開業届に関する実態調査
作成日:2026年6月3日
1. 調査概要
本レポートは、個人事業主・フリーランスを対象とした開業届の作成・提出実態に関する調査結果をまとめたものです。作成に利用したツール、所要時間、青色申告承認申請書の提出状況、手続きで感じたハードルなどを明らかにしており、自社の制度設計・運用改善やコンテンツ設計にお役立ていただけます。
- 調査時期:2026年1月実施
- 調査対象:自営業・自由業を中心とする個人事業主等
- 有効回答数:812名(男性約67%、女性約33%)
- 回答者属性:自営業(529名)と自由業(277名)が中心。特に40代男性(378名)が全体の約半数を占める
- 作成経験:実際に自分で開業届を作成・提出した経験があるのは71.3%
回答者の利用ツールの内訳
- 国税庁サイトからDLしたPDF・税務署の紙様式:41.1%
- 国税庁のe-Tax(ソフト・Web版):23.0%
- 民間の開業届作成サービス(弥生、freee、マネーフォワードなど):17.8%
- その他:9.1%
- わからない/覚えていない:9.1%
2. 調査結果サマリー
4つのポイント
- 開業届の作成ツールは「国税庁サイトのPDF・税務署の紙様式(41.1%)」が最大勢力で、e-Tax(23.0%)や民間の作成サービス(17.8%)を上回り、紙・PDFの利用率はどの年代・地域でも高い傾向にあった。
- 手続きで「面倒・ハードルが高い」と感じた点は「青色申告などの関連書類の理解(21.4%)」「記入内容の判断(20.2%)」が上位で、「作成・入力作業自体(11.3%)」を面倒と感じる人は少なく、悩みの本質は作業ではなく「判断」と「理解」にあった。
- 作成から提出までの所要時間は「10分〜30分未満(24.0%)」が最多で、「10分未満(15.5%)」と合わせて約4割が30分以内に完了していた。
- 開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出した人は66.0%に上り、白色申告のため提出しなかった層はわずか2.3%で、大多数が節税(青色申告)を意識していた。
3. 調査結果の詳細
3-1. 開業届の作成・提出経験
全回答者に対し、これまでに自分で開業届を作成・提出した経験があるかを尋ねました。
- 自分で作成・提出した経験がある:71.3%
- 提出したことがなく、提出準備もしていない/わからない:20.4%
- 税理士等に依頼して代理提出してもらった:6.5%
- 現在、提出に向けて準備中である:1.9%
- その他:0.0%
「自分で作成・提出した経験がある」が7割を超え、大半の人が自力で手続きを行っていることがわかりました。属性別では、女性50代で「自分で作成・提出した経験がある」が88.9%と非常に高い割合を示した一方、男性20代・30代は6割台(20代66.7%、30代62.3%)にとどまり、税理士依頼(30代12.3%)やこれから提出する層が含まれる傾向にあります。
3-2. 開業届作成時の利用ツール
開業届を自分で作成した(または準備中の)574名を対象に、利用したツールを尋ねました。
- 国税庁サイトからダウンロードしたPDF、または税務署の紙様式:41.1%
- 国税庁のe-Tax(ソフト・Web版):23.0%
- 民間の開業届作成サービス(弥生、freee、マネーフォワードなど):17.8%
- その他:9.1%
- わからない/覚えていない:9.1%
民間の作成サービスやe-Taxよりも、「国税庁のPDFや紙様式」を利用した人が最も多い結果となりました。年代によって利用ツールが明確に分かれており、男性20代では「国税庁のe-Tax」の利用率が66.7%と突出して高く、紙様式は16.7%にとどまります。一方、男性50代では「PDFまたは税務署の紙様式」が59.3%と約6割を占め、e-Tax利用率は14.8%と低くなっています。男性30代・40代でも民間サービスの利用(30代21.1%、40代17.1%)は一定数あるものの、依然としてPDF・紙派(30代31.0%、40代42.3%)が最大勢力です。
3-3. 開業届作成から提出までの所要時間
開業届の作成から提出完了までにかかった時間(事前の情報収集を除く作業時間)を尋ねました。
- 10分~30分未満:24.0%
- わからない/覚えていない:23.5%
- 30分~1時間未満:17.6%
- 10分未満:15.5%
- 1時間~3時間未満:11.8%
- 3時間以上:7.5%
「10分〜30分未満」が最多で、「10分未満」と合わせると約4割が30分未満で完了していることがわかりました。属性別では、女性20代で「30分〜1時間未満」が50.0%と最も多く、慎重に作業を進めた様子がうかがえます。男性40代は「10分〜30分未満」が26.3%と最多で、「10分未満(15.7%)」と合わせると4割以上が短時間で済ませています。
3-4. 青色申告承認申請書の提出状況
開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出したかどうかを尋ねました。
- 開業届と同時に提出した:66.0%
- 開業届とは別に、後から提出した(または提出予定):24.4%
- わからない/覚えていない:7.3%
- 白色申告にするため、提出しなかった:2.3%
- その他:0.0%
6割以上が「同時に提出した」と回答しました。白色申告のため提出しなかった層はわずか2.3%であり、大多数が節税(青色申告)を意識していることがわかります。属性別では、男性20代・女性20代ともに「同時に提出した」割合が83.3%と非常に高く、開業当初から節税意識が高いことがうかがえます。一方、女性50代では「同時に提出した」が50.0%にとどまり、「後から提出した(37.5%)」や「白色申告(12.5%)」の割合が他の年代よりも高い傾向にあります。
3-5. 手続きで「面倒・ハードルが高い」と感じた点
開業届の手続き全体を通して、最もハードルが高いと感じた点を尋ねました。
- 特になかった:23.9%
- 青色申告などの関連書類の理解(必要性や違いの判断):21.4%
- 記入内容の判断(職業欄の書き方、開業日の設定、屋号など):20.2%
- 覚えていない:14.6%
- 書類の作成・入力作業(手書き、またはシステムへの入力操作):11.3%
- 提出環境の準備(マイナンバーカード、ICリーダー、郵送の封筒など):3.8%
- 電子申告の設定(利用者識別番号、アプリ、マイナンバー連携など):3.8%
- その他:0.9%
作業そのものよりも「内容の判断」や「制度の理解」に悩みを感じている人が多い結果となりました。入力作業自体を面倒と感じる人は約1割にとどまり、「何を書くべきか(判断)」「青色申告の仕組み(理解)」に心理的ハードルがあります。属性別では、男性50代で「青色申告などの関連書類の理解」を挙げた人が33.3%と最も多く、制度理解に苦労している様子が見られます。女性20代では「提出環境の準備」が33.3%と高く、マイナンバーカードやICカードリーダー等の物理的な準備につまずくケースが多いようです。
4. 調査結果から見える課題と対策
本調査の結果から、開業届の手続き支援において、3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。
課題①:「判断」と「制度理解」に集中する心理的ハードル
手続きで面倒と感じる点は、入力作業自体(11.3%)よりも「青色申告などの関連書類の理解(21.4%)」や「記入内容の判断(20.2%)」に集中しており、ユーザーの最大のペインは作業の手間ではなく「何を書くべきか」「制度をどう理解するか」にあります。
対策の方向性:訴求や支援の軸を「作成の楽さ・速さ」から「税務上の安心・正解」へとシフトし、職業欄や屋号の書き方ガイド、青色申告の仕組み解説などをセットで提供することが有効です。
課題②:紙・PDF利用層をツールへ転換させる難しさ
作成ツールは国税庁のPDF・紙様式(41.1%)が最大勢力であり、所要時間も短い(約4割が30分以内)ため、「時短・カンタン」という訴求だけでは無料のPDF利用者をSaaSへ転換させることが困難です。
対策の方向性:「手書き vs 自動入力(速さ)」ではなく「自己判断のリスク vs ガイド付きの安心」という比較軸へ転換し、記入ミスや青色申告の適用漏れといった将来リスクの回避価値を訴求することが望まれます。
課題③:青色申告の確実な同時提出支援
青色申告承認申請書の同時提出率は66.0%と高い一方で、後から提出した層(24.4%)も一定数存在し、提出漏れによる節税メリットの逸失リスクが残っています。
対策の方向性:開業届と青色申告承認申請書をセットで作成・提出できる導線を整え、「後出し忘れ」のリスクを可視化することで、確実な節税対応を後押しすることが効果的です。
5. まとめ
本調査からは、開業届の手続きそのものは短時間で完了するものの、ユーザーの悩みが「記入内容の判断」と「青色申告の制度理解」に集中しているという実態が明らかになりました。紙・PDFでの自作が最大勢力である一方、大多数が青色申告による節税を意識しています。
- 「判断」と「制度理解」のハードル:職業欄・屋号の判断や青色申告の理解に悩む層が多い → 記入ミスや制度適用漏れのリスク
- 紙・PDF利用層の根強さ:約4割が国税庁のPDF・紙様式を利用し作業も短時間 → 速さ訴求ではツール転換が進まないリスク
- 青色申告の提出漏れ:同時提出は66.0%だが後出し層も一定数存在 → 節税メリットを逸失するリスク
これらの課題に対しては、記入内容の判断を支援するガイドやツールの提供、自己判断リスクを軸とした訴求への転換、開業届と青色申告承認申請書をセットで提出できる導線の整備を進めることが、ユーザーが安全かつ最適に手続きを完了するための鍵となります。
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出典
マネーフォワード クラウド、開業届に関する調査データ(回答者:812名、集計期間:2026年1月)
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