瀧 俊雄氏にきく、経理とフィンテック(後編)経理担当が会社の売り上げを伸ばす未来がやってくる

前編では、マネーフォワード取締役であり、「Fintech研究所」所長を務める瀧俊雄氏に、経理におけるフィンテックの有用性をききました。後編では、“フィンテックによって近未来の経理はこうなる”をテーマに引き続きお話を伺いました。

取材ご協力:
瀧 俊雄(たき としお)
1981年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、2004年に野村證券に入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。その後スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年にマネーフォワードの設立に参画。2015年に同社「Fintech研究所」の所長に就任。同研究所を通し、国内外のフィンテックの最新動向を発信する。

 

「なんでわざわざ銀行に行っているの?」という時代に

― 前編ではフィンテックとキャッシュレスの最新動向について語っていただきましたが、ここからはフィンテックによって経理の未来がどう変わるかをお話しいただけますでしょうか。

1番のキモになりそうなのが、銀行サービスをもっと身近に使えるようにする技術整備です。その一つの例が「API (*1)化」といわれるものなんですが、たとえばAmazonのサイトの中で銀行取引ができるようにするために、私は自分の銀行口座からたとえば10万円までだったら審査なしで使えるというデジタルトークンをAmazonに付しておきます。こうすればワンクリックで買い物するのと同じくらいの手軽さで、銀行口座を使った取引がAmazonでできるようになります。

2018年6月に改正銀行法が施行される予定で、その法律的な整備が行われています。最終的には銀行がそうした機能を開発してくれなければ実現しないのですが、いま当社のMFクラウド経費でも、ソフトの中でそうした銀行取引が行える仕組みを開発しているところです。

― それによって経理の業務がどんなふうによくなるのでしょう?

たとえば経理の仕事の中で、Aさんには1万3000円経費精算があり、Bさんには7万8000円の経費精算があるとします。銀行API化が進めば、経理ソフト上からそのデータを銀行に直接、手間なくインプットすることができます。一つのソフトの中にいたまま、社員の経費精算の振り込みまでが完了できてしまう。実際に銀行に行ったり、インターネットバンキングのサイトに飛んでデータを打ち込むという手間がまるっと省けるのです。

現状の経理の世界は、「今日、経費精算の振り込み手続きをしに銀行に行ってきます」「じゃあ、ついでにあの手続きもお願い」というようなオペレーションが特に中小企業では多く行われていると思います。それがパソコンやスマホの1ソフトで完結できるようになるわけなので、そのぶん経費精算がもっともっとできますねと(笑)。それは冗談ですが、会社としてその分コアミッションに集中できるようになるわけです。

いまこうした銀行API化はすごく重要なテーマとなっていて、これを経理や会計のサービスに活用しようという会社が弊社を含め10社くらい出ているイメージです。そうした会社と銀行の間で、API化を実現させるための協調的な動きもすごく生まれています。こうしてインターネットバンキングがいろいろなソフトの中で行えるようになっていき、5年後、10年後には「なんでわざわざ銀行に行っているの?」という時代になるかもしれません。

【脚注】
*1 APIとはApplication Programming Interfaceのことで、プラットホーム側の機能を外部でも利用できるようにする仕組みのこと。たとえば外部のサイトから直接FACEBOOKやTWITTERに投稿できる仕組みもAPIの一つ。

“従量制”により、経理のあり方がスマートに

― 他には、フィンテックによって経理業務にどんなメリットがもたらされそうでしょうか?

経理担当として処理しやすいデータが増えるというのも、すごく効いてくるだろうなと思います。私も前社時代は、経費の精算書をExcelで作って経理部に提出していましたが、どうしても雑になってしまいがちでした。みんながそうやってワーッと提出するわけですから、フォーマットもかなり崩れてしまい、経理担当側からしたら大変だったでしょう。

それがクラウド型の経費精算システムで行われれば、定型化されたデータで提出されるようになります。これまでは受け取ったデータを定型の形に変換したり、この形式はダメですと差し戻しをしていたのを、そのまま使えるデータとして受け取れる。やはりこれは大きいですよね。今までは自分でいろいろと調理しなくては食べられなかったものが、そのまますぐに食べられるものに変わる感じです。

あとはもっと未来系の話になりますが、“従量制”がいろいろなところに取り入れられることです。たとえばサーバーなどの分野では、料金をまるっと全額払うのではなく、使った分だけ払うという概念が既に採用されていますが、それが他のサービスにもどんどん広がっていくはずです。

なぜこれまでそうならなかったかというと、契約をいちいち作り直すのが非常に大変だったからです。それを今後はブロックチェーン(*2)などによって、契約を取り交わすコストを大幅に下げられます。これはスマートコントラクト(*3)と呼ばれます。極端な例にはなりますが、これまでは水を飲むのに1本100円を払っていたのが、自動で計測するカメラなりセンサーなりが導入され、4割飲んだから40円だけ払うということが可能になるんです。自動で計測されて、自動的に料金に反映され、最後にチェックを入れて支払う、みたいな世界になるわけです。

これにより経理業務は、これまでなら「なんでこんなに水代がかかっているんですか!?」と社員に詰め寄っていたところを、事前に「水は4割までにしておいてくださいね」と言えるようになる。要は使用量を計測して正しい費用を転嫁するみたいなところが自動化されることで、経費のマネジメントのあり方が今よりスマートになるのです。

【脚注】
*2 分散型の台帳技術または分散型ネットワークのこと。銀行のような特定の管理機関ではなく、多数のユーザーによって分散管理されるシステム。仮想通貨を支える仕組みでもある。
*3 契約(=コントラクト)を行うために必要なプロセスを自動化し、スムーズに契約を履行する仕組み。

今後伸びるのは、“データを活用できる経理”

― 経理業務のクラウド化についてはいかがでしょう。

クラウド化によって紙がいらなくなると、いつも同じ場所でデータを受け取る必要がなくなりますよね。もし顔と顔を突き合わせてフィードバックした方がいいのであれば会社の方がいいですが、経理業務は基本的にそんなことはないので、ものすごくリモートワーク(在籍する会社から離れた場所で業務を行う勤務形態)に向いた仕事の類いになるでしょう。

また経理のクラウド化は、リモートワークができるという話だけにとどまりません。前編で、ある大手企業の社長さんが自分で社員の経費のチェックをしているという話をしましたが、実際に経費のマネジメントは経営者にとってすごく重要なトピックです。とはいえ多くの経営者は、ワークライフバランスではなく“ワークワークバランス”といえるほど、生活の中を仕事がいっぱいいっぱいに占めているのが実情です。

そんな中でも経費マネジメントを確実に行うためには、いつでもどこでもスマホで作業できることが重要になってきます。要は、ふとんの中でも経費チェックができるようになればいいのです(笑)。布団の中にパソコンは持ち込めませんが、スマホなら持ち込めます(笑)。

つまりはクラウド化してスマホでできるようになることで、経費マネジメントの確実性や効率性を上げられる。だからクラウドであるということも、非常に重要になってくると思います。

― フィンテックのような新しい潮流が進むことで、今後、経理担当者にはどんな資質が求められると思いますか?

今後、AIやRPA(Robotic Process Automation)に奪われる仕事がどんなものかと考えると、やはり右から左に答えが自動的に導き出せるような業務です。だから経理業務においても、単純に処理をするような仕事はどんどんなくなっていくでしょう。

でも、経費の中でも必ずイレギュラーな使い方というのがあって、それに対し「あなた、これは不必要な経費なのでは?」というような判断が求められます。そういう“一点ものの判断”をするような仕事はなくならないでしょうね。
逆に言うと、売り上げにつながる経費の使い方というのもありますよね。たとえば、得意先に持っていく“おもたせ”とか。機械的にジャッジしてしまうと「この経費は不要です!」となりますが、データ化が進んで売り上げとの相関がきちんとつかめるようになれば、むしろ良い経費の使い方だとジャッジできるわけです。さらには煎餅はOKだけど、ケーキはNGというような分析もできそうです。そうした法則性は、費用を処理している経理の人が1番に見つけられるはずなので、そうしたデータを活かしながら仕事していくことが大きなポイントになるでしょう。

「私は会社の経理部門に所属しながら、売り上げを20%伸ばしました」というのは、今だと意味がわかりませんが(笑)、今後は経理が本当にそういう仕事になっていくかもしれません。データというのはそうやって使われていくものなので、今後はやはりデータが好きな経理が伸びるのではないでしょうか。

執筆:田嶋 章博 (たじま あきひろ)

早稲田大学を卒業後、株式会社祥伝社に入社し、ファッション雑誌『Zipper』『Boon』などの編集を経て、2004年にフリーのライター・編集者として独立。以降、“実用性と物語性の融合”をモットーにインタビュー、ビジネス、ファッション、インテリア、マネー、食、スポーツなどの分野で活動。https://www.muchbako.com/



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