- 作成日 : 2025年12月25日
不動産におけるリーシングとは?プロに依頼するメリットや流れを解説
賃貸用不動産の収益を安定させる上で、リーシングは単なる空室埋めではなく、市場調査からターゲット設定、募集戦略の設計、仲介会社への展開、内見対応、条件交渉、契約までを包括的に管理する専門的な業務です。不動産の稼働率と賃料水準は収益に直結するため、戦略的リーシングを行えるかどうかがオーナーの収益性を大きく左右します。
当記事では、リーシングの意味、PM/BMとの違い、依頼するメリット・デメリット、実務フロー、成功のポイントなどを分かりやすく解説します。
目次
不動産におけるリーシングとは?
リーシングとは、オフィスビルやテナントビルなど賃貸用不動産に「入居者を確保し続ける仕組みをつくること」を指し、空室を埋める行為だけでなく、収益を安定させるための戦略的なテナント誘致活動全体を意味します。収益を高めるためのテナント募集活動に特化しているのが特徴です。
具体的には、市場調査、ターゲット設定、募集条件の設計、広告・仲介ネットワークへの展開、内見対応、条件交渉、契約締結、入居立上げまでを一連で行います。
不動産の価値は稼働率と賃料水準によって大きく左右されるため、リーシングはオーナー収益の核となる業務です。
プロパティマネジメントとの違い
リーシングは「埋める・入れる」ことに主眼を置くのに対し、プロパティマネジメント(PM)は不動産オーナーに代わり、物件の管理業務など運営全体を通じて資産収益の最大化を図ります。PMは予算策定、出納・レポーティング、修繕計画、テナント対応、リスク管理などを担い、リーシングはその中核機能の1つです。
実務では、PMがオーナー方針と収支計画を定め、リーシング担当が市場調査から条件設計、募集、交渉を遂行します。成約後の賃料改定や更新交渉、原状回復条件の統一などはPM主導で、リーシングと連携して実施します。空室期間短縮と賃料維持のトレードオフ管理もPMの責務です。
ビルマネジメントとの違い
ビルマネジメント(BM)は建物・設備の保守運用に焦点を当てます。建物や設備の法定点検、日常清掃、警備、設備保全、故障対応に加え、必要に応じて省エネ運用(例:BEMS導入)なども担当します。建物管理業務が中心であり、入居者誘致や賃料設計は原則担当しません。
BMが提供する良好なハード・サービス水準は、リーシングの競争力と成約率を左右します。PMはBMの品質とコストを管理しつつ、リーシングと連動して魅力的な商品性をつくる体制が理想です。たとえば、共用部の更新やBEMS導入による快適性・省エネの向上は、募集広告の訴求点となり賃料水準の維持に寄与します。
リーシングの必要性は?
リーシングが必要とされる理由は、賃貸用不動産の収益性を維持・向上させるのに、継続的に適切な入居者を確保することが不可欠なためです。稼働率と賃料は不動産収益の中心を占めており、空室期間が長引くほどキャッシュフローが悪化して資産価値にも影響します。そのため、計画的なリーシングはオーナーにとって必須の経営機能の一つです。
市場環境の変化を踏まえて賃料の妥当性を見極め、募集条件やターゲットを適切に設定することで物件の競争力を維持できます。商業施設であれば売上を見込めるテナントの誘致、オフィスなら業種バランスの最適化、賃貸住宅ではターゲット層に合わせた差別化が必要です。
不動産を安定して運用するためには、戦略的かつ継続的なリーシング体制が欠かせません。
リーシングをプロに依頼するメリットとは?
リーシングを専門会社へ委託すると、空室対策を戦略的かつ効率的に進められます。特に物件規模が大きい場合や複数棟を運営するオーナーほど、専門家の力が効果的に働くでしょう。
ここでは、リーシングを専門家に依頼するメリットを解説します。
オーナーの業務負担を大幅に減らせる
プロへ委託する最大の利点は、煩雑な業務から解放される点です。リーシングには市場調査、募集条件の整理、広告出稿、仲介会社との連携、内見対応、条件交渉、契約事務など多くの工程が含まれます。オーナー自身が対応すると時間・労力が大きくなり、本来の経営判断や資産計画に手が回りにくくなります。
専門会社はこれらの業務を専門分野ごとに分担して迅速に処理し、空室期間の短縮やトラブル防止につなげます。オーナーは運営全体を俯瞰しながら、より重要な意思決定に集中できるでしょう。
効率的なリーシング戦略で収益性を向上できる
プロのリーシング担当者は、市場データと仲介ネットワークを基盤に、最適な募集方針を設計します。立地特性や競合状況、賃料相場などのマーケット情報を分析し、ターゲット層や募集条件を精緻に設定することで、成約率と賃料水準の確保を同時に実現することが可能です。
さらに、広告媒体の選定や写真撮影、マイソク作成、ポータルサイト掲載の最適化、内見導線の改善など、反響を最大化する施策も一括で実行します。これにより、早期成約だけでなく、同じ物件でもより高い賃料で決まりやすくなります。商業施設ではテナントミックスの調整、オフィスではフロア分割やレイアウト提案など、業態別の最適化も可能です。
法令やルールを遵守した運用ができる
リーシングには宅建業法や広告表示基準、個人情報の取扱い、契約書の適切な作成など、多くの法的配慮が欠かせません。専門会社はこれらのルールに精通しているため、誤った表示や説明不足によるトラブルを回避できます。
特に、募集図面の記載内容、契約条文の整合性、重要事項説明に係る実務は専門性が高く、経験によって精度に差が出る領域です。また、更新・解約・原状回復などの運営判断でも、最新のガイドラインに沿った対応が可能です。
法令遵守を徹底した運用体制を構築することで、オーナーは安心して業務を任せられるだけでなく、物件運営の信頼性向上という長期的なメリットも得られます。
リーシングをプロに依頼するデメリットとは?
リーシングを専門会社へ任せることで効率化は進みますが、コスト面や委託先の品質管理といった注意点も存在します。ここでは、リーシングを依頼するデメリットを紹介します。
管理会社への委託料がかかる
リーシングを外部に任せる以上、委託料が発生します。委託料は固定型、成功報酬型、固定報酬+成功報酬型など契約形態によって異なり、物件規模が大きいほど支出総額も増えます。最も多いのは成功報酬方式で、テナントが決まったときにだけ費用を支払う形です。委託料が高すぎると、短期的には実質利回りを圧迫する場合があるため、費用対効果を見極めながら、募集スピードや成約率、賃料水準の改善など具体的な成果と比較して判断することが必要です。
料金体系の内訳(広告費、マイソク作成費、仲介連携の範囲など)を明確に把握し、不要なコストが発生しないよう契約内容を精査することがポイントです。
信頼できる委託先を慎重に見極める必要がある
リーシング会社は多数存在しますが、担当者の経験値や対応品質には大きな差があります。選定に失敗すると、募集条件の甘い設定や仲介会社への情報提供不足、内見対応の遅れなどが生じ、成約機会を逃すリスクがあります。また、法令やガイドラインに不慣れな会社に委託した場合、表示内容のミスや契約事務の不備がトラブルにつながる可能性も考えられます。
委託先を選ぶ際は、過去の稼働率改善実績や担当者の専門性、仲介ネットワークの広さ、レポート体制などを細かく確認することが欠かせません。オーナーは適切なパートナーを選ぶことで、安定したリーシング成果を得やすくなります。
リーシングの流れと具体的な内容
リーシングは、物件に最適な入居者を確保し、収益を最大化するための一連のプロセスです。市場調査に基づく戦略策定から、募集計画、営業活動、契約・入居までを体系的に進めることで、空室期間を短縮し、物件価値を維持できます。
ここでは、実務で押さえたい主要な手順を解説します。
市場リサーチを行う
最初のステップは、精度の高い市場調査です。立地周辺の賃料相場、競合物件の仕様、空室率、需要が高い面積帯や業種を分析し、物件の強み・弱みを把握します。商業施設なら商圏人口や購買動向、オフィスなら企業移転の動き、賃貸住宅ならターゲット層の属性が重要です。
市場データに基づく分析は、適切な募集条件を設定するための基盤です。不動産会社のデータやレインズ情報、現地調査などを組み合わせ、客観性のある判断材料を整えましょう。
リーシング戦略を立案・策定する
市場理解を踏まえ、対象物件に合った戦略を組み立てます。ターゲットとなる業種・属性、望ましい賃料水準、募集面積、契約期間、インセンティブの有無などを明確にします。商業施設ではテナントミックスのバランスを考慮し、オフィスでは分割・一括貸しの判断、住宅では設備仕様の見直しなども含まれます。
また、広告媒体の選定や仲介会社へのアプローチ方針もこの段階で決めます。戦略が明確であるほど、募集活動の効率と成約率が向上します。
出店・募集計画を具体的に立てる
策定した戦略をもとに、実行段階のスケジュールと施策を具体化します。募集開始時期、広告費の配分、マイソク作成の内容、内見対応フローなどを整備し、仲介会社へ情報を適切に共有します。商業施設では優先誘致したい業種やブランドをリスト化し、オフィスではレイアウト図面の準備、住宅では写真・設備情報の精度向上がポイントです。
明確な計画は、問い合わせ数と内見数の増加や、成約までの時間短縮につながります。
テナント・入居者への営業活動を行う
営業活動では、直接アプローチと仲介ネットワークを組み合わせて反響を最大化します。仲介会社への定期的な情報提供、内見会の開催、商談時の条件提示などを迅速に行い、候補者を確実に誘導します。商業施設ではターゲット企業へのピンポイント営業、オフィスでは移転検討企業へのリーチ、住宅ではポータルサイトでの訴求が効果的です。
内見時の説明や建物の魅力を伝える資料も、成約率向上に大きく影響します。
契約手続き・開店までをサポートする
成約が近づいた段階では、契約条件の調整から書類作成、重要事項説明、賃貸借契約の締結、鍵渡しまでを丁寧に進めます。商業テナントの場合は工事区画の引き渡し、開店までの工程管理、関係者との調整も必要です。オフィスや住宅では原状回復条件の確認、入居前の清掃・設備点検が含まれます。
手続きと開店準備を適切に支援することで、トラブル防止と入居後の関係構築につながります。
リーシングでテナントを集客する方法
テナント誘致を成功させるには、情報を「正確かつ広く届けること」と「ターゲットに最適な媒体を使い分けること」が重要です。レインズ、マイソク、ポータルサイトなど複数のチャネルを組み合わせることで、反響数を増やし、成約につながる母数を確保できます。ここでは主要な集客手法を解説します。
レインズを活用して幅広く情報を共有する
レインズ(REINS)は、不動産会社間で物件情報を共有するためのシステムです。プロ同士が利用するプラットフォームのため、公開すれば多数の仲介会社へ情報が一気に広がり、募集速度が大きく高まります。特に、事業用物件は仲介会社経由での成約が多いため、レインズ登録はテナント誘致の基本施策です。
登録時は、面積、賃料、契約条件、設備仕様、写真、図面などを正確に掲載しましょう。情報が不足すると仲介会社が提案しづらく、反響機会を逃す可能性があるからです。更新頻度を高め、ステータス変更や条件調整も迅速に行うことで、常に最新情報が流通し、成約に向けた動きが加速します。
マイソクを作成して仲介業者に情報を届ける
マイソク(募集図面)は、仲介会社が顧客に物件を紹介するための基本資料で、情報の正確性と視認性が成約率に大きく影響します。特に事業用物件では、図面の見やすさや設備情報の網羅性、周辺環境データなどが重要視され、担当者が提案しやすい資料ほど取り扱いが増える傾向です。
マイソクには、賃料、共益費、保証金、面積、用途、契約条件、設備仕様、図面、写真などを明確に記載し、誤記載がないよう細かくチェックしましょう。説明しやすい高品質なマイソクは、テナント候補への提案率を高め、リーシング活動の効率化に大きく寄与します。
不動産ポータルサイトを活用して直接集客する
ポータルサイトは、テナント・入居者が直接物件を検索するチャネルであり、反響を増やすための重要な媒体です。事業用ポータル、賃貸住宅ポータルなど、物件用途に応じて複数サイトへ掲載することで、接触機会が大幅に増えます。
掲載する際は、高解像度の写真、正確な設備情報、周辺施設の情報、間取り図を揃え、検索結果で選ばれやすい魅力的なページを整えることが必要です。また、問い合わせへの初動対応が遅いと機会損失が発生するため、レスポンス体制を整備することも重要です。
ポータルサイトで得た反響を仲介会社との連携にもつなげることで、直接集客と専門ネットワークの双方から効率的に成約を狙えます。
リーシングを成功させる3つのポイント
リーシングを効果的に進めるには、精度の高い情報収集、適切なパートナー選定、そして物件価値を高めるテナント構成の最適化が欠かせません。これら3つのポイントを押さえることで、空室期間を短縮し、賃料水準と稼働率を安定させやすくなるでしょう。
リサーチでは最新かつリアルな情報を集める
リーシングの成果を大きく左右するのが、初期段階のリサーチ精度です。賃料相場、競合物件の空室状況、設備仕様、需要が高い面積帯、周辺の開発計画など、最新かつ信頼性の高い情報を集めることが重要といえます。現地調査や複数の不動産会社からヒアリングを行い、机上データと実際の動きを突き合わせることが効果的です。
また、商業施設であれば商圏人口や購買動向、オフィスでは企業移転のトレンド、賃貸住宅では問い合わせ数の推移など、用途に応じた追加情報も欠かせません。高精度のリサーチが、競争力のある募集戦略の土台になります。
信頼できる実績のあるリーシング会社を選ぶ
リーシング成果は担当者のスキルとネットワークに大きく左右されます。そのため、委託先を選ぶ際は、過去の稼働率改善実績、専門性、担当者の経験年数、仲介会社との関係性、レポート体制などを細かく確認することが必要です。
単に知名度のある会社を選ぶだけでは不十分で、物件の用途(商業・オフィス・住宅)に合ったノウハウを持っているかが成果を左右します。また、問い合わせ対応のスピードや、条件交渉の精度、広告運用の質など現場レベルの対応力も重要です。
信頼性の高いパートナーを選ぶことで、空室期間の短縮や賃料水準の維持が実現し、長期的な運用安定につながります。
バランスの取れたテナントミックスを意識する
特に商業施設や複合ビルでは、テナントミックス(テナント構成)の最適化がリーシングの成否を左右します。特定業種に偏ると、相互送客(ショッピング → 飲食 → サービスなど)が期待できず、集客力が落ちる可能性があります。飲食、物販、サービス業などをバランスよく配置し、顧客動線や需要のピーク時間に応じた構成を設計することが重要です。
オフィスビルでも、業種の偏りが大きいと景気変動の影響を受けやすくなるため、リスク分散の観点から多様な業種の誘致が望まれます。賃貸住宅では、単身・ファミリー向けの比率や設備仕様の整合性が重要です。
テナントミックスに配慮することで、物件全体の魅力が高まり、長期的な稼働率向上と収益の安定につながります。
専門的なリーシングで収益性を最大化するための視点
リーシングは、不動産の収益性を維持・向上するための中核業務であり、市場分析から戦略策定、募集活動、契約・入居までを包括的に扱う専門性の高いプロセスです。物件の競争力は市場環境や周辺の開発動向に左右されやすいため、最新データを踏まえた戦略設計が欠かせません。
専門会社へリーシングを依頼することで、業務負担の軽減や募集スピードの向上、法令遵守の徹底といった効果が得られます。一方、委託コストや会社選定の難しさもあるため、実績・対応品質・ネットワークなどを多角的に確認する姿勢が必要です。
物件の価値を長期的に高めるためには、精度の高いリサーチと信頼できるパートナー体制を軸とした継続的で戦略的なリーシング運用が求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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