「今、こんな経理が引く手あまた」 経理・会計の人材紹介のプロに聞いた、現場のリアル(前編)

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この記事は1年以上前に公開されたものです。法律・制度などに関して、現在とは異なる内容が含まれている可能性があります。

経理業務のクラウド化やRPAの導入が進むこの先、経理の仕事はどう変化し、どんな力が必要になるのだろうか? そんな気になる話題を、会計・経理分野に特化した大手人材エージェント、ジャスネットコミュニケーションズ株式会社の小山満也さんと中村陽さんにお聞きしました。前編のテーマは「今、こんな経理が引く手あまた」です。

取材ご協力:
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社
紹介事業部長 小山 満也(おやま みちなり)氏
管理部 中村 陽(なかむら よう)氏
【経理実務の学校】https://edu.jusnet.co.jp/
【Accountant’s magazine】https://career.jusnet.co.jp/magazine/
【Accountant’s Library】https://library.jusnet.co.jp/

経理職の「間口」は大きく広がっている

──経理の求人の現場は、いまどのような状況にありますか。

小山さま:企業から「こんな人を探しています」と年間千件以上の求人をいただく立場からの話になりますが、まず全体的な傾向としては、労働力の減少による“売り手市場化”の傾向にあります。

それに伴い未経験者に対する間口も広がってきています。特に20代後半くらいまでであれば、たとえ経理業務の経験がなくても、簿記資格など最低限の会計知識があればいろいろと会社が選べる状況です。

30代以降、特に40代、50代に関しては、マネジメント経験を求める求人が多くなってきますが、年齢によるセグメント意識が薄れていて、一般的に言われる「35歳転職限界説」も過去の話になりつつあります。40代・50代の方が、年下の上司のもとでスタッフクラスの仕事に就くというケースも出てきていますね。

ジャスネットコミュニケーションズ 小山様

──経理の労働人口が減っているというのはなぜでしょう?

小山さま:ひとつの起点となったのが、リーマンショック後の不況です。そのころ監査法人で多くのリストラが発生し、監査法人に入社すること自体も難しくなりました。その後、会計職が将来はAI(人工知能)に取って代わられるなどと言われ始めました。そうした要因が重なり、“経理・会計分野に身を投じても将来は安泰ではない”という漠然とした不安を感じる人が多くなったのでしょう。

また会社側は景気が冷え込むと、営業部門など売り上げに直接関わる人員より、経理をはじめとする間接部門の人員をまず減らします。だから2010年ごろは、新卒で会社に入って経理に配属されるということがほとんどありませんでした。

その後景気が回復し、上場企業の会計処理や内部統制の強化など、やるべき経理業務も増えてきました。ところが2010年ごろに新卒入社した現在30歳前後の層が、経理の現場ではすっぽり空いてしまっている。会社はその層を埋めたいけれど、経験者の数が圧倒的に足りない。それで“未経験者でもこんな資格を持っていればOKです”と求人している状況です。

──この先経理としてキャリアを積んでいきたい人にとっては、いい時代になりつつあると?

小山さま:そうですね。とはいえ30代・40代になってからキャリアチェンジするのは決してラクではないので、20代か30代前半くらいまでに、たとえば「将来的にはCFO(最高財務責任者)になりたい」とか「海外でキャリアを積みたい」といったキャリア像を描いておくことが大切だと思います。そういうビジョンが固まっている人にとっては、すごくいい環境になってきているなと。

引く手あまたな経理は、現場に「アドバイス」できる人

──そんななか、企業側は具体的にどんな人材を求めていますか。

小山さま:会社の規模や業態によってさまざまですが、多くの会社に共通するのは“コミュニケーションスキル”を備えた人材です。これは本当に各社からよく言われますね。

これまで経理と言えば、黙々と机に向かって、現場から回ってくる取引の記録を仕訳・入力する人という感じでしたが、そうした業務がシステム化されつつあるなかで、求められるものも変わってきています。

たとえばいま現場でどんな取引をしていて、どんなことが会計上の問題になりそうなのかを自発的にチェックしたり、それをふまえて現場にアドバイスしたりといったことが求められてきているのです。

中村さま:私は以前、アウトソーシングを受けて大企業の経理業務に就いていたことがありますが、まさにそのような状況でした。

現場で切られた伝票を経理がチェックし、何か不備や問題があればそれを現場にフィードバックし、修正してもらう。さらにはなぜそうした問題が起こるのかを現場と話し合い、それをマニュアル改定やシステム改定といったところにつなげていく、というのが経理部の主な業務でした。

ジャスネットコミュニケーションズ 中村様

──現場の業務にコミットするという意味合いでのコミュニケーションスキルでしょうか。

小山さま:最近、クライアントの企業さんからこんなエピソードを聞きました。新しく経理に配属された人が、営業部の人から相談を受けたと。それは普通の経理であれば「◯◯◯なのでやってはいけません」と返すような、会計的にはありえない内容でした。ところがその人はこんなふうに返したそうです。

「本来であれば◯◯◯なのでNGなのですが、もし□□□であれば可能になるかもしれません。だからお客さんには△△△のような形で交渉してみてはどうでしょうか」。

ただOKかNGかだけでなく、どうすれば営業としていい結果が生み出せるかを経理的な視点からアドバイスする。こんなふうに提案してもらえたら営業にとっては非常にありがたいですよね。

経理として目の前の仕訳作業にひたすら没頭するのではなく、会社としてプラスになることを経理の立場から考え、必要とあらば現場に働きかけたり、資料を用意したりする。そういった意味合いでのコミュニケーションスキルなのかなと思います。

──それはやはり、経理業務のクラウド化やIT活用によって、入力作業のウェイトが下がっていることが大きいのでしょうか。

小山さま:そうですね。逆にいえば、そういったコミュニケーションスキルこそがAIやRPAにとって代わられない部分になるだろうと思います。

「自分から働きかける経理かどうか」が一つの分かれ目

──そうしたコミュニケーションスキルは、どうすれば伸ばせるのでしょう?

小山さま:そういうことをやりやすい会社に行くというのも大切かもしれませんが、むしろそれ以上に重要なのは今の環境の中で自分から働きかけていくことだと思います。

たとえば極端な例ですが、いま会社が検討している投資に対し、「それをすることで実際にいくらプラスになるのか、同じ額を使うならこちらの方がよりプラスになりそうだ」といった分析を社長に提出するというようなことです。「こんなのどうでしょうか。使いにくいようならまた別のを作りますよ」と。それが役に立つものであれば、社長にとっても絶対に嬉しいはずです。そういったことを積み重ねた人が、“どの会社にとっても必要な人材”になっていくのだと思います。

もちろんスキルがあるに越したことはないですが、それ以上に、受け身ではなく自分から働きかけるかどうかが分かれ目になってくるのかなと。何か特別な勉強をしなくても、仕事に対する姿勢みたいなところの意識を高めるだけで、世の中に必要な人材には十分なりうるのかなと思います。

──実際に人材市場にはそうした方もいらっしゃいますか。

小山さま:いらっしゃいますね。やはりそういう方は軒並み希望する企業への内定を決められています。

──話を聞いていて、例えば昨今のエンジニアの事情とも近いのかなと思いました。プログラムを書けるだけでなく、ビジネス目線や経営的目線を持つことが非常に大切になってきているという。それ以外の職種でも、聞くテーマです。

小山さま:近いかもしれませんね。経理の場合も会計・経理的なスキルだけではなく、現場で実際にどのような取引が行われているかをわかっている必要があります。そうした“複数の視点を持つ”ということで言えば、営業経験のある経理や、開発業務に携わったことのある経理といった人材は大きな強みになるでしょうね。

 

「経理の仕事は、これからこうなっていく」 経理・会計の人材紹介のプロが語る、現場のリアル(後編)に続きます。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:田嶋 章博 (たじま あきひろ)

ライター、編集者。ファッション誌編集を経てフリーに。ビジネスまわり、カレーまわり、インタビューものを中心に執筆。モットーは「心が動くライティングを」。https://www.muchbako.com/



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