見落としに要注意!マネーフォワード経理担当者のディスカッションで気づいた「経過措置」のアレコレ

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マネーフォワードの経企・財経本部(現:財務経理本部)メンバー3名で実施した「軽減税率」のディスカッション。前半では、2019年10月1日から軽減税率が適用されるにあたり、経理業務で気をつけたいこと、準備しておくべきことについて語られたパートのハイライトをご紹介しました。

ディスカッションの後半では、トークテーマが軽減税率から消費税の「経過措置」に移っていきました。軽減税率ほどは注目されていない経過措置。こちらが導入されることで、消費税10%の施行日以前に行われた一部の取引に関しては、10月1日以後も旧税率の8%が適用されることになります。

実は盲点になりがちな経過措置は、経理業務にも影響を及ぼしそうだということがディスカッションから見えてきました。この記事では、経理担当者たちの会話を通して「経過措置にまつわる注意点」をお届けしたいと思います。

「経過措置」の導入で経理の仕事は何が大変になる?

まずは、経過措置について簡単に触れておきたいと思います。たとえば、旅客運賃のように「増税施行日の前日までに料金を支払ったが、乗車するのは増税後」のような場合は、旧税率8%が適用されます。

このほかでも、旅客運賃以外にも請負工事や資産の貸付、電気料金の継続供給契約、家賃の支払、書籍の予約販売など、料金の支払いと納品のタイミングにズレが生じるもの、納品までのリードタイムが長く、2019年10月1日を跨ぐものについては、経過措置が適用されます。

では、マネーフォワードの経理担当者3名は「経過措置」のどのような点が気になったのでしょうか。

ポイント① 契約日(購入日)と納品日が異なるものに注意

明石剛(以下、明石)「軽減税率の話も大事なのですが、同時に”経過措置”の論点も出てきてしまうのが大変ですね」

杉浦大貴(以下、杉浦)「経過措置ですか?」

明石「はい。消費税率が10%なのか8%なのかは、原則的にはサービスを受ける日が9月30日以前なのか10月1日以後なのかで判断しますが、経過措置は『先払いや金額の大きい取引で、かつその契約が施行日より相当程度前のものなら旧税率でいいよ』というイメージの措置です。つまりキャッシュアウトの日より後に実際にサービスを受ける日がくる取引に関わってきます。消費税率が5%から8%に引き上げられたときも同じような制度がありました」

杉浦「1年がかりのプロジェクトですと納品までの期間が長いですので、契約日と納品日を確かめておいた方がよさそうですね」

明石「そうですね。たとえば、ソフトウェアの受注・開発にも経過措置が当てはまるので、9月30日以前の契約は注意が必要だと思います。実際には、2019年3月31日以前に契約が締結されていたものが経過措置の対象になります。契約書の締結日もしっかり確認しないといけませんね。また、軽減税率と経過措置ともに税率は8%ですが、国税と地方税の内訳が違うので、それぞれ分けて計算する必要があります」

有村優花(以下、有村)「それは、どのような業務に関わってきそうでしょうか?」

ポイント② 期末の税務申告時、地方税・国税の比率の違いに注意

明石「影響があるのは期末の税務申告ですね。申告書作成時には適用税率毎に区分して計算する必要があります。その際に、マネーフォワード クラウド会計をはじめとする会計システムを活用する場合は、税区分のフラグを付けて識別することになります。軽減税率だけであれば、会計処理で10%と8%のフラグのみを付ければ大丈夫ですが、さらに経過措置が加わることで追加の分類作業が発生します」

ここで話題にのぼった、「軽減税率」と「経過措置」における“税率は8%で同じなのに内訳が違う問題”ですが、国税と地方税の割合は次のようになります。

  • 軽減税率…国税6.24% 地方税が1.76%
  • 経過措置…国税6.3% 地方税1.7%(現行の消費税率通り)

両者ともに8%課税取引ですが、消費税申告書を作成する際は別途区分して計算する必要があります(都合、「10%」or「軽減税率8%」or「経過措置8%」の3区分)。税務申告への影響や会計データ入力準備もふまえて、それぞれの対象取引も頭に入れていた方がいいかもしれません。ちなみに、経過措置の対象品目について代表的なものは次の通りです。

<経過措置>

1.前払旅客運賃等
9月30日以前に購入し、実際の役務提供が10月1日以後になる新幹線や飛行機などの旅客運賃、美術館等の入場料
※ただし、ICカードのチャージに当たっては、チャージした時点では乗車券を購入したことにならないため、経過措置の対象外。

2.電気料金等
請求の対象となる期間が10月1日を跨ぐもので、電気、ガス、水道、電話料金等で10月31日までに確定するもの。

3.請負工事(開発含む)
3月31日までに締結される請負契約に基づくソフトウェア開発等で、10月1日以後に完成・引渡しがされるもの。

4.資産の貸付(家賃を含む)
3月31日までに締結された資産の貸付契約に基づく資産の貸付契約(店舗貸付、一部のリース契約など)で、その貸付期間が10月1日を跨ぐもの。(自動更新がある契約については、10月1日以降に更新される契約は対象外となり10%となる)

5.予約販売に係る書籍等
3月31日以前に定期購読契約を締結しており、かつ9月30日までに支払が完了している書籍等の購入で、かつ引き渡しが10月1日以後になるもの。
例)定期購読雑誌で先に1年分の購読料を払うケース
※軽減税率の対象範囲内の場合、軽減税率が優先

6.特定新聞
週、月その他一定の期間を周期として定期的に発行される新聞のうち、発行者が指定する発売日が9月30日以前のもので、実際の購入や引き渡しが10月1日以後になるもの。
例)9月30日の夕刊を、10月1日に日付が変わってから購入するケース。
※軽減税率の対象範囲内の場合、軽減税率が優先

 

経過措置と経理業務

飛行機予約や請負契約は要注意!経過措置に関する周知は急務

とりわけ管理が難しそうなのが、飛行機など旅客運賃の経過措置です。購入日と乗車日のズレを確認しなくてはいけません。その点について、次のような会話が交わされました。

杉浦「マネーフォワードに限らず、飛行機や新幹線などのチケットは事前に買うケースがほとんどですよね」

明石「そうですよね。そういったチケットは買った日が大事です。9月30日以前に支払がされ、10月1日以後に乗車したものは経過措置の適用になります。そのため領収書をみて購入日をしっかり確認しないといけませんね。乗車日(費用計上日)と適用税率がリンクしませんので。領収書に記載されている税率も併せて確認したほうがよいでしょう」

杉浦「確かに、これまでは費用計上のタイミングを考える上で乗車日を中心に把握できればよかったところ、購入日が載っているかをきちんと確認する必要があるということですよね。ということは、立替経費の業務が大変になるような気が……」

明石「その辺りについて、特に旅客機での移動が多い社長などは、秘書の方にあらかじめ周知しておくことが必要かもしれません」

このように、日付による税率の違いは10月1日以降に完成・引き渡しとなるソフトウェアの受注・開発や家賃の支払などにも当てはまります。ちなみに、5%から8%への増税で経過措置への対応を経験した明石さんによると、リードタイムの長い案件があると2年ほどは気が抜けなかったとのこと。また、家賃はたいてい2年契約で新しく契約更新するまでは経過措置が適用され続けるようです。

今回のディスカッションでは、軽減税率や経過措置に関する情報も含め、経理担当者が注意すべきポイントが多くあることが分かりました。とはいえ、軽減税率も経過措置も対象品目はそこまで多くなく限定的です。あらかじめどのような品目で注意が必要なのか頭に入れておくこと、そして購入日の日付をしっかり確認する習慣をつけておくことが大切であると言えるでしょう。

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