• 作成日 : 2025年9月25日

キッチンカーの冷蔵庫はどう選ぶ?値段や電源、設置方法まで徹底解説

キッチンカーを運営するうえで、冷蔵庫は食材の鮮度と安全を守るための心臓部といえる存在です。しかし、どのような冷蔵庫を選ぶべきか、どのように電源を確保し、どのように設置すればよいのかなど、悩ましい点も多いのではないでしょうか。

この記事では、キッチンカーに最適な冷蔵庫の種類や価格、必要な電源の知識、安全な固定方法、そして「冷えない」といったトラブルへの対策まで、経営者の方が知っておきたいポイントを網羅的に解説いたします。

キッチンカーに最適な冷蔵庫の選び方

キッチンカーの成功は、提供するメニューに合った冷蔵庫を選ぶことから始まります。限られたスペースと電力の中で、どの冷蔵庫が最も適しているかを判断するには、種類ごとの特徴や容量、冷却方式を正しく理解することが重要です。

冷蔵庫の種類と特徴

キッチンカーで使用される冷蔵庫には、主に3つのタイプがあります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、ご自身の営業スタイルに適したタイプを選んでいきましょう。

  • コールドテーブル(横型冷蔵庫)
    天板を作業台として使えるため、狭いキッチンカー内のスペースを効率よく活用できるのが大きな特長です。調理スペースと冷蔵スペースを両立できるため、作業効率の向上にもつながります。多くのキッチンカーで採用されている、人気の高いタイプといえるでしょう。ただし、縦型の冷蔵庫と比較すると、収納容量が少なくなる傾向があります。
  • 縦型冷蔵庫
    設置スペースを縦に使うことで、より多くの食材を収納することができます。特にドリンク類や高さのある食材の保管に向いています。扉を開けた際に中身が見えやすいため、食材の管理がしやすいというメリットもあります。その一方で、作業スペースを圧迫してしまう可能性があるほか、地震対策としてしっかりとした固定が必要となる点には注意が必要です。
  • ポータブル冷蔵庫(車載冷蔵庫)
    小型で持ち運びやすく、サブの冷蔵庫として、または小規模なキッチンカーのメイン冷蔵庫として利用できます。DC電源(シガーソケット)で稼働するモデルも多く、電源確保の面で柔軟性が高い点が魅力です。ただし、容量が小さいため、多くの食材を保管するのには不向きです。

容量の目安はどれくらい?

冷蔵庫の容量は、提供するメニューの種類や営業規模によって適切なサイズが異なります。一般的には、1日の売上目標から必要な食材の量を逆算して決めることが基本となります。たとえば、ランチ営業で1日あたり50食を提供する場合、必要な肉類、野菜、ソース類などがすべて収納できる容量が必要です。

目安としては、100L前後のコールドテーブルをメインとして導入し、必要に応じて30L〜50L程度の縦型冷蔵庫やポータブル冷蔵庫を補助的に併用するケースが多く見られます。仕込みの量や食材の大きさ、仕入れの頻度なども考慮し、少し余裕を持ったサイズを選んでおくと安心です。

冷却方式の違い

冷蔵庫の冷却方式にはいくつかの種類がありますが、キッチンカーで主に使用されるのは「コンプレッサー式」です。

  • コンプレッサー式
    家庭用冷蔵庫でも一般的に使用されており、冷却能力が高いのが特徴です。特に夏場の車内のような高温環境でも、安定して庫内を冷却できるため、キッチンカーには最適といえます。消費電力は比較的大きいですが、最近のモデルはインバーター制御が主流で、設定温度に達するとコンプレッサーの運転速度を落として効率よく庫内を維持します。
  • ペルチェ式
    静音性に優れ、振動が少ないのがメリットですが、外気温の影響を受けやすく、冷却能力はやや弱めです。外気温が高い夏場などには冷えが不十分になることがあり、使用する際には注意が必要です。ワインセラーや特定の用途に向けた製品に多く見られます。

キッチンカー用冷蔵庫の電源確保と消費電力(ワット数)

キッチンカーで冷蔵庫を使用するには、安定した電源の確保が欠かせません。営業中に電源が落ちてしまうと、食材が傷んでしまい、営業を続けることができなくなってしまいます。ここでは、主に使用されている電源の種類と、冷蔵庫を選ぶうえで重要となる「ワット数」について解説いたします。

主な電源の種類と特徴

キッチンカーで利用可能な電源には、主に「発電機」「ポータブル電源」「サブバッテリーシステム」の3つの方法があります。

  • 発電機
    十分な出力を持ち、長時間の電力供給が可能です。冷蔵庫だけでなく、消費電力の大きい調理機器などを同時に使用したい場合でも安定して動作します。ただし、騒音や排気ガスが発生するため、出店場所によっては使用が制限されることがあります。あわせて、定期的なメンテナンスや燃料の補給も必要になります。
  • ポータブル電源
    非常に静かで、排気も出ないため、屋内施設や制約の多い出店場所でも使用しやすいのが魅力です。最近では大容量・高出力のモデルも増えており、冷蔵庫の電源としても活用できるようになっています。ただし、使用可能な電力量に限りがあるため、営業中にバッテリーが切れてしまわないよう管理が必要です。ソーラーパネルと併用して、営業中に充電する方法もあります。
  • サブバッテリーシステム
    車両が走行している間に充電できるため、移動が多い場合には非常に便利です。エンジンを停止した後も蓄えた電力を使用できます。導入時の初期費用はやや高めですが、一度設置すれば燃料の心配もなく、非常に静かな環境で電気を使用できるのが特長です。

冷蔵庫のワット数(消費電力)の目安

冷蔵庫を選ぶ際は、「定格消費電力(W)」の記載を必ず確認するようにしましょう。この数値が、使用可能な電源を選定するうえでの基本的な基準となります。

業務用のコールドテーブルであれば、定格消費電力はおおむね100W〜200W程度の製品が一般的です。ただし、これは安定運転時の数値ですので、実際には、電源投入直後や扉の開閉後など、コンプレッサーが作動する際に「起動電力」として、この数倍の出力が一時的に必要になる場合があります。

そのため、使用したい冷蔵庫の定格消費電力だけでなく、起動電力にも耐えられる出力を持つ電源を選ぶ必要があります。一般的には、定格消費電力の3〜4倍程度の瞬間出力(起動電力)を確保できれば安全性が高いとされています。ただし、機種によっては5倍以上を要する場合もあります。

計算例: 定格消費電力が150Wの冷蔵庫であれば、起動時を想定して、少なくとも450W以上の出力を持つポータブル電源や発電機が必要と考えておくと良いでしょう。

キッチンカー冷蔵庫の値段と中古品の活用

冷蔵庫はキッチンカーに必要な設備のなかでも比較的高価な部類に入り、初期投資に大きく影響します。新品で揃えるのか、費用を抑えるために中古品を活用するのかは、事業スタイルに応じた重要な選択肢となります。

新品冷蔵庫の価格相場

新品の業務用冷蔵庫は、種類やサイズに応じて価格に大きな差があります。以下はおおよその価格帯の目安です。

  • 業務用コールドテーブル(幅1200mm程度):15万円〜30万円程度
  • 業務用縦型冷蔵庫(小型サイズ):10万円〜20万円程度
  • ポータブル冷蔵庫(40L程度):3万円〜8万円程度

新品のメリットとしては、メーカー保証が付いている安心感や、最新の省エネ性能を備えていることが挙げられます。導入時の費用はやや高めになりますが、長期的な視点で見れば、ランニングコストが抑えられる可能性もあります。

中古冷蔵庫のメリットとデメリット

中古品の最大の魅力は、初期費用を大きく抑えられる点にあります。新品の半額以下で購入できるケースも多く、導入ハードルが下がるのは大きな利点です。

ただし、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。

  • 故障リスクがある:特にコンプレッサーの劣化には注意が必要です。購入後すぐにトラブルが発生する可能性もゼロではありません。
  • 保証がつかない場合が多い:中古品には基本的に保証が付いていないため、修理費用は全額自己負担となります。
  • 消費電力が高い場合がある:古い機種は省エネ性能が劣る傾向があり、電気代が割高になる可能性があります。

中古品を選ぶ際のチェックポイント

価格だけで判断せず、以下の点を必ず確認するようにしましょう。

  • 製造年式:できるだけ新しいものを選びましょう。冷蔵庫の寿命は一般的に10年程度とされており、製造から5年以内のものがひとつの目安となります。
  • 動作確認:電源を入れて、実際に冷えるかを確認しましょう。異音や異臭がないかもあわせてチェックします。
  • パッキンの状態:ドアのパッキンが劣化していると冷気が漏れ、冷却効率が下がります。ひび割れや硬化がないか注意して確認します。
  • 内部の傷や汚れ:衛生面の確認も大切です。落ちにくい汚れやサビがある場合は、避けた方が無難です。
  • 販売店の信頼性:厨房機器専門の業者から購入することをおすすめします。簡易メンテナンスやクリーニングが施されていることが多く、購入後の相談にも対応してもらえる可能性があります。

キッチンカー冷蔵庫の設置と固定方法

キッチンカーは走行中に大きく揺れるため、冷蔵庫の安全な設置と固定は非常に重要です。固定が不十分なまま営業すると、急ブレーキやカーブ時に冷蔵庫が転倒し、事故や故障につながるおそれがあります。また、保健所の営業許可を取得する際にも、冷蔵庫の固定状況はチェックされるため、適切な対策が求められます。

なぜ冷蔵庫の固定が重要なのか

走行中の振動や衝撃は、想像以上に大きく、固定が甘いと次のようなリスクが生じます。

  • 車両事故につながるおそれ:冷蔵庫が倒れて運転操作を妨げたり、車体のバランスを崩す原因になります。
  • 機器の故障リスク:衝撃により、コンプレッサーなどの内部部品が破損し、冷却機能が停止する可能性があります。
  • 食材の損失:庫内の食材が飛び出して傷み、営業に支障をきたします。
  • 営業許可が下りないケースも:保健所の検査において、冷蔵庫の固定が不十分だと判断されると、営業許可が得られない可能性があります。

具体的な固定方法

冷蔵庫を車内にしっかりと固定する方法として、主に以下のような手段があります。

  • L字金具とビスによる固定
    冷蔵庫の側面や天板をL字金具で壁や床に固定する方法です。確実性が高く、多くのキッチンカーで採用されていますが、車体や冷蔵庫本体に穴を開ける必要がある点は考慮が必要です。
  • ラッシングベルトでの固定
    車両の内壁に取り付けたアンカー(フック)と冷蔵庫を、ラッシングベルト(荷締めベルト)で強く締め付けて固定します。工具不要で冷蔵庫や車体を傷つけにくい利点がありますが、定期的にベルトの緩みをチェックする必要があります。
  • コンパネを使った床固定
    車両の床に合板(コンパネ)を敷き、その板に冷蔵庫をビスで固定します。車両の床に穴を開けずに済むため、車体を傷つけたくない場合に適しています。

なお、安全性をより高めるためには、これらの方法を単独で使うのではなく、複数を組み合わせることが望ましいとされています。

設置場所の注意点

冷蔵庫は庫内を冷やすために発生した熱を外部に放出します。多くは背面からですが、側面や上部から放熱するモデルもあります。そのため、取扱説明書を確認して、製品が指定する放熱方向の壁や他の機器から適切なスペースを確保することが重要です。一般的には、冷蔵庫の取扱説明書に記載されているとおり、壁から5〜10cm程度のスペースを確保することが推奨されています。

キッチンカー冷蔵庫のトラブル対策とメンテナンス

いくら準備をしていても、営業中に「冷蔵庫が冷えない」といったトラブルが発生することはあり得ます。慌てずに対処するためにも、よくある原因とその対策を事前に把握しておくことが大切です。また、日々のメンテナンスを怠らないことが、トラブルの予防にもつながります。

「冷蔵庫が冷えない」主な原因と対処法

冷えが悪くなったと感じた場合には、以下の点を確認しましょう。

  • 電源の状態
    発電機がガス欠になっていたり、ポータブル電源が充電切れになっていたりすることがあります。まずは、電源がきちんと供給されているかどうかを確認しましょう。
  • 放熱スペースの不足
    走行中に荷物が移動して、冷蔵庫の背面や側面をふさいでしまっている場合があります。周囲の荷物を移動させて、空気の通り道を確保してください。
  • ドアの開閉頻度が多い
    特に夏場は、ドアの開け閉めが頻繁だと庫内の温度が上がりやすくなります。食材の出し入れは素早く行い、不要な開閉はできるだけ避けましょう。
  • ドアパッキンの劣化
    ドアのパッキンに隙間や硬化があると、そこから冷気が漏れてしまいます。定期的に状態を確認し、必要に応じて交換を検討しましょう。
  • 冷却器の霜付着
    霜がつきすぎると冷却機能が弱まります。こまめに霜取りを行うことが必要です。

日常でできるメンテナンス

大きなトラブルを防ぐためには、次のような日常的なメンテナンスを習慣づけることが有効です。

  • 庫内の清掃
    営業終了後には庫内を清潔に保ちましょう。食材の汁や汚れが残っていると、異臭やカビの原因となります。
  • フィルターの掃除
    冷蔵庫背面や下部のコンデンサーフィルターにはホコリが溜まりやすいため、月に1回を目安に掃除機で吸い取るなどの対応をおすすめします。
  • 異音や異臭の確認
    日々の営業中に、いつもと違う音や匂いに気づいた場合には、故障の兆候である可能性があります。異常を感じたら、早めに専門業者に相談するようにしましょう。

キッチンカーの安定運営は、冷蔵庫選びから

キッチンカーで営業するうえで、食材の鮮度や衛生状態を守る冷蔵庫は、まさに縁の下の力持ちといえる存在です。ただ冷やすだけの機械ではなく、毎日の営業を安定して行うために欠かせない設備であることを意識しておく必要があります。

冷蔵庫の選び方を誤ると、食材が傷んでしまったり、営業中にトラブルが発生してしまうことにもなりかねません。この記事でご紹介したように、提供するメニューや営業スタイルに応じて、容量・種類・電源の取り方・価格とのバランスを丁寧に検討しましょう。また、固定方法や日常のメンテナンスも忘れず行うことで、長く安心して使い続けることができます。

自分のキッチンカーにぴったりの冷蔵庫を選ぶことが、お客様に信頼されるお店づくりにつながります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事