- 更新日 : 2020年6月10日
保護関税とは
保護関税とは、国が定める関税のうち、国内産業の保護を目的として輸入品に課する関税である。
関税にはこの「保護関税」とともに国家財政収入の確保を主たる目的とする「財政関税」がある。
保護関税の考え方
保護関税の考え方は、関税による税収を期待するというよりも、国内産業を守るため外国製品の価格競争力を喪失させる程度の税率を課すというものである。ただし税率を引き上げすぎると当該品目の輸入がストップし、国内産業による供給が不十分になる可能性もある。このため果実など収穫期が限られるものは収穫期に限って税率を引き上げ、それ以外の時期は税率を引き下げて輸入量を調整し、国内産業の保護と当該品目の十分量の供給とを両立する政策もとられる(これを季節関税という)。
保護関税と保護貿易主義
いくら自国産業保護のためとはいえ、国家同士が互いに保護関税の税率を引き上げていくと、結果的に貿易そのものが衰退してしまう。18世紀、イギリスは東インド会社に貿易を独占させる重商主義をとったが、産業革命後は自由貿易主義が台頭し、政策を転換させた。またアメリカがイギリスから独立した直後は自国産業を育成するため、共和党は保護関税政策をとったが、後に民主党が政権をとると自由貿易主義に転向した。1920年代の世界恐慌以降、世界各国は保護貿易主義に傾倒し、強国はその勢力圏内を囲い込んでブロック経済をつくりあげたが、ブロック同士の対立が後に第二次世界大戦の要因のひとつとなる。
このような保護貿易主義への反省を踏まえ、戦後は自由貿易主義が重視されるようになり、GATT(関税と貿易に関する一般協定)が発効された。GATTの流れは今日のWTO(世界貿易機構)に受け継がれているが、各国間の利害関係により必ずしも一律的に保護関税が排除される動きにはなっていない。
法律と条約
日本では「関税定率法」と「関税暫定措置法」という法律により関税率が定められており、関税定率法では平成25年4月現在7,254種の税率が設定されている。関税暫定措置法に定められる税率は433種である。
また、WTO協定上、WTO加盟国・地域および最恵国待遇に対しては法定の税率よりも低い協定税率が適用される。
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