• 作成日 : 2025年9月25日

10坪店舗のデザインはどう決める?費用からレイアウト事例まで解説

10坪の店舗デザインは、限られた空間だからこそ、コンセプトの明確化と緻密な計画が事業の成果を大きく左右します。小さなスペースの魅力を最大限に引き出すには、動線計画や空間を広く見せる工夫が欠かせません。

この記事では、10坪店舗のデザインにおける基本的な考え方から、業種別のレイアウト例、気になる費用相場、コストを抑える方法まで、経営者や担当者が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。

10坪の店舗づくりで押さえておきたい基本の考え方

10坪(約33平方メートル)という限られた空間を有効活用し、繁盛店を作り上げるには、デザインの基本原則を理解することが不可欠です。コンセプトの具体化、効率的な動線計画、そして空間を広く見せる演出が、その土台となります。

店舗のコンセプトを明確にする

デザインを進める前に、誰に、何を、どのように提供する店なのか、コンセプトを具体的に定義します。コンセプトが明確であれば、内装のテーマ、色使い、素材選びといったデザインの方向性が定まり、統一感のある魅力的な空間が生まれます。たとえば、「近隣で働く女性が一人でも気軽に入れる、野菜たっぷりのランチを提供するカフェ」といった具体的な設定が、デザインの指針となります。

スタッフと顧客の動線計画を立てる

10坪の店舗では、動線の設計がサービスの質と顧客満足度に直接影響します。スタッフが効率的に動けるスタッフ動線と、顧客が快適に過ごせる「客動線」が交差しないように計画することが重要です。入口から客席、トイレ、そしてレジへの流れがスムーズであるか、顧客目線で何度もシミュレーションしてみましょう。

空間を広く見せる工夫を取り入れる

狭さを感じさせないための視覚的な工夫は、10坪店舗のデザインにおいてとくに効果的です。壁や天井に白やベージュなどの膨張色を使ったり、大きな鏡を設置して奥行きを出したりする方法が一般的です。また、天井を高く見せる、照明を効果的に使う、家具を低めに統一するといったテクニックも、開放的な空間を演出するのに役立ちます。

【業種別】10坪店舗のレイアウト事例と席数の目安

店舗の業種によって、最適なレイアウトは大きく異なります。ここでは代表的な業種を例に、レイアウトのポイントと、経営者が気になる席数の目安について解説します。適切なレイアウトは、顧客満足度と収益性の両方を高めます。

飲食店(カフェ・バー・居酒屋)のレイアウト

飲食店の場合、厨房と客席のバランスが重要です。10坪全体のうち、厨房が2~3坪、残りが客席や通路などになるのが一般的です。

  • 席数の目安
    一般的に、飲食店の客席数は1坪あたり1~1.5席が目安とされます。10坪の店舗であれば、10席~15席程度が目安となるでしょう。ただし、カウンター席主体にするか、テーブル席を設けるかで配置効率は変わります。
  • レイアウトのポイント
    • カウンター席中心:厨房に沿ってカウンターを設けるI字型やL字型は、スペース効率が高く、スタッフ1人でも対応しやすいレイアウトです。とくにバーや居酒屋、ラーメン店などに向いています。
    • テーブル席の配置:2名掛けの小さなテーブルを基本とし、必要に応じて連結できるようにしておくと、グループ客にも対応しやすくなります。壁際にベンチシートを設けるのも、省スペース化に有効です。

物販店(アパレル・雑貨)のレイアウト

物販店では、商品を魅力的に見せ、顧客が店内を回遊しやすいレイアウトが求められます。

  • レイアウトのポイント
    • 回遊性の高い動線:顧客が店内を自然に一周できるような動線を作りましょう。壁面什器と中央の陳列棚を効果的に配置し、通路幅は人がすれ違える90cm~120cm程度を確保するのが理想です。
    • 「見せ場」を作る:入口から最も目につく場所や、突き当りの壁面などを「見せ場(VP・ビジュアルプレゼンテーション)」とし、季節商品やおすすめ商品をディスプレイすることで、顧客の興味を引きます。
    • レジとストック場所の確保:レジカウンターは、入口付近かつ店内全体を見渡せる位置が適しています。また、限られたスペースでも、バックヤードやストックスペースを確保するための工夫が必要です。

サロン(美容室・ネイル・エステ)のレイアウト

サロンでは、施術スペースの機能性と、顧客がリラックスできるプライベート感の両立がデザインの鍵です。

  • レイアウトのポイント
    • 施術スペースの確保:美容室であればセット面とシャンプー台、ネイルサロンであれば施術デスクと椅子など、必要な設備が収まるスペースを最初に確保します。お客様と施術者が快適に動けるゆとりも考慮しましょう。
    • プライベート感の演出:狭い空間でも、パーテーションやカーテン、段差などを利用して半個室のような空間を作ると、顧客は周りを気にせずリラックスできます。
    • 待合スペース:入口付近にコンパクトな待合スペースを設けます。お客様の荷物やコートを預かるクロークの場所も忘れずに計画しましょう。

10坪店舗のデザインにかかる費用相場と内訳

店舗デザインを進めるうえで、最も気になるのが費用ではないでしょうか。ここでは10坪店舗の内装工事にかかる費用の相場と、その内訳について解説します。物件の状態によって費用は大きく変動するため、注意が必要です。

「居抜き」と「スケルトン」で費用は大きく変わる

店舗物件には、前のテナントの設備が残っている「居抜き物件」と、建物の骨組みだけの状態の「スケルトン物件」があります。

  • 居抜き物件の場合 厨房設備や内装をそのまま活用できるため、費用を大幅に抑えられるのが最大のメリットです。
    • 費用相場:坪単価15万円~50万円程度(10坪で150万円~500万円)
    • 注意点:残された設備の劣化状態や、自身のコンセプトに合うかどうかの見極めが重要です。レイアウトの自由度は低くなります。
  • スケルトン物件の場合 内装をゼロから作り上げるため、デザインの自由度が高いのが魅力です。ただし、電気、ガス、水道、空調などの設備工事も必要になり、費用は高額になります。
    • 費用相場:坪単価30万円~80万円以上(10坪で300万円~800万円以上)
    • 注意点:業種やデザインのこだわりによって、費用は青天井になる可能性もあります。

店舗デザインの費用内訳

店舗のデザイン・工事にかかる費用は、主に以下の項目で構成されます。予算計画を立てる際の参考にしてください。

  • 設計デザイン費:店舗の設計やデザインを専門家に依頼する費用。工事費の10%~15%程度が目安です。
  • 内装工事費:壁、床、天井の工事や、建具の製作・設置など、内装全般にかかる費用です。
  • 設備工事費:電気、ガス、水道、空調、換気、防災設備などの工事費用。とくに飲食店では厨房の給排水・換気設備にコストがかかります。
  • 什器・家具費:テーブル、椅子、陳列棚、レジカウンターなどの購入・製作費用です。
  • その他諸経費:看板製作費や雑費など。

10坪店舗デザインの費用削減術

事業を始めるにあたり、初期投資はできるだけ抑えたいと考えるのが自然でしょう。ここでは、品質を保ちながら店舗デザインの費用を賢く削減するための具体的な方法を紹介します。少しの工夫で、予算内で理想の店舗を実現することも可能です。

居抜き物件を最大限に活用する

前述のとおり、居抜き物件は初期費用を抑える最も効果的な方法のひとつです。既存の設備や内装を活かせないか、まず検討してみましょう。壁紙の張り替えや部分的な塗装、照明の変更だけでも、お店の雰囲気は大きく変えられます。コンセプトに合わない部分だけを改修する「ハーフリノベーション」も有効な手段です。

DIY(自身での施工)を取り入れる

専門的な技術が必要な工事以外、たとえば壁の塗装や棚の組み立て、簡単な内装の飾りつけなどを自分たちで行う「DIY」を取り入れることで、人件費を削減できます。自分たちで店づくりに関わることで、お店への愛着が深まるというメリットもあります。ただし、仕上がりのクオリティや作業時間を考慮し、無理のない範囲で計画することが大切です。

補助金や助成金を調べる

国や地方自治体では、創業者や中小企業を支援するためのさまざまな補助金・助成金制度を用意しています。たとえば、日本政策金融公庫の創業融資や、各自治体が実施する創業支援補助金などです。これらの制度を活用できないか、お住まいの地域の商工会議所や自治体のウェブサイトで確認してみましょう。

出典:創業支援|日本政策金融公庫

複数のデザイン会社から相見積もりをとる

店舗のデザインや工事を依頼する際は、必ず複数の会社から見積もり(相見積もり)をとりましょう。2~3社から見積もりをとることで、費用の適正価格がわかり、サービス内容を比較検討できます。単に価格が安いだけでなく、提案内容がこちらの要望を汲んだものであるか、担当者との相性は良いかなども含めて、総合的に判断することが失敗しない業者選びにつながります。

競合と差をつける10坪店舗デザインとは?

基本的なデザインのポイントを押さえるだけでなく、他店にはない独自性を加えることで、顧客の記憶に残り、再来店へとつながる魅力的な店舗になります。ここでは、競合と差をつけるためのデザインアイデアをいくつか紹介します。

素材のストーリーで「語れるお店」になる

お店の姿勢は、空間を作る素材にも表れます。たとえば、あえて古材やリサイクル素材を使ったり、地域の木材を内装に取り入れたりする。そうすることでデザインに深みが生まれるだけでなく、「この素材にはこんな物語があるんです」といったお客様との会話のきっかけにもなります。

省エネ性能の高いLED照明を選ぶといった小さな配慮も、お店の印象を高め、日々の運営コスト削減にもつながる賢い選択です。

デジタル活用で、スマートな店舗運営を実現する

少ない人数でお店をまわすなら、デジタル技術を味方につけてはいかがでしょうか。お客様のスマホから直接注文できるモバイルオーダーシステムは、注文待ちのストレスをなくし、スタッフは調理や接客に集中できます。

壁の小さなスペースにデジタルサイネージを設置すれば、紙のメニューを何枚も置くことなく、動画や写真で商品の魅力を伝えられるため、空間を有効活用した情報発信ができます。

ネットと実店舗の連携で、ファンを増やす仕掛け

今の時代、実店舗はただ商品を売るだけの場所ではありません。お店のこだわりや雰囲気を五感で感じてもらう「体験の場」としての役割が大きくなっています。

たとえば、「お店に来た人だけが買える限定品」を用意したり、「次回のオンラインストアで使える割引コード」をレシートに印刷したり。お客様が実店舗とネットの世界を行き来したくなるような仕掛けをデザインに盛り込むことで、一度きりではない、長く続く関係性を築いていけるのではないでしょうか。

失敗しない店舗デザイン会社の選び方

理想の店舗を実現するためには、信頼できるパートナーとなるデザイン会社選びが欠かせません。デザイン力はもちろん、コミュニケーションのしやすさや実績も重要な選定基準です。ここでは、依頼先を選ぶ際にチェックすべきポイントを解説します。

小規模店舗や希望業種での実績を確認する

デザイン会社には、それぞれ得意な分野や規模があります。会社のウェブサイトで施工事例を確認し、10坪前後の小規模店舗や、自分たちと同じ業種の店舗を手がけた実績が豊富かどうかをチェックしましょう。実績が多ければ、狭小店舗ならではの課題や、その業種特有の動線計画に関するノウハウを持っている可能性が高いです。

担当者とのコミュニケーションが円滑か

店舗デザインのプロジェクトは、数カ月にわたることが多く、担当者とは密にコミュニケーションをとる必要があります。こちらの要望を丁寧にヒアリングしてくれるか、専門用語をわかりやすく説明してくれるか、レスポンスは迅速かなど、打ち合わせの段階で相性を見極めましょう。話しやすい担当者であれば、ささいな疑問や不安も相談しやすく、満足のいく店づくりにつながります。

見積もりの内容が明確で丁寧か

提出された見積書の内容が、具体的でわかりやすいかどうかも重要な判断材料です。「工事一式」のように大雑把な項目ばかりでなく、「〇〇工事」「△△設備費」といったように、何にいくらかかるのかが詳細に記載されているかを確認します。不明瞭な点があれば遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。誠実な会社であれば、丁寧に対応してくれるはずです。

コンセプトが明確な10坪店舗デザインがビジネスを加速させる

10坪という小さな店舗のデザインは、ただ見た目を整える作業ではありません。お店の「想い」であるコンセプトを軸に、お客様が心地よく過ごせ、スタッフが効率よく働ける動線を考え抜く。限られた空間だからこそ、一つひとつの設計が、お店の個性と日々の売上に直結していくのです。

この記事でお伝えしたレイアウトの考え方や費用の知識が、あなたの店づくりを具体的に進めるヒントになれば幸いです。


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