1998年にサムスン電子会長に就任、2008年に一度辞任するも2010年に復帰。

日本が李健熙に学ぶべき視点は2つある。1つは、競合から謙虚に学ぶことです。

李健熙は早稲田大学を卒業しているんですよね。息子の李在鎔(イ・ジェヨン)も慶應の大学院に留学しています。つまり、徹底的に日本に学んできた

サムスンは“二番手商法”であり、彼らからイノベーションを起こすようなプロダクトが出てきたことはありません。自らフロントランナーとなってからは、もがき苦しんでいるように思いますが、しかし徹底的に謙虚に学ぶ姿勢が、彼らを世界的企業に押し上げました。

もう1つ学ぶべきなのは、最初から「世界」を視野に入れていたという点です。韓国国内のマーケットは小さく、世界を相手にしないと勝てないという危機感があった。通貨危機という社会的危機を潜ってきた影響もあるでしょう。

平成に明らかになったのは、経営者の危機感が未来を決める、ということでもあった。世間という“鏡”に映る企業像と、企業が自らイメージする“自己像”とのギャップが大きい企業があまりにも増えていった印象があります。

日本の経営者が、慢心してしまったということではないでしょうか。

スティーブ・ジョブズ(アップル)

【プロフィール】スティーブ・ジョブス
アップル元CEO(創業者)
1955年生まれ。米国の実業家。1972年リード大学に進学し中退。1977年にアップルコンピュータを設立するも、1981年に同社を解雇される。1985年にNeXT社を創業。1996年のアップルのNeXT社買収を機にアップルに復帰した。2000年にアップルのCEOに就任。2011年にCEOを辞任し、同年に没した。

ジョブズが示したのは、皮肉にも「かつてのソニーは凄かった」ということでした。

ジョブズが再注目され始めたのは、アップルが2001年(平成13年)にiPodを発売した頃から。「iPodは21世紀のウォークマンだ」と言って世界中を熱狂させましたよね。その言葉からわかるとおり、ジョブズはソニーを目指していました。平成生まれの人は驚くかもしれませんが、かつてのソニーは今のアップルみたいな存在だったんです。

ジョブズは非常にビジョナリーで、人々のライフスタイルをデザインしたのだと思う。それでいて、1つ1つの機能やプロダクトデザインについてもミクロレベルでこだわった。

僕は中学生の頃にウォークマンを持っていましたが、すごくかっこよかったし、音楽を持ち歩ける喜びも感じました。そういった人々の生活を一変させるような体験を与えるプロダクトが日本から出てこなくなったのが、iPodの頃からだったように思います。

イーロン・マスク(テスラ)

【プロフィール】イーロン・マスク
スペースXCEO/テスラCEO/ソーラーシティ会長
1971年生まれ。米国の実業家。1999年にX.com(後のPayPal)を共同設立。2002年にスペースXを起業しCEOに就任。2006年にソーラーシティを共同で立ち上げ会長に就任。2008年にテスラの会長兼CEOに就任した。

最後は大転換期にある自動車産業です。その変革をもたらした象徴的な人物が、トヨタの重い腰を上げさせた、マスクです。

あるいは、「そもそもクルマって買う必要ある?」「別にトヨタじゃなくてもベンツじゃなくてもいいよね」と思わせたという意味では、Uber創業者のトラビス・カラニックも代表的な経営者に挙げられるかもしれません。

今やトヨタもダイムラーも、Googleが競合だと公言しています。人々に“移動の自由”を与えるソリューションは、「クルマを作って販売する」というだけじゃない。

つまり令和は、自動車産業という日本の専売特許が、効果を失う時代に突入する。全く違う移動体験が、新しい価値を生み出していくはずです。

(取材:久住梨子、挿絵:國村友貴子)

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

Bizpedia編集部

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