- 作成日 : 2025年12月25日
違法駐車とは?警察の対応範囲や駐車・停車が禁止されている場所を解説
違法駐車とは、道路交通法で禁止されている場所に車を止める行為で、警察が取り締まりの対象となります。自宅前や月極駐車場で起こる無断駐車とは性質が異なり、対応先も変わるため、状況に応じた正しい判断が不可欠です。
当記事では、違法駐車の定義、警察が介入できる範囲、駐車・停車が禁止されている場所、トラブル時の適切な対処法も解説します。
目次
違法駐車とは?
違法駐車とは、道路交通法で禁止された場所に駐車する行為を指し、放置違反金や反則金の対象になります。まず押さえるべき点は「どの場所が禁止区域か」という基準です。標識の有無や道路状況によって判断が変わります。
なお、道路交通法上の駐車とは、客待ちや荷待ち、貨物の積み下ろしなどにより継続的に停止する場合や、運転者が車両を離れて直ちに運転できない状態などを指す言葉です。貨物の積み下ろしであっても5分を超える停止や、運転者が車両周辺におらずすぐに運転できない状態は駐車として取り締まりの対象になります。
違法駐車によるトラブルと悪影響は?
違法駐車は、周囲の安全を脅かし、交通や生活にさまざまな悪影響を及ぼします。もっとも多い問題は「通行の妨害」と「近隣トラブル」です。
道路上に不適切に車が止められると、車や歩行者の通行スペースが狭まり、接触事故や歩行者の危険につながります。特に見通しの悪い交差点付近や横断歩道の前後に車があると、歩行者が確認しづらく事故リスクが高まります。交差点の5m以内・横断歩道の前後5m以内は「駐停車禁止」とされており、ここに止めると事故リスクが急上昇するため、駐車すると大変危険です。また、救急車や消防車などの緊急車両が通れず、到着が遅れるケースもあり、地域全体の安全にも影響します。
生活面では、店舗前や住宅前への違法駐車が周辺住民とのトラブルに発展することもあります。営業妨害となったり、出入りができないなど日常生活に支障が出たりするため、感情的な対立を生みやすい点も問題です。さらに、違法駐車は道路交通法違反として反則金・放置違反金の対象となり、車の持ち主に法的な負担が発生します。
違法駐車と無断駐車の違いは?
違法駐車と無断駐車は、原因も対応先も異なる別のトラブルです。「違法駐車は道路交通法違反、無断駐車は私有地での民事トラブル」となります。
違法駐車は、道路上の駐車禁止場所に車を止める行為で、警察が取り締まりを行います。一方の無断駐車は、月極駐車場や商業施設などの私有地に、契約者以外の車両が勝手に停める行為を指し、道路交通法ではなく民法上の不法行為として扱われます。
違法駐車・無断駐車に対して警察が対応できる範囲は?
道路上での駐車違反は、放置違反金や反則金の対象となり、警察官や駐車監視員が取り締まりを行います。これに対して、月極駐車場や自宅の敷地などの多くの私有地に車を勝手に停められた場合は道路交通法の適用外となることが多く、原則として警察が強制的に排除したり、車の移動を命じたりすることはできません。
ただ、長期間放置されているなど、不審車両・犯罪性が疑われる場合は警察が対応する場合もあります。
公道の場合:違法駐車として警察が対応する
公道での違法駐車は、警察が積極的に取り締まる対象です。道路交通法に違反する駐車はすべて警察の管轄となり、放置違反金の納付や点数の付加など行政処分が行われます。
根拠として、道路上の交通の安全・円滑を守るために、標識の有無にかかわらず、交差点付近、横断歩道の前後、カーブ付近、消防設備周辺など、危険性や公共性の高い場所での駐車は禁止されています。また、駐車監視員制度により、一定の区域では警察以外の監視員が放置車両を確認し、違反処理が行われる場合もあります。トラブル原因となる公道での駐車は、警察に通報することで対応してもらえるケースが多いと言えます。
私有地の場合:原則として警察は介入できない
私有地での無断駐車は、警察が原則として介入できません。警察が関与しにくい主な理由は、道路交通法が適用されるのが、いわゆる公道や「一般交通の用に供するその他の場所」に限られ、多くの私有地はその対象外とされるためです。
私有地のトラブルは民事不介入の原則が優先され、無断駐車は民法709条に基づく不法行為が適用される場合があります。ただし例外として、自宅敷地や車庫などに勝手に侵入して駐車した場合は、刑法130条の住居侵入罪または建造物侵入罪が適用される可能性があります。この場合も警察が状況を確認し、必要に応じて捜査に進むことがあります。
ただし、私有地であっても通路として公衆が自由に通行する状態にある場所(店舗の駐車場など)は、状況により道路交通法の対象とみなされる場合もあります。
駐車・停車が禁止されている主な場所は?
駐車・停車には明確な禁止エリアが定められており、該当する場所で車を止めると違反になります。まずは「駐車禁止」と「停車禁止」の違いを理解しながら各ルールを押さえることが重要です。
駐車が禁止されている場所
駐車が禁止されている場所では、5分以上車を止める行為が違反となります。たとえば、交差点付近では、車が止まっていることで視界が遮られ、右左折車や歩行者が互いを確認できなくなるため、事故の危険性が高まります。同様に、横断歩道や自転車横断帯の前後も、歩行者や自転車利用者が安全に渡れなくなるため、短時間の駐車でも重大なリスクにつながります。踏切周辺も危険が大きく、非常時に停車車両が障害となるおそれがあるため駐車は禁止されています。
また、坂道の頂上や急な勾配が続く道路では、後続車が減速のタイミングを誤ったり、止まっている車に気づきにくかったりするため、駐車違反として扱われます。さらに、トンネル内は停車そのものが事故につながりやすく非常に危険であることから、道路交通法第44条により駐車だけでなく停車も原則禁止されています。もちろん、駐車禁止の標識や標示が設置されている場所では、標識の種類にかかわらず駐車が禁止され、取り締まりの対象となります。
停車が禁止されている場所
停車が禁止されている区域は、駐車禁止よりも厳しい規制が適用され、荷物の積み下ろしや人の乗降のための短時間の停止であっても法律違反になります。たとえば、交差点内や右左折レーンの上で車が一時的にでも止まると、交通の流れが大きく乱れ、周囲の車両が危険な回避行動を取らざるを得ません。歩行者専用道路も多くの時間帯で停車が認められず、車両が存在するだけで歩行者に危険を及ぼす可能性があります。
バス停付近も停車禁止の代表例で、停まっている車がバスの発着を妨げると、遅延だけでなく安全面にも大きな影響が出ます。また、消防車が消火活動を行うために必要な消防用施設の周囲では、緊急時に支障とならないように駐車が禁止されており、停車についても状況により注意が必要です。このほか、停車禁止の標識が設置されている場所では、その規制内容に従い、どのような理由であっても停止は認められません。
駐車が禁止されていなくても違反になる「無余地駐車」とは?
無余地駐車とは、駐車禁止でない場所であっても、駐車した車両の右側におおむね3.5m以上の通行の余地が確保できないように駐車した状態を言い、この場合は駐車禁止標識がなくても道路交通法違反となります。
無余地駐車が禁止される理由は、道路の安全性と円滑な交通を守るためです。道路交通法や関連通達では、駐車した車両の右側に原則3.5m以上の通行余地を確保することが求められており、余地が確保できずほかの車両の通行に支障が出る場合は、駐車禁止の標識がなくても無余地駐車として取り締まりの対象になります。
具体的には、住宅街など道路幅が狭い場所で車を道路脇に停めた際、対向車同士がすれ違えなくなったり、ベビーカー・自転車が回避できなくなったりすると無余地駐車と判断されます。また、緊急車両が通行できないほど幅を塞いでいる場合も同様です。
路上駐車できる場所でも時間オーバーは違反になる
路上駐車が許可されている場所でも、定められた時間を超えて停め続けると違反になります。道路交通法では、駐車可能とされている区域であっても、標識に「60分以内」などの制限が表示されていれば、その時間を超える駐車は放置車両として扱われます。特に都市部では回転率を高めるために時間制限が設けられており、利用者がルールを守らなければ通行の妨害や渋滞につながるため、取り締まりが行われます。
また、制限時間がない場合でも、継続して車内に運転者がいない状態が長く続くと、実質的に「放置」と判断されるケースがあります。監視員による取り締まり区域では、標識や道路状況に基づいて放置違反金の対象となることがあり、短時間だと思っていても違反とされる可能性があるため注意が必要です。
無断駐車されたときの対処法は?
無断駐車への対処は、感情的な行動を避け、法律に沿って冷静に進めることが重要です。賃貸物件や月極駐車場の場合は、管理会社・警察・専門家への相談という正しい手順で対応することで、トラブルを拡大させずに解決に向かうことができます。
管理会社に連絡する
賃貸物件や月極駐車場などで無断駐車が発生したら、最初に行うべき対応は管理会社やオーナーへの連絡です。管理会社は、駐車場の契約情報を把握しており、契約車両かどうかの確認や、利用者への注意喚起を速やかに行うことができます。
また、管理者が公式な立場で対応することで、トラブルが第三者同士の私的争いに発展しにくく、安全に進められます。無断駐車の写真を撮り、発生日時や状況を記録しておくと、管理会社への報告がスムーズになります。
悪質な場合は警察に通報・相談する
悪質性が高い場合やトラブルが拡大しそうな場合は、警察への相談が必要です。私有地での駐車トラブルは民事不介入が原則であり、警察がレッカー移動の指示を出すことは基本的にできません。
しかし、住居敷地内や車庫などに侵入している場合は、刑法130条の住居侵入罪・建造物侵入罪に当たる可能性があり、警察が介入できる場合があります。「身の危険を感じる」「所有者とトラブルになりそう」などの状況でも、相談することで適切なアドバイスや現場確認を受けられます。
警告文を記した張り紙をする
管理会社の対応だけでは改善しない場合や、同じ無断駐車が繰り返される場合は、警告文の張り紙が有効です。ただし、相手の車両を傷つけたり、粘着力の強いテープを使ったりすると損害トラブルにつながるため、扱いには注意が必要です。
張り紙は風で飛ばない程度に軽く貼り、「契約者以外の駐車は禁止されています」「管理会社に連絡済み」など、簡潔で事実に基づく内容にとどめます。感情的な文言や脅迫と受け取られる表現を避け、淡々と事実を伝える姿勢が重要です。
所有者を特定して内容証明を送る
無断駐車が繰り返される場合や、損害が発生している場合には、車両の所有者を特定し、内容証明郵便で正式に注意を促す方法があります。内容証明には、無断駐車の事実、日時、発生している損害、再発防止を求める旨を明記します。
管理会社や専門家の助言を得て作成すると、より確実でトラブルを回避しやすくなります。所有者の特定には、弁護士を通じて照会手続きが必要となるケースもあるため、個人で無理に進めず、プロのサポートを活用することが推奨されます。
損害賠償請求をする
無断駐車によって実際に損害が発生した場合、損害賠償請求を行うことができます。たとえば、駐車場利用者が駐車できず、別の駐車場に臨時で費用を支払った場合や、業務遅延・営業妨害が認められる場合は、損害と認められる可能性があります。
ただし、主観的な不快感や「迷惑だった」というだけでは賠償は認められず、明確な損害の立証が必要です。損害賠償請求を行う際は、無断駐車の写真や日時、損害の証拠を記録し、弁護士など専門家に相談することでスムーズに手続きが進められます。
違法駐車を防ぎ、安全な交通環境を守ろう
違法駐車や無断駐車は、道路交通法違反だけでなく、近隣トラブルや安全リスクにもつながります。公道では警察が対応し、私有地では管理会社や専門家と連携しながら適切に対処することが大切です。標識がある場所だけでなく、無余地駐車や時間オーバーなど見落としやすい違反もあるため、正しい知識を身につけることでトラブルを未然に防げます。安全な駐車マナーを心がけ、安心して暮らせる環境づくりに役立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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