タバコを経費で落とした社長の末路 経理の目をすり抜けた申請方法とは

日々の経費申請。まだまだ経費管理の電子化がされておらず、紙に領収書を貼り付けて経費申請する企業も多いのでは? 中小企業やベンチャーの経営者が顔をあわせると、「どうやって社員に経費申請させるか?」「どこまで経費として認めるか?」といった話題になることも多いものです。

そんな中、筆者がとある中小企業のワンマン社長のA氏と雑談をしていたところ、社長の口から耳を疑うセリフが発せられました。

A社長「実はさ、うちの会社、タバコを経費で落とせるんだよ」

信じがたい制度だと驚いているのも束の間、A社長の次の言葉も衝撃でした。

A社長「Suicaを使えばなんでも経費として落とせちゃうんだから。やっぱりSuicaは魔法のカードだね」

A社長はどのようにして、タバコを経費扱いにしたのでしょうか。

A社長がひらめいた「タバコを経費で落とす方法」

A社長は数カ月前、地方出張におもむいた際にSuicaでの経費清算をひらめきました。
出張先での仕事が終わり、タバコで一服しようとしたところ箱の中身は空。仕方なく、コンビ二でタバコを購入することにしました。

A社長「××番のタバコを2箱お願い」

そう店員に伝えたところで、財布の中身がすっからかんになっていることに気付きました。

A社長(困ったぞ。ATMでお金を下ろして、並び直すのも面倒だなぁ。……あ、そういえば!)

財布の中にはSuicaが入っていました。このSuicaは、駅の券売機で都度現金チャージするタイプのもので、A社長が仕事で外出するときに使うため所持していました。しかも、地方出張に合わせて1万円をチャージしたばかりで、チャージした分の領収書も持っています。

A社長「Suicaでお願いします」

A社長(当たり前だが、コンビニではSuicaが使える! これは……もしかしたらなんでも落とせるかも!)

こうしてA社長は禁断の決済方法をひらめいてしまいました。それからというもの、A社長はタバコだけでなく、コンビニで弁当や雑誌、日用品をSuicaで購入し、会社の経費として清算しはじめます。
Suicaで買ったものはなんでも経費扱いにできるカラクリの鍵は、Suicaをチャージした際に発行できる「領収書」にありました。

A社長だけが悪ではない? 経理も甘かった

Suicaを魔法のカードと盲信したA社長は、チャージと購入を繰り返すようになります。具体的には、次の流れで経費申請をしていました。

<A社長がSuicaのチャージ代を経費申請した方法>

① Suicaにお金をチャージする
現金でSuicaにチャージする際に、発券機でチャージ代の「領収書」を発行する


② コンビニなどでタバコを購入する
コンビニなどのSuicaの決済端末があるお店で買い物をする


③ 領収書で経費申請
① で受け取った領収書を、経費担当者に「交通費」として申請する

ちゃんと領収書を添えて申請するという、ごく一般的な経費申請のフローに見えます。しかし、このやり方は「アウト」。はたして、どの手順が間違っているのでしょうか?

実はこの問題、A社長だけが悪かったとは言い切れないのです。Suicaに現金をチャージする際に発行される領収書で、経費申請を行えてしまう経理の処理自体に問題がありました。

経費申請の際には、領収書の内訳と申請時の用途が一致していなければ経費の不正申請となります。しかし、A社長の会社の経理担当者は、Suicaの用途が交通費以外にもあると考えてもいませんでした

もし、経理担当者が「Suicaのチャージ代の領収書では使用用途が分からず、経費として認めるには妥当性が低い」と認識していれば、今回の不正は食い止めることができたでしょう。また、A社長のSuicaの経費申請が増えていたでしょうから、毎月処理を行っている経理の立場としては、異変に気付きたかったところです。

<経費の不正申請が起こった要因>

① A社長側:領収書さえあれば、何でも経費申請が可能だと考えていた
② 経理側:Suicaの領収書は、当然「交通費」として処理すべきだと考えていた

もう一度確認しておきたい「正しい交通費申請」

A社長がSuicaでの不正経費申請をはじめてから3カ月後、A社長が経理に自ら告白したことで、申請内容は修正されました。もし、経理が不正を見落とし続けそのまま決算書を出していたら、税務署から「不正処理」だと指摘を受ける可能性も十分ありました。

経費申請のルールをあいまいに覚えたまま、なんとなく申請を行っているという人もいるかもしれません。不正申請で指摘をうけることがないよう、正しい交通費申請に必要な情報を確認しておきましょう。

<交通費申請に必要な情報>

① どこからどこまで移動したか
例:目黒駅〜田町駅間
② いくら費用が発生したか
例:165円
③ いつ、その交通費が発生したか
例:6月10日

Suicaの領収書では現金をチャージしたという事実しか分からず、①〜③の情報が全て欠落しています。従業員は①〜③の情報を全て記録し、経理担当者は「Suica」ではなく内訳の明確な交通費申請のみ認める処理形態を徹底しましょう。

A社長を待ち構えていた残念すぎる末路

この不正処理には続きがあります。その後、筆者がA社長に再びお会いしたところ、以前と比べて覇気がなく、すっかり落ち込んでいるように見えました。

A社長「実はいろんな取引先で、Suicaならタバコでもなんでも経費申請できると得意気にしゃべっていて。ある取引先から『それって不正じゃないですか?』と指摘されたんです。それだけでなく、その会社との取引がなくなってしまったんです。当然ですが、信用を失ってしまったんですね」

少額の不正処理のせいで、大きな落とし穴にハマってしまったA社長。不正処理で一時の優越感を得ていましたが、失うものの方が大きかったようです。

A社長「今回は自分から経理に伝えて、是正処理を行いました。ちょっとだけ交通費をちょろまかそうという出来心から始めたことでしたが、実際のところは立派な不正です。私のように社会的信用を失うリスクも高いです」

A社長のように、なんでもかんでも「経費にしよう!」と経費申請を軽んじている会社員が中にはいるかもしれません。一朝一夕で会社全体の意識改革を行うことは難しいですが、社長も経理担当者も常に正しい経費申請の大切さを啓発していきましょう。

また、「経理は領収書の内訳をしっかり把握する」「経費申請時に必要な情報を細かく設定する」「社員の倫理観やリテラシーを高める」といったことを徹底し、経費の不正申請の芽を摘んでいくことも大切です。

BIZ KARTE編集部

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